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2023.3.15

機械学会 表面創成技術で成果


瀧野教授を「フェロー」認定
 機械工学科の瀧野日出雄教授=写真=が2月7日、日本機械学会から「機械および機械システムとその関連分野で顕著な功績があった」として「フェロー」に認定された。
 瀧野教授は機械加工や特殊加工、特にナノやマイクロの微細な形状を持つ表面の創成技術を研究して、高い評価を得ている。
 機械学会は1897(明治30)年創立。126年の歴史があり会員数3万3千人を超える国内最大級の学会。2000年度からフェロー制度を導入し、顕著な成果を挙げた研究者に対し、正会員の3〜5%をめどに認定している。
 瀧野教授は「機械工学分野で日本を代表する学会から称号を頂き、大変光栄です。研究や学会活動を支えていただいた方々に深く感謝するとともに、称号にふさわしい社会貢献ができるように努力していきたい」とコメントした。

千葉市科学館リニューアル


次世代海洋研究センター協力
「しんかい6500」など展示
貴重な試料について説明する町田上席研究員 町田上席研究員も乗ったしんかい6500のコックピットを再現
貴重な試料について説明する町田上席研究員 町田上席研究員も乗ったしんかい6500のコックピットを再現
 最新の科学を、より魅力的に分かりやすく、と千葉市科学館(千葉市中央区・きぼーる7〜10階)が昨年夏から常設展示の一部をリニューアルした。主に組み替えたのは10階ジオタウンと9階テクノタウンで、「地底、深海、宇宙」をテーマに、子どもも大人も楽しめる内容となった。
 9階には海洋研究開発機構などの協力で、有人潜水調査船「しんかい6500」の原寸大モデルが展示された。本学次世代海洋資源研究センター(ORCeNG)の町田嗣樹上席研究員が深海探査や海底資源などに関する展示内容を提案・監修した。
 ▽しんかい6500と深海探査の1日▽海底探査技術の最先端▽深海底の金属資源――と、3つのテーマを展開。センターのメンバーが展示資料の多くを提供した。
 ・「しんかい6500」で海底を探査する際、研究者たちが持って行くものは?
 ・海底の地形はどうなっている?
 ・金属資源はどうすれば見つかる?
 ・金属資源に含まれるレアメタルは、暮らしにどう役立っているの?
 ほとんど目にすることのない深海底や金属資源の不思議を分かりやすく解説。水深5千メートル以上の深海底から採取されたマンガンノジュールなどのサンプルや、潜航調査の観察記録が書き込まれた地形図の実物を見ることができる。資源探査をリアルに体験できるシミュレーションゲームも人気を集めている。
 リニューアルには海洋研究開発機構のほか宇宙航空研究開発機構(JAXA)、国立研究開発法人(JAMSTEC)や企業も協力した。
<開設時間変更のお知らせ>
■ 4月から、学生窓口の事務取り扱い時間が下記のように変更となります。ご注意ください。

