NEWS CIT ニュースシーアイティ

2020.9.15

成層圏でロケット発射へ


和田研 実証実験に世界初成功
大気球で吊り 「地上で」より低費用
 高度30キロの成層圏に浮かべた直径100メートルの大気球から宇宙に向かって小型ロケットを打ち上げるという壮大なプロジェクトに、機械電子創成工学科・和田豊准教授の宇宙輸送工学研究室が挑んでおり、このほど、実証実験に成功した。

 「やまぐち空中発射プロジェクト」と名づけられ、山口県内の精密部品製造企業3社と東京都内の宇宙ビジネス開発ベンチャー、一般財団法人宇宙システム開発利用推進機構が参加。2018年度から山口県の補助金を得て開発を進めてきた。
 和田准教授の研究室は、気球を使ったロケット発射システム全体のデザインとコンセプトの検討を担当し、中心的な役割を果たしている。
 このプロジェクトのユニークさは、気球から吊り下げられた不安定な発射システムから、ロケットを目標の方向に正確に打ち出す技術にある。
 7月25日、山口県宇部市内の採石場で、大型クレーンにロケット発射システムを吊り下げて=写真、和田研が提案した姿勢制御装置と無線点火装置の機能などを確認する世界初の実証実験を行い、成功した。
 発射の衝撃の影響などを、この実験で得られた加速度計のデータや映像から解析し、今後、本格的な発射システムを開発するための基礎となる数学モデルの構築を進めるが、ここでも和田研が主導的な役割を果たす。
 このプロジェクトが狙っているのは、近年、急速に伸長している小型衛星市場への参入だ。とりわけ需要が拡大している民間衛星の打ち上げを受注するためには、打ち上げ費用の低コスト化が不可欠。成層圏からロケットを打ち上げることができれば、地上からの打ち上げに比べて燃料を大きく節約できる。
 また、放球場所を比較的自由に決められることから、わが国のロケット発射場不足の緩和にも役立つことが期待される。
 やまぐちプロジェクト自体は当面、小型ロケットと、これに搭載する100キログラム級の小型衛星の一体開発を進めるモデルの構築に取り組む。一方、和田研はこれまで独自に培ってきた高度100キロを目指す小型ハイブリッドロケットの開発技術をこのプロジェクトの中で生かしながら、惑星探査研究センター(PERC)が取り組んでいる上層大気中の宇宙塵採集のための新たな運用技術の開発も模索する考えだ。
 7月に行われた宇部市での実証実験には、本学から和田准教授のほか、大学院生7人と学部生2人、研究室OB、PERC研究員各1人が参加した。
学生参加で効果
 和田准教授の話 宇部市では本学の学生らが打ち上げ実験全般の指揮と安全確保に当たりました。このような実戦的プロジェクトに学生たちが参加できることの教育効果も大きいと思います。
崖を利用してロケットを吊り下げ 実証実験で学生たち
崖を利用してロケットを吊り下げ 実証実験で学生たち

名誉教授に2氏


花田 孝郎氏 三澤 哲夫氏
花田 孝郎氏 三澤 哲夫氏
 本学で長年、教育に尽くし、学術の向上に寄与した2氏に対し、本学は4月28日付で千葉工業大学名誉教授の称号を授与した。
 新たに名誉教授となったのは元デザイン科学科教授の三澤哲夫氏と教育センター教授の花田孝郎氏。

防災に新概念を提唱


松崎教授に技術賞
 デザインを通じ社会に新たな価値の創造を図る松崎元・デザイン科学科教授=写真=が、秦康範・山梨大准教授、佐藤唯行・スペラディウス(株)代表取締役、西原利仁・アスクル(株)部長、目黒公郎・東京大教授らとまとめた「防災に関わる新しい概念『フェーズフリー』の提案とその普及啓発」が5月22日、地域安全学会から技術賞を受賞した。
 2020年度地域安全学会春季研究発表大会(鳥取県米子市で開催予定)が新型コロナウイルスの影響で中止となり、郵送での授与となった。
 地域安全学会は、生活者の立場から地域社会の安全性に寄与しようと、自然災害・人為的災害を問わず安全問題を研究。自然科学や人文系など幅広い研究者・技術者らが協力している。
 松崎教授によると、防災に関わる新概念フェーズフリーとは、社会の状態(フェーズ)を日常時と非常時に分けて考えず、どのフェーズでも役立つよう商品・サービスをデザインして普及させることで、安全安心な社会を実現する考え方。“備えない防災”とも呼ばれ近年、大手企業や自治体で注目されている。
 バリアフリーやユニバーサルデザインにも通ずる新概念で、その構築のための地道な議論と実践の積み重ねが今回、地域の安全上、優秀な技術に値すると認められた。
 松崎教授は「withコロナ、afterコロナの新しい日常にも資するフェーズフリーの考え方がますます注目されています。今後もゼミや企業との共創により、多くの商品開発を進めていきたいと考えています」とコメントした。

◇新型コロナウイルス感染症対策に伴う令和3(2021)年度入学試験の変更について

(9月1日現在)

大学入学共通テスト利用入学試験(前期)

合格発表日
(変更前)2月6日(土)⇒(変更後)2月10日(水)
入学金締切日
(変更前)2月12日(金)⇒(変更後)2月16日(火)

編入学選抜(指定校制・高等専門学校)

面接試験日
(変更前)11月23日(月・祝)⇒(変更後)11月22日(日)

学校推薦型選抜(指定校制)〔一般高校・専門高校)

書類審査、小論文および面接(変更前)⇒小論文(※)は出願書類とする。面接は免除とします。

※具体的なテーマや形式など詳細は10月5日(月)に本学ウェブサイトで公表。

京成電鉄から消毒液


本学に
登嶋常務(左)から目録を受け取る瀬戸熊理事長
登嶋常務(左)から目録を受け取る瀬戸熊理事長

 京成線沿線の学校施設や自治会を支援する京成電鉄(株)の登嶋進常務取締役が7月14日、本学を訪れ、本学にアルコール消毒液10本を寄贈した。
 登嶋常務は「新型コロナウイルス禍のなか、我々が地域の皆様にできることを、と。小さなことですが、ぜひ役立ててください」と話した。
 瀬戸熊修理事長は「オンラインと対面を同時に行う授業形態のなか、消毒液のご寄付は大変ありがたい。一層安全な授業実施のために有効活用させていただきます」とお礼の言葉を述べた。
 本学は多くの学生が京成線を利用。また、プロジェクトマネジメント学科(田隈広紀准教授)が京成電鉄との共同プロジェクトとしてフィールドアクティビティ授業を進めたことなどが今回寄贈につながった。