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2019.1.15

揺れる水底映像を効率符号化


八島研チームに特別賞
八島教授(後列左端)と(右へ)藤井さん、王さん、(前列左から)宮地さん、岩島さん、神保さん
八島教授(後列左端)と(右へ)藤井さん、王さん、(前列左から)宮地さん、岩島さん、神保さん
 映像処理技術を競う電子情報通信学会のコンペ「Water Bottom Video Challenge (WBVC) 2018」で、情報科学専攻・八島由幸研究室の大学院生5人とアドバイザー・八島教授のチームが特別賞を受賞した。昨年11月20日、静岡県御殿場市の御殿場高原ホテルで開かれた同学会シンポジウムで表彰された。
 院生は修士2年の神保悟さんと同1年の岩島悠さん、藤井光樹さん、宮地芙海矢さん、博士後期課程3年の王冀さん。
 コンペは、揺れる水面上から撮影した水底映像を、できるだけ効率よく符号化する(画質を維持したまま符号量だけを削減する)手法を提案するもの。画質と符号量の両面から定量的に審査される。
 八島教授によると、水面の揺れのような非定常な動きを含む映像は、最新の国際標準方式H.265/HEVCでも高画質を維持したまま情報圧縮するのが非常に難しい。
 コンペにエントリーした八島研は、昨年7月の課題公開以降、提出締め切りの10月まで約3カ月かけて、圧縮アルゴリズムの考案、実験プログラムの作成、性能評価を繰り返した。
 コンペには国内外15チームがエントリー。八島研は符号化性能では4位と入賞を逃したが、提案手法は、準入賞級の符号化性能を達成しながら、どの方式よりも速く動作する超高速アルゴリズムだった。
 テレビの4Kや8Kのような超高精細映像では、圧縮性能だけでなく、リアルタイム処理が可能な軽いアルゴリズムも重要になる。八島研チームはそこに着目してアルゴリズム開発を行ったことが特別賞につながった。
 八島教授は「コンペで他大学の学生や企業研究者と競うことは、研究に対する大きなインセンティブ(意欲向上策)になります。院生らも、自分たちとは異なるアプローチや、考えもつかなかったアイデアに触れることができ、貴重な経験になったと思います」と語った。

家の中に庭を通す


櫻井さん 柴田さん 土屋ホームトピア賞
柴田さん(左)、櫻井さん
柴田さん(左)、櫻井さん
 “もう一度、庭付き一戸建て―郊外での暮らしの再考―”をテーマに(株)木の家専門店谷口工務店が建築学生たちに募集した「2018木の家設計グランプリ」(昨年9月22日、京都市の京都造形芸術大・瓜生山キャンパス人間館で最終審査)で、櫻井友美さん(建築都市環境学専攻修士1年、遠藤政樹研究室)と柴田ゆき乃さん(同、田島則行研究室)が「家の中の十字路―つくるとこわすの途中地点―」を提案。ビルダー賞12選中の(株)土屋ホームトピア賞に選ばれた。
 コンペは、地形の魅力を消す造成や画一的な住宅街が広がる中、自然を生かした美しい家々を取り戻そうと企画された。
 櫻井さん・柴田さんは昔ながらの庭付き平屋建ての家を選び、建物が「庭に対して積極的ではなかったと感じて」建築のコンバージョン(転換)を検討した。たどり着いたのが、既存の軸組柱と屋根を生かし、家の中に十字路の庭を通して、十字路と現代生活を調和させながら建物を増築・減築していく大胆なプラン。
 庭と関わりを持ち続けながら変化していく増減築プランを構成し、取り外し可能な模型を苦労して作った。コンペは造園家や木造建築の著名な建築家たちが審査。審査員と直接話せる機会と思い応募したという。
 櫻井さん、柴田さんは「設計グランプリは“戦場”でしたが、自分たちの設計を実務的に考える機会になり、今後に生かしていきたいと思いました」と語った。
設計モデル
設計モデル

