千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2014年版
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定」,「施設訪問履歴による目的地推定」,「イベント参加履歴による目的地推定」の3つの目的地推定モジュールである.これら3つのモジュールが並列で動作する構造になっており,通学路が工事中などの状況に応じて,それぞれの手法の重みを変化させる.提案手法では,地域情報や児童の行動履歴を利用して「児童の好みの施設」や「児童の好みのイベント」を抽出し,それらを3つの推定手法で利用して様々な視点から推定を行い,そして,3つの推定手法間で推定結果を交換し合うことで,目的地推定の高度化を実現する.具体的には,児童の行動履歴とWeb・地図データから,移動履歴,施設訪問履歴,イベント参加履歴を抽出する.その後,各履歴を曜日ごとに分類し,移動履歴は交差点や道路,施設等の主用ポイントをノードとしたツリーで表現し,施設訪問履歴とイベント参加訪問履歴は,施設訪問回数,イベント参加回数を付加したリスト形式で表現する.目的地推定をする際には,推定する日の曜日に対応したツリー・リストに対して,条件付確率等を用いて走査を行い, 目的地を推定する.走査の際には,児童の現在位置から,通り過ぎた場所にある施設やイベントに対しては,条件を厳しくするなどの方向の考え方も取り入れて推定精度の向上を目指す. 図2.Sottoにおいて用いる地図の例 2.2 提案手法の概要 図1に示した3つのモジュールにおいて行う処理は,「事前処理」と「行動中の処理」の2 種類に分類することができる.「事前処理」とは,児童が行動をしていないときに行う処理である.事前処理では,児童の行動履歴を用いて,児童の行動の特徴を抽出する.具体的には,行動履歴から児童の行動を表すツリーを作成することや,「児童の好みの施設に関する知識」と「児童の好みのイベントに関する知識」を抽出することである. 一方の「行動中の処理」とは,児童が実際に移動を行っているときに行う処理である.事前処理で生成した児童の行動の特徴を表す情報や知識と,児童の現在位置や地域情報,更に他の手法で推定した目的地を利用して,目的地を推定する. なお,事前処理および行動中の処理において用いる地図は図2に示すような簡略化された地図を用いて行われる.これにより,児童の行動履歴の管理が容易になり,各モジュールにおける推定においても処理負荷の軽減につながる.しかしながら,この簡略化された地図には距離に関するパラメータが無いため,例えばrd3に児童がいる事はわかるが,それがcp6に近い側なのかcp3に近い側なのかがわからないという問題点があった.そこで本研究では簡略化された地図を作成する際に,距離に関するパラメータを導入し地図の詳細化を図った.本年度は距離間隔を10mとして設定し実験を行った. 3.試作実験と評価 提案手法を試作し,評価を行った.児童の行動履歴や行動パターン,イベント情報等を生成し,シミュレーションを行った.本来であれば,実際の児童の行動履歴を収集して実験を行うべきであるが,プライバシー保護の観点などから困難であるためシミュレーションを用いた.シミュレーションに用いる児童の行動履歴に関しては,本研究の結果に過度に有利とならないように,設定した地図において想定できる状況からできるだけ多くのパターンの行動履歴を作成した.そしてその行動パターンの組み合わせを変えることにより10000人分に相当する仮想児童データを作成して実験を行った. 実験は2種類行った.実験1は既存手法では推定出来なかった目的地推定の可否の確認であり,実験の結果から目的地の推定が可能であることを確認した.実験2はSottoが様々な児童にも適用可能であるかの確認であり,実験の結果を図3に示す.図3に示すとおり,Sottoにおいて,既存手法に比べて高度な目的地推定が可能であることを確認できた. 図3.実験結果 4.まとめ 本研究では,児童の行動履歴や地域情報などの様々な情報をシステムに組み込むことで,より精度の高い子供の目的地予測を行う手法を提案した.評価から,提案したSottoにより高度な児童の目的地推定が可能であることが確認できた.今後の課題として,新たな目的地推定手法の検討や,推定された目的地を表示するためのインタフェースの作成などを行っていく. 2014 千葉工業大学附属総合研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2014      87

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