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2019.10.15

銅の電解精製を高効率に


平澤さん優秀ポスター賞
 資源・素材学会関東支部の第16回「資源・素材・環境」技術と研究の交流会(8月2日、東京・駒場の東大生産技術研究所で開催)のポスターセッションで、平澤広大さん(先端材料工学科4年、小山和也研究室=写真)が「レーザー光を利用した電解中のこぶ検出について」を発表し、優秀ポスター賞を受賞した。
 小山教授の研究室では持続・循環型社会をめざし、レアメタルのリサイクル技術、天然資源からの有価物分離、金属素材の高付加価値化など資源の利用を研究している。
 銅の製造では、最後に電気分解(電解精製)を施し99.99%以上の電気銅を得るが、突起状の「こぶ」ができる異常析出が起きるとショートし、電解効率が低下する。平澤さんはこぶの形成をレーザー光で検出する手法に取り組んだ。
 初期段階として、レーザー距離計による応答を調べ、こぶの位置と測定距離との間に一定の相関関係があること、銅電解液では波長525ナノメートルの緑のレーザーが有効なことなどを明らかにした。
 平澤さんは受賞に「驚きました。研究室では初めての研究で、装置を一から製作し、実験方法も試行錯誤を繰り返しました。(受賞は)助言を頂いた小山先生のおかげで、今後も精進していきたいと思います」と述べた。

学術振興会が東山教授を表彰


書面審査に有意義意見
 創造工学部(教育センター)の東山幸司教授=写真=が6月30日、日本学術振興会から平成30年度・特別研究員等審査会専門委員(書面担当)として表彰され、小宮学長から賞状が手渡された。
 学術振興会は特別研究員を書面審査で選考する際、公正公平を期すため書面審査結果に有意義な審査意見を付けた専門委員たちを表彰している。
 今年度は表彰対象となった専門委員約600人の中から109人が選ばれた。

仮想現実技術で防災訓練


加瀬さんFIT奨励賞
 情報処理学会の第18回情報科学技術フォーラム(FIT2019=9月3〜5日、岡山市の岡山大・津島キャンパスで開催)で、加瀬友也さん(電気電子情報工学専攻修士1年、今野将研究室=写真)が「XR技術を用いた防災訓練のためのAIによる環境制御手法の提案」を発表し、FIT奨励賞を受賞した。
 災害対策では防災訓練が重要だが、現実は避難経路の確認程度にとどまり参加者の意欲も低いようだ。XR(仮想体験)技術で災害環境を再現すれば、もっと主体的に関われるのではないか。
 加瀬さんは現実とデジタル世界の橋渡しをするMR(複合現実)技術と、マルチエージェント(複数の課題をシステム全体で達成する技術)を用いた防災訓練システムを試作し、検証を試みた。
 参加者はゴーグルを通して制御AIが見せる災害環境(火災など)を立体的に体験。AIの助けで対処法を学ぶ。
 使用したゴーグル型複合現実デバイス(HoloLens)はまだ希少で、加瀬さん自身、初めてXR技術に触れ、開発に苦労したという。防災訓練という社会で重要な問題を扱いXRを取り込んだ将来性ある研究と評価された。
 加瀬さんは「大変うれしく、今野教授と研究室仲間にお礼を言いたいと思います。初めての学会発表で緊張しましたが、やり遂げることができてよかった。今後も頑張ります」と語った。

自分だけの車いす最適化技術


fuRoと(株)RDSが開発
 車いすを使う人の障害の程度や体格などを短時間で綿密に測定・数値化し、「自分だけの車いす」作りをするためのシミュレーターを、本学未来ロボット技術研究センター(fuRo)が研究開発型企業の(株)RDSと協力して開発。9月18日、「SS01」と名づけて報道関係者などに公開された。
 SS01は車いすを使う際のシートポジションやハンドリム(車輪の外側に付いている持ち手)を漕ぐ腕の力など、さまざまなパーソナライズデータを取得し最適化するシステム。fuRoが開発した「HallucⅡχ」や「CanguRo」などで培ったロボット技術――①多関節制御技術②トルクや重心変動の計測技術③ホイールの負荷制御技術――が応用されている。
 fuRoはSS01をRDSから協力依頼を受けて約2カ月で開発したという。
 RDSは国立障害者リハビリテーションセンター研究所と共同で、このSS01を使って多くの車いす使用者のパーソナルデータを収集・解析するプロジェクトをスタートさせている。これによって「車いすのパーソナライズ」を目指す経営戦略を加速させる方針だ。
 また、SS01の公開と合わせて、fuRoがRDSと(株)ワントゥテンに技術協力して開発した「CYBER WHEEL X」もお披露目された。これはVR技術を使い、車いすをかたどった筐体に乗って、西暦2100年の東京の街を高速で駆け抜ける疑似体験ができる娯楽施設。
「SS01」を報道陣に説明するfuRoの清水正晴副所長
「SS01」を報道陣に説明するfuRoの清水正晴副所長
西暦2100年の東京を疑似体験できる「CYBER WHEEL X」
西暦2100年の東京を疑似体験できる「CYBER WHEEL X」