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2020.10.15

自律走行 AI駆使 未ロボの4人チーム


初開催 AWSロボコンに優勝
 自律移動ロボットで自動運転とAI(人工知能)技術を競う学生向けロボットコンテスト「AWS Robot Delivery Challenge」=アマゾン・ウェブ・サービスジャパン(AWS)主催=が9月15日、国内で初開催され、未来ロボティクス学科の池邉龍宏さん、渡部蒼也さん、高橋秀太さん、高見俊介さんの3年生4人(いずれも上田隆一研究室)のチームが優勝した。
 新型コロナウイルスの影響により、急きょオンラインでの開催となり、全国から118チームが応募。シミュレーター(模擬運転装置)で予選を勝ち抜いた12チームが9月15日の本戦に進出した。関西大、慶應大、豊田工業高専、宮崎大に続き、本学が最後の上位5チーム目として決勝へ。
 予選ではシミュレーター環境での理論値が勝負だったが、決勝戦は実世界の環境で走らせ機能できるかの、一発勝負のタイムトライアル。本学チームは終始最短経路を選んで走り、予選5位から見事、逆転優勝した。
 大会は、自律移動の小型配達ロボがミニチュアの街路を走り、4個の荷物をそれぞれ指定場所に運び、スタート地点に戻るまでの時間を競った。
 使用ロボは各チーム共通で「TURTLEBOT3・Burger」(タートルボットスリー・バーガー)という機種。遠隔操作とAIによる地図作成や位置把握などのサンプルアプリが用意され、これを基に各チームは独自の遠隔操作ツール、ナビゲーションシステムを作成し実装して優劣を競った。
 コースには、予想通りにいかないよう、電柱や路肩の違法駐車トラックなど障害物がチームごとに当日、配置された。
 また、実世界で走行するとシミュレーターでは直進したつもりでも、やや曲がって走ったり、タイヤが空転したり。障害物をいかに回避して走り不具合をどう補正するかがポイントとなった。
 池邉さんらは「(上田研で)日々自律ロボットについて考え、実験しています。そんな中で優勝という結果を得ることができ、自信につながりました」と喜びを語り、「常に意識していたのは、大会で最短を出すための経路生成と障害物回避。シミュレーター環境でひたすら検証とコード修正を重ねました」とブレ修正の難しさを語っていた。
 自律移動ロボは自動運転車や掃除ロボ、物流倉庫などの搬送用ロボなどと続々、実生活に広がっており、来夏開催予定の東京五輪・パラリンピックでは警備ロボ開発が急務となっている。
シミュレーター上の街路を走行(写真は「ロボスタ」提供) 池邉さん
池邉さん
渡部さん
シミュレーター上の街路を走行(写真は「ロボスタ」提供) 渡部さん

乙津さん 科学写真最優秀賞


偶然 生まれた文様
 応用物理学会が募集する科学写真のコンテスト=第16回JSAPフォト&イラスト コンテスト(Science As Art・9月8〜11日、オンラインで開催)で、乙津和希きさん(機械サイエンス専攻博士前期2年、菅洋志研究室)が菅准教授、産業技術総合研究所の内藤泰久、角谷透の両研究員らと応募した「白金膜の不思議な渦巻」=写真=が最優秀賞を受賞。9月28日結果が伝えられた。
 菅研究室と産総研で取り組む高耐久不揮発性メモリーの新しい形成手法を研究する際に偶然、白金蒸着膜上に現れた“作品”で、真円度の高い直径約100マイクロメートルの渦巻構造は美しい文様のよう。
 二酸化ケイ素(シリカ)上にチタン、モリブデン、チタン、白金の順に均一成膜した基板に、有機膜材料を塗布、はく離した後のサンプルを撮影した。平らな部分が白金膜表面で、黒線部分は白金がしわになり盛り上がったものという。
 「不思議な自然のいたずら。再現性もあります」と乙津さん。学会参加者が投票する最も優れた作品に選ばれた。
 乙津さんは「サンプル作りでうまく条件が出せず、いろいろな材料や条件を試行錯誤していた中で見つけました。サンプル作りの苦労が報われ、うれしいです。菅先生や産総研の皆さん、研究室の仲間に感謝したい」。
 菅准教授は「研究に真剣に取り組んだ乙津君だからできた発見。それを見逃さなかった好奇心にも脱帽です。このような精密なマイクロ構造が自然にでき上がったことは驚きで、メカニズムはよくわかりません(笑)。自己組織化はナノテクノロジーで注目され、今後の科学や工学の発展には欠かせないと言われています。こうした現象を理学的に解き明かし、工学的に利用する試みを学生とともに追究したいと思います」と語った。
乙津さん
乙津さん

