千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2014年版
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の著書を発表しており,原始生命の誕生における,生体分子の生化学的な禁制律に興味を持っている. (6)溝渕 潔(電気通信大学) 細胞内での物質代謝反応と遺伝子とがどのように関係して成立したかについて興味を持ち,遺伝子の配列情報データベースを利用して,原核生物の系統関係と遺伝子クラスターの形成との間に相関関係を見出だすことで,新しい生物進化の理論構築を目指している. (7)別所 義隆(台湾中央研究院) 生命の起源,あるいはアストロバイオロジーに興味をもち,その視点を常に持ちつつ,現在の生物システム,特にDNA修復システムとRNA転写後修飾システムについての研究を活発に行っている. (8) 三瓶 嚴一(電気通信大学) ゲノムあるいはそれを構成する個々の生体機能システム(例えば物質代謝系)がどのようにして出来上がったのかという問題を解明することに取り組んでいる.この問題は,生命システム原材料の起源と進化の問題と表裏一体であると考えている. さらに,西山 真先生(東京大学)など,多くの研究者に適時加わっていただき,貴重なご意見をいただいた. 3.活動 平成24年度に4回および25年度に6回のフォーラム会議を開催した. H24年度の1回目は,代表者である根本が自身のこれまでの研究と生物進化について考えを述べ,それについて議論を行った.またこのフォーラムの今後について意見交換した.2回目の会議では,松村茂祥先生(ストラスブール大学)に「マイクロ流路技術による「RNAワールド」プロト細胞モデルの構築と実験進化」という演題で,原始生命体での分子の進化の可能性についてご講演いただき,それに基づいた議論を行った.また,3回目の会議では,フォーラム構成員の溝渕先生に,物質代謝に関与する遺伝子システムの編成とその意味についてご講演いただいた.4回目には,それまでのフォーラム会議で開催のために議論を重ねていた,電気通信大学主催,千葉工大の本フォーラム共催による,「電気通信大学生命科学シンポジウム」を電気通信大学で開催した(図)。午前の「分子の形成に関連した講演」に5名の演者,午後の「物質代謝系の形成と進化に関する講演」に6名の演者にご登壇いただき,このフォーラムで議論していたテーマについて,最新の研究成果をご講演いただき,50名を超す聴衆と共に活発な議論を行った. H25年度の1回目の会議には,武藤愛先生(京都大)に「保存された連続反応から見えてくる代謝ネットワークのモジュール構造」の演題でバイオインフォマティクスを用いた,代謝ネットワーク形成の仕組みについてご講演いただき,生化学者との視点の違いなど活発に議論した.また,2回目には,浅野桂先生(カンザス州立大学)に「開始コドン選択の制御と進化について」の演題でご講演いただき,遺伝システム成立の仕組みについて,様々な考えが議論された.3回目は,第86回日本生化学会大会でシンポジウムとして開催した.「生命システム原材料の起源と進化:物質代謝システムの自己組織化」のタイトルで5名にご講演いただき,100名の学会員が聴衆として集まった.総合討論では,物質と細胞との間のミッシングリンクを探るというテーマで,代謝経路形成のメカニズムについて,活発な議論を行った.4回目の会議は,「膜脂質から考える真正細菌,古細菌および真核生物の起源と進化」の演題で,再び根本が講演した.講演後の議論では,2年間の本フォーラム活動よって,学会に対してかなりの知名度が得られてきたので,このままフォーラム助成と同時に終了してしまうのはもったいないという声が学内外の構成員の総意であり,今後も何らかの形で継続する予定である.5回目と6回目の会議は,本フォーラムでの議論し温めた考えを,大型研究費獲得という形で生かすため,申請に向けた話し合いを行った. 4.今後の展望 本フォーラムでは,生命システム原材料(すなわち物質とシステム)の起源と進化について,多くの議論を重ねることによって,その理解を深めることができた.また,学会でのシンポジウムや電通大シンポジウムを通して研究者にこのフォーラム活動を理解していただいたと考えている.現存の生命について深く理解することによって,その起源と進化を科学的に解明するという本フォーラムの考え方は,新しい学問を開拓することにつながると期待している.なお,本フォーラムの議論に基づいて,科学研究費補助金に2件の応募を行った.また,上記の通り大型予算への申請を計画しているところである. 5.補足 第86回日本生化学会大会シンポジウム(2S07p-1) 「生命システム原材料の起源と進化:物質代謝システムの自己組織化」15:30 – 18:00 パシフィコ横浜 図. 電通大シンポジウム(共催千葉工大)ポスター 2014 千葉工業大学附属総合研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2014      95

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