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※本文中の役職等は取材当時のものです。
”大空へ・・・”の目標が壮大な宇宙挑戦に
英語は世界の共通語、いまでも精進
目標を持って学ぼう・・・・・・・・と語る
NASDA(宇宙開発事業団)宇宙環境利用
システム本部宇宙ステーション運用技術部員
渡辺 一尊(わたなべ かずたか)氏
(平成4年・大学院電気工学専攻修士課程修了)
本学の鯨生態観測衛星「観太くん」が、昨年12月14日に種子島宇宙センターからH-IIAロケット4号機で、環境観測技術衛星(ADEOS2)とともに打ち上げられ、本学関係者を喜ばせた。
この快挙を一番喜んだ一人が、渡辺さんだった。打ち上げ成功の知らせを受け、「よく打ち上げにこぎつけたものだ。見事だった」と喜びの感想をもらした。
林教授の研究室で衛星設計のリーダーに
模型の宇宙船を前に宇宙開発について語る渡辺さん
「観太くん」の研究開発は、今から11年前に、文部省宇宙科学研究所から移ってきた林友直教授の指導で始まった。当時、大学院生(電気)で、林教授の研究室にいた渡辺さんは、リーダーとして鯨観測衛星の設計に取り組んだ。初めてのことで、専門分野とは違う理学系の物理や数学の知識が必要で、いろいろな学科の学生に呼び掛け、プロジェクトを結成、研究して、小型衛星の制作に取り組んだという。
その結果、第1回衛星設計コンテストで電子情報通信学会賞を受賞し注目された。その後も、この鯨生態観測衛星の研究は、約100人の学生の手に受け継がれ、今回の快挙につながった。
渡辺さんは、在学中に英会話の同好会を結成したりして、積極的な学生生活を過ごした。その胸の中には、高校(市川学園)から夢見ていた「いずれパイロットになって大空を飛びたい」という大きな目標があったからだ。大学院修了まで、4回にわたって、運輸省の航空大学校などを受験したが、いずれも学科は合格するものの、視力検査で落とされてしまった。
「NASDA」への道拓いた学生時代の研究
そんな渡辺さんが、卒業後に就職したのは(株)東芝だった。難関を突破して、配属されたのが、宇宙開発事業部だった。学生時代の研究が、やはりつながっていたのだ。同事業部では宇宙ステーションに搭載するロボットアームの設計や製造に関わった。
その7年後の2001年からは、その能力が認められ、NASDA宇宙ステーション連用技術部出向という形で抜擢された。ここでは、宇宙飛行士の訓練を行うテクニカルエキスパートとしての仕事を任されている。アメリカをはじめカナダ、フランスなど国際パートナーとの共同作業だけに、難しい面も多い。「直接、宇宙飛行士と関わりを持っているだけに、あのコロンビアの事故は大きな衝撃を受けました」と感想を述べる。
渡辺さんは、今年1月には、NASDAから宇宙飛行士のロボットアーム操作訓練のインストラクターとして認定された。NASDA(宇宙ステーション運用技術部)で認定したインストラクターは現在7人しかいない。子どもの頃から抱いていたパイロットへの夢は実現しなかったものの、それより大きな宇宙を相手の仕事をつかみ、着々と自分の道を歩んでいる。そして、渡辺さんは「現在の立場になって、やはり世界の共通語は英語です。英語の勉強はいまでも続けています」と実感している。
恩師の林教授も、「厳しい仕事をやり遂げている姿は立派です。これからも頑張ってほしい」と、さらなる期待を寄せている。
NEWS CIT 2003年4月号より抜粋