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2021.9.15

PERC超小型衛星プロジェクト2号機


宇宙塵観測衛星打ち上げ
 惑星探査研究センター(PERC)は10月1日、超小型衛星2号機「ASTERISC(アスタリスク)」を鹿児島県の内之浦宇宙空間観測所から宇宙航空研究開発機構(JAXA)のイプシロンロケット5号機を使って打ち上げる。宇宙から地球に入ってくる宇宙塵を観測することが主な目的で、長期間、宇宙塵をリアルタイムで観測できる世界初方式の粒子観測装置を独自開発し、搭載している。
超小型衛星アスタリスクの外観。左部分が大面積化した膜面状ダストセンサー 石丸上席研究員と、衛星からのデータを受信する津田沼校舎1号館屋上のパラボラアンテナ
超小型衛星アスタリスクの外観。
左部分が大面積化した膜面状ダストセンサー
石丸上席研究員と、
衛星からのデータを受信する津田沼校舎1号館屋上のパラボラアンテナ
大面積新センサー搭載
 宇宙塵は生命の起源や惑星の起源を探る貴重な試料で、今後3〜5年の観測でどんな成果が得られるか注目される。
 PERCは、独自の惑星科学探査を継続的かつ高頻度で行うことを目指して超小型衛星プロジェクトを2012年に立ち上げた。その1号機「S-CUBE」は15年9月に打ち上げられ、翌16年11月まで約1年2カ月間運用された。
 今回はその2号機となる。ASTERISCの大きさは30センチ×10センチ×10センチサイズの3Uキューブサット(10センチ角の立方体を1U単位とする超小型衛星)で、今回JAXAの革新的衛星技術実証プログラム2号機に搭載される実証テーマに採択された。他企業や大学の小型衛星など計9基とともにイプシロンロケットで打ち上げられ、地球周回軌道に投入される。
 革新的衛星技術実証プログラムは宇宙分野の研究促進や宇宙産業の育成などを目的に19年度から始まった国の事業。企業や大学の超小型の人工衛星などを定期的に相乗りで打ち上げ、宇宙分野に関わる技術や機器・部品を宇宙空間で実際に運用したり実験したりする機会を提供している。1号機は19年1月、小型衛星やキューブサットなど7基を搭載して打ち上げられた。
 PERCの今回のミッションでは宇宙塵の観測の他に、宇宙環境問題への取り組みがある。人類による宇宙利用によって増加しつつあるスペースデブリ(宇宙ゴミ)は数百ミクロンサイズであっても、宇宙機に衝突すると大きな被害を及ぼすことが知られている。そのような微小デブリの実態はよく分かっていないことから、微小デブリの定量的な観測・評価を行う。
 PERCではミッション実施にあたり、安価で容易に大面積化が可能な膜面状の粒子観測装置(ダストセンサー)を新たに開発した。宇宙塵と微小スペースデブリはいずれも軌道上で観測するには数が少なく、従来型の小さな面積の観測装置だと十分な成果が得られなかった。
 しかし、ポリイミドで作られた膜に圧電素子という小さなセンサーを接着しそのセンサーで電気信号を読み取るというシンプルな構成と独自の信号処理・解析手法を組み合わせることで、安価・大面積化・リアルタイム観測に加えて、ミクロンサイズ以下の粒子観測も可能という4つの特徴を実現できた。
 また、バッテリーや通信機、姿勢制御系など衛星の基本的制御に関わる「衛星バスシステム」についても本学と東北大、関連メーカーという専門家集団が一緒に開発に参加。最重要箇所に用いる低消費電力型の堅牢なコンピューターと、消費電力は高いが高性能なコンピューターをハイブリッドで使い、電力的に安心で機能的にも信頼性が高いシステムを構築した。この膜型ダストセンサーとバスシステムは、国の革新的衛星技術実証プログラムに採択された実証テーマとなっている。
 PERCで超小型衛星プロジェクトマネジャーを務める石丸亮・上席研究員は「今後、さまざまな衛星や探査機などに使える可能性が広がるので、実証後は、月や火星などの深宇宙探査を含む挑戦的な将来ミッションでの活用につなげていきたい」と抱負を語っている。
■ASTERISC (アスタリスク)
 古代ギリシャ語で「小さい星」という意味を持ち、記号「*」の名前でも知られる。宇宙塵は星のかけら。超小型衛星を「小さい星」に例えて今回、命名された。

成層圏で微生物採集実験


生物圏の上端どこまで?
大気球放球に立ち会ったバイオポーズプロジェクトメンバー
大気球放球に立ち会ったバイオポーズプロジェクトメンバー
 惑星探査研究センター(PERC)は8月5日、北海道の大樹町で宇宙航空研究開発機構(JAXA)の大気球を使って、成層圏での微生物採集実験(Biopauseプロジェクト)を行なった。地球の生物圏の上端がどこまであるのかを調べ「地球型生命の起源」を探究することが目的。今回、成層圏最下部が上端と確認できるかどうかが注目されている。
 大気球を使っての微生物採集実験は2016年、17年、19年に続いて4回目。生物圏の上端を生物圏界面(biopause)というが、大気球で大気の上部(成層圏)まで、微生物採集装置を上げて、生物が地球大気中のどの高さまで存在しているのかを調べることでbiopauseが分かる。
 実験は、大樹町の大樹航空宇宙実験場から放球された大気球に、PERCが独自に開発した微生物採集装置を5組搭載して行われた。ヘリウムガスを充填したポリエチレン薄膜製の大気球は高度30`に達したところで切り離され、微生物採集装置はパラシュートで降下。成層圏高層、成層圏下層、上部対流圏の各高度域でそれぞれバルブを開閉し、微生物を採取した。その後、実験場の南東約30`の海上で採取した試料を回収した。
 プロジェクトのリーダーを務めるPERCの大野宗祐・上席研究員=写真・右から2人目=によれば、biopauseを明確にすることで「宇宙から地球へ微生物やウイルスが入ってきているのか、また地球の生物が宇宙空間へ出ていくことがあるのかを知る手がかりを得ることができる」という。 16年の実験では世界で初めて難培養性のものを含めた成層圏微生物の観測に成功、19年には生物圏の上端に直接関係する観測結果を得ることができた。今回は成層圏だけでなく、その下に位置する上部対流圏でも試料を採取した。現在、biopauseが成層圏最下部に存在するのかどうかについて、採取した試料を蛍光顕微鏡と培養の両方で調べている。
 PERCは今後、モンゴルでの小気球による観測に加え、赤道域や極域、南半球など異なる緯度でも観測を行い、全地球的な成層圏生物の動態を調べてbiopauseの決定メカニズムの解明を目指す。

理事長 取材受ける


NHKファミリーヒストリーに舘ひろし氏が出演
 本学の同窓生で俳優の舘ひろし氏が8月23日、著名人の家族史を本人に代わって徹底取材する「ファミリーヒストリー」(NHK総合)に出演。放送では舘氏が今春、本学で卒業証書を授与されたことに触れ、大学在籍中に事務職員だった瀬戸熊修理事長が取材を受けた=写真
 瀬戸熊理事長は舘氏が休学中、お母様が10年間も本人に内緒で学費を納め続けていたことなど、家族愛にあふれるエピソードを話した。番組終盤では、本学が提供した卒業式のビデオが秘話映像として紹介された。