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2018.5.15

小惑星リュウグウに 到達迫る


「はやぶさ2」講演会
PERC 津田ISAS准教授を招き
 「はやぶさ2」が6月21日〜7月5日の間に目指す小惑星「リュウグウ」に到達する見通しになったことを受けて、惑星探査研究センター(PERC)は4月21日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究所(ISAS)の津田雄一准教授(はやぶさ2プロジェクトマネジャー)を特別講演者に招いて「宇宙工学への挑戦〜はやぶさ2のすべてを工学の視点から切り拓く〜」と題した講演会を開催した。
「宇宙工学への挑戦〜はやぶさ2のすべて……」の講演会。左上は津田氏
「宇宙工学への挑戦〜はやぶさ2のすべて……」の講演会。左上は津田氏
 「はやぶさ2」は2014年12月3日に打ち上げられた。PERCは同プロジェクトにスタート当初から関わり、搭載されているほぼ全ての観測機器の開発と科学的検討に研究員が参加している。そうしたPERCの活動を多くの在学生に知ってもらい、さらに総合工学である宇宙工学を通して工学全般への見識と、「はやぶさ2」の実際を通してプロジェクトマネジメントについての理解を深めてもらおうというのが講演会の狙い。
 会場の津田沼校舎2号館大教室では本学学生のほか、PERCのホームページやSNSなどで開催を知った一般市民や高校生など約150人が熱心に耳を傾けた。
 津田准教授は東大大学院修士課程時代に挑戦した容積350ミリリットルの缶サットを手始めに、10立方センチのキューブサットの世界初打ち上げ、太陽風を受け止めるソーラーセイルの宇宙空間での展開と、その技術を使った宇宙ヨット「イカロス」の宇宙空間全航行など、数々の「世界初」を成し遂げてきた。
 さらに小惑星「イトカワ」からの世界初のサンプルリターン(試料回収)に成功した「はやぶさ」初号機のプロジェクトにも加わった。
 現在は外国人を含む科学者と技術者計約600人を率いているという津田准教授は、講演でこれらの経験を披歴した後、プロジェクトを成功させるマネジメントの要点を次のようにまとめた。
 ▽組織をコンパクトに保つ▽できる人、「やりたい」と思っている人を集める▽実力を正しく引き出す▽「物」に直結した組織をつくる▽背伸びをしてはいけない時をはっきり見極める▽「この人でなくてはできない」エンジニアリングを見極めて人を使う。

はやぶさ2への技術関与を紹介

千秋上席研究員

 津田准教授の特別講演に先立って、PERCの千秋博紀上席研究員がPERCと「はやぶさ2」との関わりを紹介した。
 「はやぶさ2」は「リュウグウ」に到達した後、約1年半かけてさまざまな観測を行い、小惑星の姿を明らかにしていく。例えば高度を変えながら数キロまで接近してカメラで撮影し、立体地図を作り、重力や自転の方向・速度を割り出す……など。
 なかでも最大の山場は、爆薬で打ち出した金属製の弾丸を秒速2キロで衝突させて「リュウグウ」の表面にクレーターを作り、内部の土などを採取する実験。この試料を地球に持ち帰ることができれば、人類が初めて手にする、太陽系の起源に迫る貴重な情報が得られると期待されている。
 この「リュウグウの内部をのぞく“窓”を作る衝突装置(SCI)」を筆頭に▽クレーターができる瞬間を観測する分離カメラ(DCAM3)▽レーザー高度計(LIDAR)▽含水鉱物を見つける近赤外線分光計(NIRS3)▽光学航法カメラ(ONC)――の開発と科学的検討にPERCが関わっている。

ルンド大と交流協定


 小宮一仁学長は4月19日、スウェーデン南部スコーネ県ルンド市のルンド大学(工学部)を訪れ、本学との交流協定を締結した。
 ルンド大は1666年、同国で2番目に古く創設された名門公立大で、物理・生化学などで4人のノーベル賞受賞者を輩出している。
 本学との海外交流協定校はこれで17カ国・地域の37大学となった。
 (写真は握手を交わす小宮学長とルンド大のオワール工学部長)

海洋資源研など成果


南鳥島に大量レアアース泥確認
 電気自動車や携帯電話のモーター用磁石に使われるレアアース(希土類)が、小笠原諸島・南鳥島(東京都)周辺の排他的経済水域(EEZ)の海底に大量にあることが分かった、と千葉工大次世代海洋資源研究センター(ORCeNG=加藤泰浩所長)、早稲田大、東京大、海洋研究開発機構などの研究グループが4月10日、発表した。
 産業上重要なジスプロシウムやテルビウム、ユウロピウム、イットリウムなどで総計1600万トンを超え世界需要の数百年分に相当するという。
 グループには東工大、神戸大、東亜建設工業(株)、太平洋セメント(株)も参加。2013〜15年に海洋研究開発機構の調査船で南鳥島沖約2500平方キロの海域を探査した。
 その結果、特に北西の一角に極めて高濃度のレアアースを含む泥(レアアース泥)の存在を確認するなど、対象海域が莫大なレアアース資源ポテンシャルを持つことを確認。資源分布を可視化し資源量を把握することに初めて成功した。さらに、レアアース濃集鉱物の高効率な選鉱技術を検討し、確立したという。
 レアアースは現在、生産量の8割を中国が占めているが、この技術で、中国陸上レアアース鉱床の20倍程度まで品位を向上させることができる。将来的には50倍以上の品位を目指すといい、再生可能エネルギー技術やエレクトロニクス、医療技術分野などの最先端産業の発展に大きく貢献すると期待されている。
 成果は4月10日付の英科学誌サイエンティフィック・リポーツに掲載された。
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