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2021.9.15

ロボカップ世界大会で


ベストロボットモデル賞2位 「CIT Brains」 オンライン開催
 今年はオンラインで開催された「ロボカップ世界大会2021」(6月22〜28日)に、未来ロボティクス学科有志らのヒューマノイドロボット開発チーム「CIT Brains」が出場。キッドサイズ部門のサッカーでは4位だったが、ロボットモデルの優秀さを競うヒューマノイドリーグ・ベストロボットモデル賞部門で2位入賞を果たした。
 キッドサイズ・サッカーは4位
本学チーム
本学チーム
 「2050年までに人間のサッカーW杯チャンピオンに勝つ」と目標を掲げるロボカップだが、昨年はコロナ禍で中止。仏ボルドーで開催予定だった今年の大会も現地開催は中止となった。大会国際委はロボットの実機を使わずコンピューターシミュレーションでバーチャル開催しようと模索、オンラインで開かれることになった。
 CIT Brainsは林原靖男未来ロボティクス学科教授指導の下、2014年ブラジル、15年中国大会のキッドサイズ部門で優勝、16年、17年、19年はそれぞれ同部門で3位入賞した。しかし今回は画面内でロボットを動かすため、各チームとも動作プログラムの大幅な作り変えが必要に。モーターなど実機のさまざまな特性を計測し、その値を逐一シミュレーターに移してロボットを構成し、仮想空間で動くようにしなければならない。
 例えば、ペナルティーキック時には人が実機を置き直して試合を続けていたが、ロボが自分とボールの位置を画像から推定し、適切な距離を保って試合を行うなど、自動化がより求められた。これに加え、開催までの準備期間が短く、大会参加はソフト開発に自信があるチームに絞られた。
 CIT Brainsは例年上位入賞しているキッドサイズ部門に参加。計14チームで世界戦を展開した。
 試合は10分ハーフで計20分の戦い。予選リーグの上位2チームが決勝トーナメントに進出。CIT Brainsは決勝トーナメントに進んだが、準決勝を5対2で敗退。3位決定戦でも2対2の同点の末、PK戦で敗れた。優勝はStarkit(ロシア)、2位はMRL-HSL(イラン)、3位はHamburg Bit-Bots(ドイツ)だった。
 一方、バーチャル大会になり、今回初めてモデルの優秀さを競うヒューマノイドリーグ・ベストロボットモデル賞が創設され、CIT Brainsは2位に入賞した。
 例年、投票で決するベストヒューマノイド賞に相当し、実機でない今回はキッド、アダルトの両部門を合わせロボットモデルの優秀さを競った。
 コンピューターで作り上げたロボット実機の設計図をそのままバーチャル機に反映するとデータ量が多すぎるため、正確さを欠かず、どこまでデータ量を削ぎ落とし軽快に動かせるかが評価基準となった。オンラインでの英語のプレゼンテーションは井上叡さん(未来ロボティクス学科3年)が行った。
 CIT Brainsは特にサーボモーターの特性について、計測によって求めた値をシミュレーターに使っていることをアピールし高い評価を得た。またロボットの足の機構は、他チームがシリアルリンクなのに対し、CIT Brainsだけがパラレルリンクを使用。これをシミュレーションで再現したことも高評価となった。
林原教授の話
 優勝はできなかったが、得意なものづくりが封じられた中で、トップレベルを維持できたのは学生たちの頑張りの成果だと思う。知能分野でも世界のトップレベルにいることが証明できた。
チームリーダー、桑野雅久さん(未来ロボティクス学科4年)の話
 CIT Brainsの実機ロボは「GankenKun」という名の通り頑健さが特徴だが、今回はその強みを生かせなかった。一方、今回の経験でハードとソフトの問題点の切り分けがしやすくなって開発スピードを一気に上げられるようになった。来年は実機でサッカー競技世界一を目指したい。
シミュレーション画面
シミュレーション画面
●チームメンバー(敬称略)
 高橋直樹=未来ロボティクス専攻2年▽松本康希=同1年▽桑野雅久、塩島諒子、長谷川豪大=未来ロボティクス学科4年▽井上叡、川鍋清志郎、神戸隼、久保寺真仁、佐藤暖、野口裕貴、三渕優太、横尾陸=同3年▽新井亮大、岩澤尚樹、小川晴生、茂松勇毅、西尾唯右吾、馬頭莉子、森圭汰=同2年▽相場裕斗、茂郁良、関取泉咲、月野賢汰、長峰拓也、西健吾、福田 大樹、藤崎賢蔵、保科 瞬、前田輝、松山裕作、宮脇海斗=同1年

