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2018.6.15

生命、数年で復活
小天体衝突 恐竜絶滅後


佐藤上席研究員らが発見
 恐竜など地球上の生物を大絶滅させた約6600万年前(白亜紀末)の小天体衝突後、わずか2〜3年で生命が復活していたことを、佐藤峰南・本学次世代海洋資源研究センター(ORCeNG)上席研究員=写真=ら31人の日米共同研究チームが発見した。5月31日までに海洋研究開発機構などが公表した。
 衝突で生じ、海底に沈んだ巨大クレーター内の堆積物を調べ分かった。従来は、衝突地に近い場所では生態系の復活が遅く衝突後約30万年もかかったと考えられていた。
 研究したのは佐藤上席研究員のほか、山口耕生・東邦大理学部准教授、東北大災害科学国際研究所の後藤和久准教授、海洋研究開発機構高知コア研究所の富岡尚敬主任技術研究員ら日本の研究者4人と、米テキサス大オースティン校のクリス・ロウリー研究員ら。日本地球掘削科学コンソーシアム(大学や研究機関が2003年に設立)が支援した。
 衝突天体は直径約10キロでメキシコ・ユカタン半島の北部沖に直径約200キロのクレーターを形成。環境の大激変を起こし、当時の生物の約76%が絶滅したと考えられている。
 その爆心地調査のため2016年4〜5月、国際深海科学掘削計画(日本など23カ国が参加)の研究航海が行われ、欧州提供の特定任務掘削船が全長800メートルの柱状試料を掘削採取。そのうち白亜紀からの移行期を含む約1メートル長の堆積岩が詳細に分析された。
 堆積岩には衝突由来の超巨大津波でクレーター内に運ばれた堆積物が含まれており、微化石(微小なプランクトンの遺骸)や生痕化石(這い痕のような生物の生活痕化石)の分析が元素・同位体分析と合わせて行われた。
 その結果、衝突後2〜3年以内という想定外ともいえる短期間で生息可能な環境が復活し、少なくとも3万年以内には植物性プランクトンが作る有機物をベースにした多様な生態系が復活していたことを突き止めた。地球上の他地点よりも、クレーター内の生態系の復活がずっと早かったことになるという。
 佐藤上席研究員らは「復活速度に最も影響を与えたのは海洋循環や食物連鎖、(生態学的な)生息場所があったか、といったローカルな要素だったかもしれない。また、天体衝突後の生態系は、衝突前に比べ、かなり違っており、生き延びたわずかな生物種は、衝突後の海洋という新環境に、よりよく適応するように進化していった、と推察される」としている。
 この成果は英科学雑誌ネイチャーに発表された。

北海道からも2校参加


高校教員へ入試説明会
 高校の教員を対象にした本学の平成31年度入試説明会が5月29日津田沼、6月1日東京スカイツリータウンキャンパスで開かれ、2日間で計200校の受験担当の先生たちが参加した=写真は津田沼キャンパス。
 近年の本学のブランド力上昇を反映して、30年度の本学志願者数は7万8905人と過去最高を記録。志願者の出身地域も広がり、“全国区”の大学として認知されてきている。
 今回、津田沼での説明会に北海道から2校が参加。スカイツリータウンの説明会にも初めて参加する高校が目立った。
 また、昨年は3校にとどまっていた神奈川からの6校が参加した。そのうち初めての参加となった高校が多くみられ、改めて本学の存在を見直した形だ。
 2回の説明会を通して小宮一仁学長が高校教員に最も強く訴えたのは、6年前の就任以来、最重要課題として「教職協働」で進めてきた教育改革の成果。なかでも中途退学者の減少は顕著で、学長就任前の平成24年度には507人だった退学者が29年度には240人となり、今年度はさらに減少する見通しだとして、こう語った。
 「退学率・留年率の改善で就職率もアップしており、毎年、過去最高を記録しています」
 そして、教育水準を維持しながらこうした成果を上げた背景には、教育・研究にかける教員の「やる気」を引き出すさまざまな施策や学生による授業評価などがあると、具体例を挙げて説明すると、高校の先生たちは納得の表情で聞き入っていた。
 続いて大川茂樹・入試委員長(副学長・未来ロボティクス学科教授)が31年度のAO・推薦、センター利用、一般入試の要点などを説明した。それによると30年度と大きな変更はないが、①センター利用(前・中期)の英語の外部資格・検定の基準スコアを変更②センター利用・一般入試が試験前日までウェブによる出願が可能になる(全国初)。
 最後に日下部聡・入試広報部長が、文科省の定員厳格化の影響で、合格者数を絞らざるを得ない大学側の状況について報告した。

