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2022.12.15

PERC ■ 秋田谷上席研究員が解説


皆既月食ライブ配信
 千葉県八街市教育委員会と本学惑星探査研究センター(PERC)は11月8日、市内の小・中学生と保護者を対象に皆既月食の特別観望会を開き、その様子をYouTubeでライブ配信した。観望会は今年で2年目、昨年は雲で見えなかったものの、今年のコンディションは良好。昨年に続きPERCの秋田谷洋・上席研究員が解説を行った。
 皆既月食は、太陽と地球と月が一直線に並び、満月が地球の影に完全に覆われる現象で、今回は日本全国で見ることができ、時間帯や月の高度、継続時間も好条件。月が本影の中心に近い位置を通過するため、皆既の状態が長時間継続し、赤く染まった幻想的な月の姿を、ゆっくりと眺めることができた。
 参加者からは「昨年も参加しました。楽しい企画がいっぱい」「先生の話でさらに天体観測を楽しむことができた」「YouTubeでの配信だったため見逃した部分に遡ることができた」などと感想が寄せられた。
 今年度のYouTubeの再生回数は2695回と過去最多を更新した。質問に対応した秋田谷上席研究員は「せっかくの皆既月食、自身の目で見てほしい」と話した。
皆既月食の配信画面
皆既月食の配信画面
秋田谷上席研究員
秋田谷上席研究員

ADHD 信川教授と熊野さんら


実データと数理モデルで解析
 本学の大学院生・熊野開さん(情報科学専攻修士1年、信川創研究室=写真右)と指導の信川教授=同左、福井大、金沢大の研究者ら10人は11月8日、計算機上に構築した瞳孔径制御の神経経路モデルに瞳孔径時系列の実データを組み合わせ、注意欠陥・多動性障害(ADHD)を生物学的指標で推定する方法を実現したと発表した。
 現在は問診主体のADHD診断に、客観的・定量的な指標による推定が加わると期待される。成果は熊野さんを論文の筆頭著者として、米科学誌ニューラル・コンピューテーション電子版(10月14日付)に掲載された。
 ADHD患者の左右の瞳孔径は刻々、特徴的に変化する。信川教授らはこれまで、瞳孔径を制御する神経系を計算機上に構築する数理モデルを提案。近年、明らかになって来たADHDと脳深部の青斑核(LC)との関係を、実データと併せて解析してきた。
 LCは、瞳孔径の交感神経と副交感神経の経路の起点になって注意・覚醒機能を調整する。このLCの左右非均衡化、特に右の過活性がADHDに関与するのではないかと疑われた。
 今回、信川教授と熊野さんらは、神経モデルによるシミュレーションを駆使することで、非均衡を表すパラメータ領域の特定に成功。これにより、簡単に装着できるアイトラッカー(眼球の動きなどを計測する眼鏡式装置)などで瞳孔径時系列の情報を計測し、数理モデルに組み込めば、LCの左右非均衡の程度が推定できることが分かったという。
 熊野さんは研究で数理モデルによる計算機実験を担当し、ADHDへの関与が想定されるパラメータ領域を特定するなどの役割を果たしている。信川教授は今後、モデルをさらに精密化し、特徴量の抽出方法を洗練させていきたいとしている。

エコメッセで学部生・院生らが活躍


水環境保全、多様性を守る
 環境活動の見本市「エコメッセ2022 in ちば」が10月23日、幕張メッセ国際展示場で3年ぶりに対面開催された。今年のテーマは「people:笑顔のバトンをつなげよう」。本学の生命科学科分子生態工学研究室(村上和仁教授)、教育センター南澤研究室(南澤麿優覧准教授)など大学・市民団体・企業・行政、オンライン参加を含め82団体が多様な取り組みを展示した。
■村上研
 「SDGsの目標6:安全な水とトイレを世界中に」をテーマに展示。バイオ・エコエンジニアリングを活用した環境保全、特に微生物生態学の立場から水環境の保全研究に取り組む。
 今回は、4年生11人と修士1年生2人の研究成果をパネル展示。▽生物指標による県内河川環境マップの作成▽谷津干潟(谷津川・高瀬川)の生物環境調査▽小松川自然地(荒川河口干潟)の生物環境調査▽蓮沼海浜公園ボート池の生態系調査▽マイクロコズムを活用したWET試験法による環境毒性評価――などを発表。千葉県沿岸域で採取したマイクロプラスチックの標本も展示した。
村上研の展示
村上研の展示
■南澤研
 「SDGsの目標17:パートナーシップで目標を達成しよう」をテーマに展示。日本で最古のカレンデュラ(キンセンカ)の生息・栽培地である南房総市×南澤研究室×オークランド植物園(ニュージーランド=NZ)の3者が連携して生物多様性の回復を研究している。
 今回は「原種のユズとカレンデュラから始まった物語」として、1本の電話から始まったカレンデユラとの出会いと、3者連携に至るまでをパネル展示。▽台風直撃の南房総市でカレンデュラの秘められた力の発現を発見した南澤研の報告▽カレンデュラの原産国キリギス共和国から南房総市に移住し農園を始めた元海外青年協力隊の夫婦、南房総市職員と市民団体から託されたカレンデュラの新規機能分析結果▽殺菌・殺虫剤に頼らず最適な健康状態を示す植物の生態系を確立したNZの植物園とのパートナーシップ――を南澤研の院生・学部生10人が来場者に紹介。南房総市・中東・オセアニアで栽培されたカレンデュラを比較展示し、植物に最適な再生パワーを守ることがSDGsを達成する近道であることを示した。
南澤研の展示
南澤研の展示

5年度 推薦系入学者選抜が終了


 令和5年度総合型(創造)選抜が10月15、16日に実施されたのを皮切りに11月20日=学校推薦型選抜(指定校制・帰国生徒指定校制)、編入学選抜(指定校制・高等専門学校)▽同26日=特別選抜(外国人留学生・帰国生徒・社会人)、編入学選抜▽同27日=学校推薦型選抜(公募制・専門高校)――が実施された。
 新型コロナウイルスの感染拡大で、学校推薦型選抜(指定校制・帰国生徒指定校制)は一昨年から出願時に小論文を提出し面接は免除していたが、今年度から対面の面接が復活。学校推薦型選抜(公募制・専門高校)では、津田沼校舎のほかにサテライト会場を札幌、仙台、名古屋、大阪、福岡の5カ所に設け、読解力テストとともに、津田沼会場の担当教員とオンラインで面接を実施し遠方の学生に配慮した。
 今年度の推薦系志願者総数は1555人。編入学選抜の試験志願者数は46人となった。

出版


デジタル人材、自ら育成を
角田教授
角田教授
最近の化学工学70 進化するファインバブル技術と応用展開
ユーザーシフト宣言
著者= 角田仁・金融・経営リスク科学科教授
発行= クロスメディア・パブリッシング
価格= 1408円(税込み)
 DXやデジタル人材が本格化する一方、日本のデジタル人材の不足感は深刻だ。デジタル人材育成学会会長を務める角田教授が、解決策としてユーザー企業(一般事業会社)中心のデジタル人材育成を薦める。
 角田教授によると、ユーザー企業は長年、IT企業へ過度に依存してきたが、今後は自らデジタル人材を育成して依存から脱却することが日本経済復興のカギだと言う。これをユーザー企業中心の「ユーザーシフト」と称し強く推奨している。
 先に出版した『デジタル人材育成宣言』の続編。前作ではマクロ的にデジタル人材育成を日本全体でどう進めるかを述べたが、本作ではミクロ的に各企業がどうすべきか具体的な手法などが記述されている。