モヒニさん最優秀賞


ウイルス 薬剤耐性獲得の仕組みは
 今世紀明らかになった生物学の諸問題を細胞・分子レベルで討議する国際会議(アミティバイオテクノロジー研究所主催=4月8、9日、インド・ニューデリー近郊ノイダのアミティー大学などで開催)で、インドから本学に留学中のモヒニ・ヤダフさん(工学専攻博士後期課程3年、山本典史研究室=写真)が「インフルエンザ・ウイルスやエイズ・ウイルスが薬剤耐性化するメカニズムについてのコンピュータ・シミュレーションを用いた研究」を口頭発表し、最優秀賞を受賞した。
 インフルエンザやエイズの治療では、病原ウイルスの増殖を抑える薬が使われるが、ウイルスも対抗変化して薬剤耐性を獲得することがある。
 モヒニさんは、コンピューター内で分子シミュレーションし、タンパク質内部の動的な相互作用を詳しく解析する新手法を開発。インフルエンザ治療薬タミフルについて、ウイルスが薬剤耐性を獲得するメカニズムを分子レベルで明らかにした。
 受賞にモヒニさんは「I'm really happy to receive the award.(受賞できて本当にうれしいです)」とコメントした。

パルモさん 国際会議で優秀賞


ゼロトラスト拡張モデル提案
 コンピューター・情報科学の研究成果を話し合う第10回高度応用情報学に関する国際会議(IIAI AAI2021)は7月11〜16日、リモートで開かれ、査読された論文中、ヤンチェン・パルモさん(マネジメント工学専攻修士2年=チベット出身、谷本茂明研究室=写真)の「A Consideration ofScalability for Software Defined Perimeter Based on the Zero-trust Model(ゼロトラストモデルに基づくソフトウェアディファインドペリメーター〈SDP〉の拡張性の考察)」がOutstanding Paper Award(優秀賞)を受賞した。
 コロナ禍などでテレワークが進む中、情報セキュリティーは社内・社外で信頼度を分けるようなファイアーウォール型では対処し切れなくなってきている。これに対し、常に攻撃されることを前提に情報を認証・認可処理するゼロトラストモデルが注目されている。
 パルモさんらは、実装が進むゼロトラストモデルの一つ「SDP」について、ネットワークの大規模化を検討した。
 論文では、同様のトラスト型モデルであるPKI(Public Key Infrast ructure)を参考に、複数のSDP拡張モデルを提案し、机上評価でブリッジモデル(相互認証モデル)が最適であることを明らかにした。
 パルモさんは、谷本教授から紹介されたSDPが興味深く、同モデルの拡張性を深く検討するきっかけとなったという。昨年前期はオンライン授業になったが、Zoomなどで適宜、教授に相談し論文を完成させた。
 受賞について「情報技術の重要性が増している中、さまざまなセキュリティーの課題を克服することが急務となっています。今回の受賞は自信となり、アイデアを発展させて研究を進めていく意欲がわいてきました」とコメントした。

西山さん学生優秀発表賞


音のVRへ 頭部伝達関数を追究

 日本音響学会の2021年(第22回)春季研究発表会は3月10〜12日、Zoomでオンライン開催され、西山織絵さん(知能メディア工学専攻修士2年、飯田一博研究室=写真)の「判別分析による正面と後方の個人の頭部伝達関数のノッチ周波数binのカテゴリ推定」が学生優秀発表賞を受賞した。
 西山さんは飯田教授の研究室で、空間音響と音のバーチャルリアリティー(VR=仮想現実)に取り組んでいる。3次元音響再生や音のVRの実現には、頭部伝達関数の研究が必要。頭部伝達関数には大きな個人差があり、個人に適合したものを提供しなければならない。
 西山さんは、頭部伝達関数の中でも個人差がある上に音像定位の手がかりに重要とされているノッチ(外耳道入り口で音圧変化が小さくなる振動モード)に着目。耳介形状を説明変数とした判別分析による正中面0度、180度方向のノッチ周波数のカテゴリ推定を行い、推定精度を検証した。
 オンライン発表での分かりやすいプレゼンを工夫したといい、「(受賞は)思ってもいませんでした。ご指導いただいた飯田先生と研究室の皆様のおかげで、深く感謝しています。受賞を励みに、今まで以上に研究に取り組んでいきたいと思います」と述べた。