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※本文中の役職等は取材当時のものです。

ウェブ健診予約 国内シェア4割 同窓の夫人と共に

「どんなIT技術を使ったら日常の暮らしはどう変わるかを考えながら学びを」と語る小野田さん
「どんなIT技術を使ったら日常の暮らしはどう変わるかを考えながら学びを」と語る小野田さん

株式会社両備システムズ副社長

小野田 吉孝(おのだ よしたか)さん

(平成2年、工業経営学科卒)

 デジタル庁が今年9月始動した。電子政府・電子自治体、その先のIoT社会へ向け、ビジネスチャンスは広がるといわれる。「でも、システムの標準化の流れいかんで仕事は変わる。油断できません」。岡山県内では最大規模の企業集団「両備グループ」でICT(情報通信技術)部門を担う「両備システムズ」副社長、小野田吉孝さんは慎重だ。岡山市の本社でうかがった。

 いまだ収束の見えぬコロナ禍。予防の切り札とされるワクチン接種をめぐり、さまざまな騒動が今春から続いている。大規模自治体で電話予約の申し込み開始から1分間に見込みの倍の200万件の電話が殺到、用意した350回線はパンクしたのは記憶に新しい(5月)。

 「当社の請け負ったシステムでした。システムを回収して2日後に回復しました。お客さまに多大な迷惑をかけたが、予約殺到時のクラウド対応は勉強になった」。小野田さんは謙虚に語る。この実直さが全国1741市区町村のうち約4割・700自治体で両備の住民健診システム採用につながっているのだろう。

 中学・高校とバスケットボールのコートを走り回った。中学時代、岡山県代表として全国大会へ駒を進めている。「関東の空気を一度吸ってみたい」と、理系で経営マインドを学べる本学へ。当時、工業経営学科を持つ大学は少なかったという。「だけど、あまり勉強しなかったです」。

 3年次で引退し卒業研究に専念する慣例を破り、4年のとき関東大学バスケットボール選手権の本戦へ。「代々木第二体育館で前年度全国優勝の拓大とプレーした。敗れたが、そこまで行けてうれしかったな」。それが勉強不足の言い訳になるかどうかは微妙だが、「部内恋愛ご法度」と言う部顧問のきついガードをかわして〝愛のパスワーク〟を重ね、2年後輩の女子マネジャー(建築学科卒)を射止めた。自動車運転時の視線の動きをテーマに卒研をまとめ、卒業5年後にゴールイン。夫人の由季子(旧姓・小杉)さんである。

 「これからはコンピューターの時代だ」。卒業した1990年、スイスで世界初のウェブページが公開された。小野田さんはふるさと岡山市へ戻り、電子計算センターから発足して25年目の両備システムズにシステムエンジニアで入社。4年後、営業マンとして東京支社へ移り、電子カルテ、ゴミ収集予約システムなど公共向けソリューションの普及・販売などに巡った。

 失敗もいろいろ。「システム構築を受注したものの、設計費用が予算の倍かかったり、稼働したものの不具合を起こして突然ストップし、『止まったぞ!』と怒られたり」と苦笑する。しかし改良のたび、システムは強くなっていく。その後、岡山と東京の異動を繰り返し、東日本大震災の2011年に岡山在勤へ落ち着いた。由季子さんも親会社の両備ホールディングスで経営企画および役員秘書を担当している。

 規模拡大とブランド名のアップを図るため、昨年1月にグループ内のICT部門6社が両備システムズを核に合併。その勢いで、10万円の特別定額給付金の連携システム(全国共通申請様式)を政府・自治体等から受注した。2030年にはいまの年商310億円から500億円へ飛躍を目指す。コロナ禍で採用数を減らす企業が多い中、今年より10人多い73人の来年採用予定者を内定済みだ(うち本学から2人)。今年3月、専務から副社長へ昇格した。

 コンピューターが目を持ち、マスクをしたまま顔認証できるほど、進化のスピードは速い。「多くの人と付き合い、どんなIT技術を使ったら日常の暮らしはどう変わるかを考えながら学びを」と現役世代へエールを送る。「人生一生営業マン」を座右の銘に、たまのゴルフと旅行でストレスを発散するという。

両備グループ

 1910(明治43)年、西大寺鉄道(廃線)として誕生。公共交通、レジャー、アグリビジネス、不動産など約50社を擁し、竹下夢二美術館など文化事業も推進する。2022年春卒業予定の大学生らを対象にした岡山県内の就職人気企業ランキングで両備システムズ(松田敏之社長、社員1523人)は4年連続トップ(情報誌出版「ビザビ」調査)。

NEWS CIT 2021年11月号より抜粋