加藤・次世代海洋資源研所長


基盤研究(S) 3連続で採択の快挙
 海底鉱物資源“レアアース泥”の探査などに取り組む加藤泰浩・次世代海洋資源研究センター(ORCeNG)所長=写真=の研究「地球環境変動・資源生成の真に革新的な統合理論の創成」が9月1日、日本学術振興会の科学研究費補助金「基盤研究(S)」に採択された。加藤所長の研究の同様採択は2010年、15年に続いて3回目の快挙となった。
 基盤研究(S)は独創的、先駆的な研究がさらに発展することを期待して設けられており、研究費申請額は5千万円以上2億円以下と大規模。期間は原則5年。
 今回採択された研究「地球環境変動……」は、加藤所長を代表に、直接経費1億5690万円。次世代海洋資源研のチームが開発した「化学層序プローブ」を用いて、レアアース泥を含む遠洋性粘土を網羅的に解析。表層環境変動や資源生成など、地球上で起こる諸現象をグローバル物質の循環という俯瞰的観点から統一的に説明する新理論を目指す。
 2010年の1回目の基盤研究(S)は「画期的な海底鉱物資源としての含金属堆積物の包括的研究」。これにより新しい海底資源・レアアース泥を発見。特に日本の排他的経済水域内での世界最高品位のレアアース泥の発見は、国の資源政策に影響を与えた。
 この成果を受け15年に採択された「海の鉱物資源の科学と工学の新展開」では、本学に高分解能マルチコレクターICP質量分析装置(MC-ICP-MS)を設置し運用。これまでにレアアース泥の生成や海底火山の成因に迫る高精度な分析結果が多数得られた。また、地球学研究センターとの共同研究にも活用されている。
 今回の採択研究でも、表面電離型質量分析装置(TIMS)を設置予定で、国内有数の地球化学研究拠点として研究の進展が期待されている。

デザイン・佐藤研チーム


障がい者の靴、最優秀賞
 下肢障がい者用におしゃれな靴をチーム制で提案する「2020 New Stand ard Shoes Project」((株)アシックス、東京靴研がサポート)は中学生・大学生が参加し9月2〜8日、オンラインで開催。最終プレゼン・投票の結果、本学デザイン科学科の佐藤弘喜研究室が提案した「easy&fit」が最優秀賞とアシックス賞、「ETo boots」がソライロフット賞を獲得した。
 プロジェクトは靴関連会社のほか、社会で活躍する障がい当事者、医療従事者らが審査に参加。1次審査を経て7チームが最終審査に進んだ。
オンラインによるプレゼンの様子
オンラインによるプレゼンの様子
■easy&fit
 履きやすく足にフィットするカジュアルな短靴で、佐藤海斗さん(デザイン科学科4年)がデザイン。コードストッパーを使っているのが特長で、片手でも履け、履き口を広げたり狭くしてサイズ調整が可能。「機能性、ユニバーサル性、ビジュアル面のバランスのとれた素晴らしいアイデア」と称賛された。
 佐藤さんは「下肢装具を付ける分、靴底を低くしたりソールをフラットにしたり、ファッション性とのバランスが大変でした。障がいの方からオンラインで直接意見を聞いて作るのは初めてで、よい経験になりました」と受賞を喜んだ。
■ETo boots
 “体験を一緒にするブーツ”をコンセプトに、木村颯汰さん(同科4年)が考案。膝下全体を下肢装具ごと包み込むように履ける。伝統の着物のイメージがあり「女性用ブーツを男性がデザインしながら細部まで配慮され、履く際のイメージがしっかりできている」と評価された。
 大勢にリサーチしたといい、木村さんは「下肢装具は全く知らない世界でしたが、新たな知見を得ることができました」と語った。
 他の5賞は、デザイン系に力を入れる中高一貫校の埼玉県立伊奈学園中学の1、3年生チームが受賞した。
easy&fit ETo boots
easy&fit ETo boots