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2020.3.15

元素分布を世界初分析


本学の合同チーム
鉄器文明の起源に迫る?
 古代エジプトのファラオで、黄金のマスクで知られるツタンカーメン(在位紀元前1333〜1324)の棺から発見された鉄剣の元素分布分析を、本学地球学研究センター(Geo-Cosmo inst.)と惑星探査研究センター(PERC)の合同研究チームが世界で初めて実施した。鉄剣の製造方法と由来を解明し、鉄器文明の起源に迫ろうという遠大な研究意図が背景にある。
ツタンカーメンの鉄剣
4Kカメラで撮像した鉄剣
4Kカメラで撮像した鉄剣
 2月28日、両研究センターの所長を務める松井孝典常務理事が記者会見して発表した。
 ツタンカーメンの鉄剣は長さ34.2センチの短剣。1922年に発見され、2016年にイタリアの研究チームが鉄隕石を原料としていることを確認した。しかし、製鉄技術を持たなかった3300年も前のエジプトの人々が、どのように鉄隕石を加工したかについてはまだ明らかにされていない。
 本学の研究チームは2月9〜10日、鉄剣を所蔵しているエジプト考古学博物館で、ポータブル蛍光X線分析装置による鉄剣の元素濃度および元素分布の分析と、4K高感度カメラを使った表面微小組織の撮像を行った。これらの調査は全て非破壊・非接触で行われた。
 この結果、鉄剣には原料に鉄隕石が使われたことを示す10〜12%のニッケルが含まれていることが分かった。一方でこの元素分布分析では、鉄隕石の特徴である独特の模様(ウィドマンシュテッテン構造)や、それに伴うニッケルの帯状分布は確認できなかった。
 これは鉄剣の製造過程で鉄隕石を加熱したことで、これらの特徴が失われたのではないかと研究チームは考えている。
 しかし、さらに一方で、この調査で鉄剣の表面にできている黒いシミには硫黄と亜鉛が含まれていることも明らかになった。これは鉄隕石に含まれる硫化鉄鉱物であるトロイライトの痕跡である可能性が高い。
 鉄隕石本来の成分であるトロイライトの痕跡が残っていることは、鉄剣製造時に加熱温度に制約が与えられた(それほど温度を上げていない)と考えられるという。
 つまり、ここまでの調査・分析からは、この鉄剣が製造過程で「高い温度で加熱された」「それほど温度を上げていない」という2つの矛盾する結果が出たことになる。
 これをどう解釈し、温度を特定するかは「4月以降に予定している現地での2回目の元素分布分析を含むさらに詳細な調査で明らかにしていく」(松井所長)。
 なお、黒いシミの部分には腐食により大気中から混入したと考えられる塩素も確認された。鉄剣は奇跡的ともいえる良好な状態を現在も保っているが、この腐食がいつ起きたのかを検証することで、鉄剣の保存の秘密に迫れる可能性もある。
エジプト考古学博物館で分析の準備をする 記者会見で経緯を説明する松井常務理事
エジプト考古学博物館で分析の準備をする 記者会見で経緯を説明する松井常務理事
世界史定説
書き換えも
 人類で最初に鉄の製造を始めたのは、古代オリエント世界でエジプトと勢力を二分したヒッタイトで、これまでの定説では3200年から3900年前とされている。当時、ヒッタイトと隣接してミタンニという王国があり、ツタンカーメンの祖父のアメンホプテ3世がミタンニから鉄剣を贈られたと古文書は記している。
 ツタンカーメンの鉄剣の分析・研究によって、この古文書の記述との関連の解明が進むかも知れない。
 鉄器文明は石器、青銅器時代の後に到来したというのが定説だが、これは鉄器の出土品が青銅器よりも圧倒的に新しいことによる。
 しかし、トルコのアラジャホユック遺跡から4300年前のボロボロに腐食した鉄隕石の剣が出土。また、カマン・カレホユック遺跡から出土した鉄の塊を松井所長が分析したところ、やはり4300年前のものという結果が出た。
 青銅器時代が始まったのは4500年前。「とすれば青銅器時代と鉄器時代はほぼ同時に始まったとも考えられる。鉄器の起源の研究の進展によっては、世界史が大きく書き換えられる可能性がある」(松井所長)
 ツタンカーメンの鉄剣研究の背景には、このような事情もある。

本学志願 10万人超え


2年度 入試
 令和2年度のB日程試験が2月17、18日に、また大学入試センター利用入学試験(中期=本学試験なし)、3月4日午前にC日程入学試験、午後に大学入試センター利用試験(後期)が行われ令和2年度入試が全て終了した。
 B日程入試の志願者は2万457人(昨年度より2374人増)。大学入試センター利用入試(中期)には3701人(昨年より300人減)、C日程入試には7707人(昨年度より1756人増)、センター利用入試(後期)には3120人(昨年度より32人増)が志願した。
 令和2年度の本学総志願者数は10万3269人(昨年度より1万2495人増)と、総志願者数が10万人を超え最多を記録。一般入試志願者ランキングでは、河合塾集計(3月14日時点)の私立大大学別志願状況によると10万人を超えた大学は8大学で本学はその6位。志願者数が昨年より1万人以上増加したのは本学と日本大だけと、大躍進を遂げる結果となった。

卒業式・入学式を中止


新型コロナ対策
 本学は、世界的な広がりを見せる新型コロナウイルスの感染防止対策のため、大人数を収容する幕張メッセで予定されていた令和元年度学位記授与式(卒業式=3月22日)と、令和2年度入学式(4月1日)の中止を決めた。
 挙行できなかったのは、東日本大震災で中止されて以来、9年ぶり。