電磁浮遊法で正確測定


小澤研4人が受賞
受賞した4人。(左から)板倉さん、岩野さん、吉崎さん、杉澤さん
受賞した4人。(左から)板倉さん、岩野さん、吉崎さん、杉澤さん
 小澤俊平研究室の大学院生たちは、日本マイクログラビティ応用学会第30回学術講演会(昨年10月29〜31日、岐阜市・じゅうろくプラザで開催)の毛利ポスターセッションに挑み、吉崎隼人さん(機械サイエンス専攻修士1年)と岩野貴哉さん(同)が優秀賞に、杉澤昂太さん(同)が努力賞に選ばれ、毛利衛宇宙飛行士から賞状を手渡された。
 口頭で発表した板倉真博さん(同2年)はその後の審査で、今回設けられた学生口頭発表表彰の最優秀賞に選ばれ12月6日、同学会ホームページで発表された。
 吉崎さんはAsian Microgravity Symposium(昨年11月15日、中国・珠海市の国際会議場で開催)でも英語で発表し、the Best Presentation for Young Scholarsに選ばれた。
 材料の製造加工では複雑化、精密化が進み、その制御のためにより正確な物性が求められる。金属の表面張力は僅かな不純物の混入や雰囲気の違いで値が大きく変化するため、特に測定が難しい。
 小澤研究室では材料を空中に浮揚させる特殊な技術「電磁浮遊法」を利用し、さまざまな金属材料の正確な表面張力測定を試みている。
 受賞4人の発表は、工業的に重要なFe-Si合金やアルミニウム、半導体シリコンについて正確な表面張力データを示すと同時に雰囲気の影響を考察した。
 受賞者の発表テーマと感想は次の通り。
■吉崎隼人さん
「電磁浮遊法を用いたFe-Si合金融体の表面張力」
 毛利ポスターセッションでは英語で概要を作成。簡潔な英語表現に悩んだ。中国の国際会議でも初めての英語によるプレゼンで、スムーズな発表に気を使った。
 「毛利先生から直接賞状を頂けて光栄に思います。中国の学会では他国の学生の英語や研究のレベルの高さを痛感し、いい勉強になりました」
■岩野貴哉さん
「電磁浮遊法による液体アルミニウムの表面張力測定」
 分かりやすさを心掛け文字サイズや図の色使い、話す順序や構成を工夫した。
 「うれしく思います。大学院への進学を応援してくれた家族と、厳しくも優しい小澤先生に感謝します」
■杉澤昂太さん
「電磁浮遊法を用いた半導体融体の表面張力に及ぼす雰囲気酸素分圧の影響」
 概要を英語で作成したり、内容を分かりやすくポスターにまとめることが大変だった。
 「初めての学会発表でしたが、小澤先生には厳しくも丁寧にご指導いただき感謝しています」
■板倉真博さん
「表面酸素分圧を考慮した電磁浮遊法による半導体融体の表面張力測定」
 口頭発表では、限られた時間で聴講者に伝わりやすいスライド構成が求められるため、内容の取捨選択に気を使った。
 「子供の頃から憧れていた微小重力に関する研究分野で受賞でき、大変うれしく思います。今後の人生の大きな励みになりました」

ルワンダ大と交流協定


 東アフリカ・ルワンダ共和国からルワンダ大のチャールズ・ムリガンデ副学長代理(組織改善担当)が来校し12月4日、本学との交流協定について覚書を交わした。覚書は後日、ルワンダ大でフィリップ・コットン同大副学長が署名し、正式な交流協定開始日は12月10日となった。
 ルワンダ大は、内戦や虐殺の時代を経て高等教育機関の充実が願われ、国立大6校を統合、唯一の国立大として設立された。首都キガリに本部。
 本学とアフリカの大学との交流協定は初めてで海外交流協定校はこれで18カ国・地域の38大学となった。
 (写真は本学で行われた調印式で小宮一仁学長=右=とチャールズ・ムリガンデ副学長代理)