• トップページ
  • 型破りな“痛快人間” 一芸に秀でるには“犠牲”も必要

※本文中の役職等は取材当時のものです。

型破りな“痛快人間”
一芸に秀でるには“犠牲”も必要

「自分を信じていれば何事も具現化する」と坂口さん
「自分を信じていれば何事も具現化する」と坂口さん

日本オセロ連盟九段(公認指導員)
全日本選手権優勝3回、名人位2期

坂口 和大(さかぐち かずひろ)氏

(平成3年 工業経営学科卒業)

 フルマラソン自己ベスト記録2時間39分。第6期近代マージャン最強戦ベスト6位。集中期は睡眠1日3時間。まず、8時間の睡眠を3時間の睡眠で生活できる体力を持つためにマラソンに集中したこともある。風邪とは無縁。そして、NTT東日本エンジニア。型破りな、文字通り“平成の痛快人間”を生き抜く日々。テレビは見ない、自宅に置かない。「一芸に秀でるには何かを犠牲にしなければ」と言い切る。機関銃のように言葉を連射し、自分の考え、そして人生観を語りかける。

 オープンキャンパスの9月15日。初めて母校に招かれたオセロの5面多面打ち。テントの会場に、朝10時から午後3時過ぎまで約5時間、立ちっ放し。イスに座った高校生ら105人を相手に一手1秒。休憩0秒。トイレも行かない。「負けません。一度も」

 オセロは、白と黒の駒を使った、日本生まれのシンプルゲーム。駒を置く定石を知る競技人口は国内で数千人から2~3万人。1局20分ずつの持ち時間。今年32回を数える世界大会には、40カ国から選手が参加するほどの人気だ。

 このオセロとの出会いは富山県高岡市の小学校5年生の時。おもちゃ屋のイベントに出かけ、「競技的オセロ」に魅かれた。それが運命を変えた。以来、オセロ街道をひた走る。テレビを遠ざけた。集中力を磨くため。マージャンは度胸をつけるのに役立つ。街の雀荘に通い、高名な漫画家雀士の強豪ともしばしば卓を囲む。

 社の蒲田独身寮の時代、朝夕走った。フルマラソンにも盛んに挑戦した。初マラソンは4時間30分ほど。ゆっくり長時間走して、ぐんぐん記録を上げていった。皇居8周マラソンもこなした。「だんだん体調管理が出来るようになった。風邪は徹底的に注意した。体調管理は自分を知ること。何事もそれが大切、とわかった」

 社会人になってオセロ普及のため、多面打ちの企画をあちこちに持ち込んだが、「集客力」に首を傾げられて、断られる。「自分を信じて続ける気持ちと覚悟があればいずれ具現化する」と言い切る。今では年間10回から30回は各地でイベントをこなす。逆に、誘いを断らなければならないことも。10月から池袋コミュ二ティ・カレッジでオセロ入門・上級講座も始める。

 2001年の全日本選手権V以来、優勝がない。「最近ではオセロ競技者の育成のほうに入っちゃったかな」。若い世代に。「まず、本当にやりたいことを見つけて、全部やってほしい。今、あるもの、現在の自分の体力とか、知識とか、で考えないように。徐々にやり続けることができれば必ず出来るようになる。オセロもいきなりチャンピオンじゃない」。フルマラソンも30数回2時間台で完走できたのは、「今ある実力で無理でも努力を続けていれば、実力がつくことに気づいていたから」。長くない有限な24時間×365日×80年の人生で「何でも行動し経験すべき」と。

 身長177センチ、体重76キロにエネルギーが満ちる。深夜3時、4時まで寝ないことも。典型的夜行性タイプ。

 長女5歳、長男2歳を追いかけるように11月、第三子の女の子が生まれる。「今は、子育て中心で、とても幸せ。オセロもあまり勝てなくなったのはそのせいかな。それでいいんです。“人生的に無限な事”と“人生的に有限な事”をいつも考えている。残せるのは自分の遺伝子、子どもだけなんですから」。家にテレビがないので、家族みんながアンチTV生活を続行中だ。

NEWS CIT 2008年10月号より抜粋