活躍する校友


学びは役に立つ
脱・マインドセットを
日本特殊塗料(株)社長
遠田 比呂志(おんだ ひろし)さん(64歳)
(昭和58年、工業化学科卒)
遠田 比呂志さん
「自分でものを考えられる人」と遠田さん
 近代社会を迎え、塗料産業は発展した。「わが社もそうです。でも私は工業化学を勉強したのに塗料の世界とは無縁だったんですよ」。航空機やロケットの塗料、自動車用防音材などで知られる日本特殊塗料(本社・東京、略称「ニットク」)の社長に一昨年6月就任した遠田さんは意外でしょう?≠ニいった表情で明るく言った。昨年、本社で話をうかがった。
 東京・田端で育った。なぜか物理が好きで、本学では「生体セラミックス用ガラス繊維の強度」について研究。アルミニウムなどを配合した骨の成分に近い無機材料を溶融してガラス繊維をつむぎ(紡糸)、その繊維に細胞になじむ素材をかぶせ(被覆)、組みひもに編む。それを医大の共同研究者へ送ってウサギの大たい骨に埋め、人工骨の再生実験に供したという。
 「アルミなどは元々生体にはありません。その配合やガラス繊維紡糸のドラム回転速度の調整は厄介でしたね」と思い出をたどってくれた。骨に対する関心は「小学生のころスキーや山登り中に転んで骨折したせいかな」という。
 その縁で当時としては最先端、かつその領域では少なかったセラミックス製造会社にエントリー。1次試験はパスしたものの、事情があって2次試験は受けず、大学推薦先に就職しなかった。入ったのは家から比較的近く、同じ研究室の先輩がいたニットク(本社は北区王子)だった。卒業の前年1982年秋のことである。
 ニットクは東京高等工業学校(現・東京工大)助教授の故・仲西他七氏が1919(大正8)年、品川で立ち上げた。30歳そこそこ。「ベンチャーの走り」(遠田さん)だ。航空機がまだ羽布製の時代。しかし、いずれ機体は軽金属(ジュラルミン)製になるとふんだ彼は、金属用塗料の研究も進めた。1930年、それが陸軍に正式採用され、戦闘機を彩った。
 しかし、太平洋戦争に敗れ(1945年)、航空機の国内製造は禁止に。航空機メーカーが相次いで自動車産業へシフトする中で、ニットクはまず屋根瓦用の塗料を開発し建築業界へ、次いで自動車や鉄道車両の防音・防錆(さびを防ぐ)・衝撃防護の塗料や防音・制振(振動を抑える)材を開発、やがて同社のメインとなる自動車部品事業へと進出していった。遠田さんはこの部品分野で技術屋人生をかけていく。
 入社し、先輩に「恨むなよ」と引導を渡されて配属されたのは自動車製品事業部の音響技術部試作課。新設の部署だった。クルマは、エンジンはもちろん、走行中に車体から騒音や振動を発する。このため車体のあちこちに防音材と呼ばれる部品が使われている。防音材とは吸音、遮音、制振の機能を持つ材料のことで、車体の振動騒音現象に応じて材料を選定し、適切な場所に配置されている。これらの実装に必要なのが設計図面だ。
 「ところが私は図面を読めないし引けないんですよ。仕方なく半年ほど専門学校へ夜通い、マスターした。でも、そのおかげで部品の試作から金型の発注、そして量産立ち上げと、部材メーカー、金型メーカー、自動車メーカーの各工場で立ち会って全工程を一人で担当できた。組織(正社員だけで現在約1300人)が大きくなり、分業化した現在では難しいことができる時代だった」と喜ぶ。いまでこそ自動車防音対策の音響設計技術や自動車用防音材のニットクの市場シェアは業界トップクラスだが、「大学の研究室で思考錯誤しながらガラス繊維を紡糸した体験が役立ちましたね」と振り返る。学びはやはり大切なものである。
 以来、自動車製品事業本部一筋。子会社の役員に約1年出向したが、戻って塗料部門を含む社全体の原価管理部長などについたあと、取締役(2012年)をへて社長(2021年6月)に就任した。
 「いろいろな部署を経験し、発想のウイングを広く持つことが重要」と組織をまたいだ人事交流の必要性を社員に説く。「脱・マインドセット(先入観、固定した考え方を捨てる)を、とも言っています。何事にも柔軟に対処しよう、という意味です」。
 ところで、現代の学生は採用面接でどう見えますか?
「実は個性を見分けにくいんです。面接の練習でもしてくるんでしょうか」という。「ともかく自分でものを考えられる人が欲しい。当社は社名に塗料とあるので化学関係の学生はたくさん来てくれます。一方、自動車用防音部品のトップメーカーでもあり、機械や電気を学び、図面を引ける学生にもっと入ってもらいたいですね」と付け加えた。