長尾ゼミの女子6人


「学びのハンドブック」改訂
 千葉工大生が持つ貸与タブレット端末にアップされている新入生向け「学びのハンドブック」の見直しを、長尾徹・デザイン科学科教授(17年度FD委員長)のゼミが担当して行い、改訂版が新学期から使われている。教務委員会とFD委員会の2017年度協働事業として行われた。
 改訂は宮崎愛弓さん(博士課程2年)を中心に4年生の大西梨理子さん、鍜治本碧さん、草薙幸乃さん、四條里那さん、土井ひかりさんら女子6人が担当した。
 ハンドブックは千葉工大の歴史、大学生活Q&A、レポートの書き方などのスタディ・スキルズ、防災対策などで構成されている。
 6人はデザイン科学科で学んだ「情報デザイン」の素養を基に、学生の視点で従来版について情報の構造化、視覚化がうまくできているかを精査。自身が入学時に戸惑ったこと、知りたかったことなどを振り返って全体を捉え直し、情報を再構成した。イラストや図版を添え計37ページにまとめた。
 新入生に知っていてほしい情報順に掲載し、補足説明が見づらかったので、上下分割のレイアウトに変えた。もっと詳しく知りたい学生のために新たに大学サイトのURLを記載し、ポータル的な役割も加えたという。
 指導した長尾教授は「グラフィックデザインも含め、『人に伝える』ことは、簡単そうで実は多くのプロセスを必要とする高度な行為です。『情報デザイン』はその高度な行為を体系的に身につけ、正確に分かりやすく『伝える』ことを可能にします。学生たちの学びの成果も確認できてよかったと思います」と語った。
改訂したハンドブック(表紙)と長尾ゼミの6人
 
改訂したハンドブック(表紙)と長尾ゼミの6人
改訂したハンドブック(表紙)と長尾ゼミの6人

出版


ROSを実機で使う技
上田准教授
上田准教授
Learning ROS robot programming with Raspberry Pi
Learning ROS robot programming with Raspberry Pi
著者= 上田隆一・未来ロボティクス学科准教授
発行= 日経BP社
価格= 4860円(税込み)
 2017年3月に発行された「Raspberry Piで学ぶROSロボット入門」の英語版。
 小さな基板1枚にARM(アーム)ベースのCPUやパソコン並みのハードを積みこんだ「Raspberry Pi(略称ラズパイ)」について、搭載した車輪型ロボットを例に、Linuxで動くロボットのプログラミングを説明している。
 業界標準となったROS (ロス=Robot Operating System)を中心に、その技術を実際にロボット「Raspberry Pi Mouse」(アールティ製)を動かしながら経験できるように構成。ROSを実機で使う知識と技を、国際語に慣れながら学べるようになっている。
 準備編、ROS基礎編、同応用編に分け計14章。内容は▽ROSの操作方法▽Linuxシステムの扱い方▽ウェブサーバーとの連携▽GitHubの使い方▽ライセンスの選択、基本的なテスト方法――など。
 さらにUSBカメラを使った顔認識や、音声認識ソフトを使った音声制御、スマートフォンなどから操作できるウェブアプリの作成、測域センサーを使った地図の生成なども詳述している。
 巻末にデバイスドライバのプログラミングなどの付録も。