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2017.10.15

ロケットフェス 御宿で
宇宙と 千葉工大を 身近に


初開催 町おこしにも一役
 本学の学生たちのロケット打ち上げ実験や水ロケット教室で、一般の人たちに「宇宙」と「千葉工大」をもっと身近に感じてもらおうという初の千葉工大ロケットフェスティバル「ROCKET ONJUKU」が10月1日、「伊勢えび祭り」でにぎわう千葉県御宿町で開かれた。本学と同町は2014年に包括的連携協定を締結しており、御宿岩和田漁業協同組合の協力も得て、実現に至った。今後はロケット打ち上げを恒常化し、「宇宙実験もできる御宿町」をアピールして、町おこしに役立てる狙いもある。
米粉ロケットの打ち上げと会場モニター 準備する和田研究室の学生たち
米粉ロケットの打ち上げと会場モニター
米粉ロケットの打ち上げと会場モニター 準備する和田研究室の学生たち
和田研「米粉ロケット」
 この日、用意されたのは機械電子創成工学科・和田豊准教授(惑星探査研究センター=PERC=非常勤上席研究員)の研究室の学生たちによる1機と、学生サークル「SPARK」が製作した1機の小型ハイブリッドロケット。
 昨年度に発足した和田研究室では実践的な宇宙教育の一環として、小型ハイブリッドロケットの設計・製作・組み立てから打ち上げ実験までの一連のプロジェクトを、学生が全て主体的に実施している。
 研究室初の今回の打ち上げ実験は4年生7人を中心とし、工程管理やアドバイザー役の大学院生2人と、早期配属の3年生4人が参加した。
 今回のロケットの最大の特徴は、燃料にプラスチック材に替えてペレット状にした米粉を使用したこと。米の過剰生産で毎年、相当量の古米が廃棄されており、「何か教育に生かす方法はないか」と、宇宙航空研究開発機構(JAXA)のロケット打ち上げ成功祈願を長年担当している神社の神主から相談を受けた和田准教授が考えたという。
 世界初の“米粉ロケット”は同准教授の狙い通り、オレンジ色の炎を噴き出しながら約3秒間燃焼し、高度約200メートルに達して実験は成功した。
水ロケットを作って 打ち上げ!
水ロケットを作って 打ち上げ!
絶好のロケーション
 打ち上げられたのは、本学の研修センターと同じ御宿町岩和田にある町の管理地。断崖に囲まれ、前面に太平洋が開けるロケットの射場として絶好のロケーションだ。
 ロケットの打ち上げには危険が伴うため、適地は限られている。国内では鹿児島県種子島と内之浦にあるJAXAの打ち上げ基地を除けば、学生がロケットを打ち上げられる場所は①北海道大樹町②秋田県能代市③和歌山市加太④伊豆大島の4カ所。
 そこで御宿町は岩和田の射場を“日本第5のロケット実験場”として観光客などにアピール。本学は機械電子創成工学科などの実験場として恒常的に打ち上げ実験を行い、その成果を教育にも取り入れていく方針だ。
 機械電子創成工学科・長瀬亮学科長は、会場に集まった観客に「学生が製作したロケットに小型ロボットを載せて海に向かって打ち上げ、そのロボットが自立制御で海を泳ぎ、砂浜に設けられたゴールを目指す、陸海空を移動するトライアスロンのような構想も練っています」とアピールした。
打ち上げ実況や体験教室
 大勢の人出でにぎわう「月の沙漠記念館」前の伊勢えび祭り会場横に設けられた本学のロケットフェスティバル会場には、岩和田のロケット打ち上げ実験場からの様子を実況中継する116インチの大型モニターが設置された。
 モニターの映像と大型スピーカーから流れる音声で、発射現場の緊迫感が直に伝わってくる。
 ステージの上でPERCの秋山演亮主席研究員が、千葉テレビで「えみお姉さん」と親しまれた女優の長谷川恵美さんを相手に、ロケットにまつわる知識を解説。発射が近づくと会場にカウントダウンの声が上がった。
 実況中継は正午に始まり、午後3時まで続けられたが、残念ながら2機のロケットで2回ずつ、計4回試みられた点火は失敗。和田研究室のロケットが発射に成功したのは午後4時だった。

 同じ会場で、小学生などを対象にした「水ロケット体験教室」がPERCの前田恵介研究員の指導で開かれた。
 水ロケットはペットボトルに入れた水を圧搾空気で噴出させて飛ばす仕組み。40組の親子連れが挑戦した。「ゴー、ヨン、サン、ニー、イチ、ゼロ」のかけ声で自分の作ったロケットが勢いよく、高く飛び出すと、子どもたちは大きな歓声を上げていた。

「ハナノナ」グッドデザイン賞


花を識別 「正しいAI理解促す」
 人工知能・ソフトウエア技術研究センター(STAIR Lab=ステアラボ)が開発した人工知能で花を識別する「hananona(ハナノナ)」=写真=が「2017年度グッドデザイン賞」を受賞した。「ハナノナ」は人工知能(AI)が約30万枚の花の写真を学習した結果を可視化したもので、406種類の花を識別する。東京スカイツリータウンキャンパスのAreaⅠに展示されている。
 2017年度グッドデザイン賞は国内外からの応募4495件のデザインを対象に審査が行われ、10月4日、1403件の受賞作品が発表された。
 人工知能の進歩によって、より便利で豊かな社会づくりが期待される一方、雇用の剥奪や“暴走”も懸念されるなど、人工知能と人間とでは識別や精度がどう違い、あるいは何が類似しているかといった点に関心が集まっている。「ハナノナ」受賞の背景には、人間と人工知能を巡るこのような状況がある。
 「ハナノナ」は、対象の花をズバリ言い当てたり、識別し難い場合でも何の花に近いかを判断したりする。その動きから、体験者は人工知能の有益な面や脅威、欠点などについて正しい理解をするための第一歩を踏み出すことができると審査で高く評価された。
審査委員の評価

人工知能が持つ可能性を感じるとともに、それが完璧でない点や、予想外の結果を導く様子を手軽に観察できる。ブラックボックスになりがちな人工知能に対する理解を「花を分類する」という分かりやすいモチーフで導いている点が優れており、子供から大人まで幅広い層に受け入れられるデザインとなっている。また、円形のディスプレイやテーブル、対象物を照らすスポットライトのような演出など、効果的な会場構成も評価された。