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2016.5.15

科学技術政策を講義


山口教授 国立4大学の組織に
山口佳和教授
山口佳和教授
 群馬・宇都宮・茨城・埼玉の国立4大学が、幅広い知識やスキルを保有する「多能工型」の研究支援人材を育成する目的で構築したコンソーシアムの招きで、経営情報科学科の山口佳和教授が4月19日、「科学技術基本法から始まる科学技術政策の流れについて」と題して講義を行った。
 このコンソーシアムは文部科学省が平成26年度から5年間の計画で実施している「科学技術人材育成のコンソーシアムの構築事業」の1つ。4大学が力を合わせて、研究支援のさまざまなステージや分野で必要な専門的な知識を教育プログラムとして提供する。
 山口教授の講義は科学技術振興機構(JST)や新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)などの国の研究支援事業の仕組みを理解するための基礎となるもの。全国の国公私立14大学からURA(ユニバーシティー・リサーチ・アドミニストレーター)など約40人が受講した。

出版


“界面の世界”の測定法
柴田准教授
柴田准教授
現場で役立つコロイド・界面現象の測定ノウハウ
現場で役立つコロイド・界面現象の測定ノウハウ
著者= 阿部正彦・東京理科大研究推進機構総合研究院教授編、
柴田裕史・本学応用化学科准教授らが共同執筆
発行= 日刊工業新聞社
価格= 2592円(税込み)
 界面活性剤は親水・親油の両性を持って物質の境界面に働き、洗浄や保水などさまざまに作用する。これを解明するのがコロイド・界面化学で化粧品、洗浄剤、医薬品、食品、半導体など多くの産業と日常生活を支えている。
 学生時代にコロイド・界面化学を習得してこなかった人も、研究開発の現場でその重要性に直面する機会は多いはず。
 本書は、界面状態を正確に知る19の測定・評価法について紹介。測定で何がわかるか、キーポイント、データの正しい読み解き方、測定上の要点などを、読者の立場に立って解説している。
 柴田准教授は、第16章「液晶・固体ナノ粒子の小角X線散乱測定」を担当した。小角X線散乱測定は、1〜100ナノメートル程度の空間スケールでの構造決定に重要な役割を果たす構造学研究の分野で、よく確立された手法という。
 章構成は、界面化学の基礎知識▽界面活性剤水溶液の静的表面張力の測定▽動的表面張力の測定▽表面圧(π)-分子占有面積(A)等温線の測定▽表面粘度の測定▽水と油との界面張力の測定▽水晶振動子マイクロバランス(QCM-D)測定▽原子間力顕微鏡(AFM)測定▽静的光散乱(SLS)測定▽動的光散乱(DLS)測定ほか――など。
システム開発の教科書
高木助教
高木助教
形式手法モデル理論アプローチ モデル編、実践編―情報システム開発の基礎
形式手法モデル理論アプローチ
モデル編、実践編―情報システム開発の基礎
著者= 高木徹・本学経営情報科学科助教、高原康彦・東京工大名誉教授、齋藤敏雄・日本大教授ら6人による共著
発行= 日科技連出版社
価格= 2376円(税込み)
 システムエンジニアを目指す学生に欠かせない「情報システム開発」の基礎を解説した、格好の教科書。
 大規模複雑化したシステム(企業の経営業務など)を制御するには、適したITシステムを創って、効果を上げていかなければならない。成功すれば▽開発時間の短縮▽開発コストの削減▽システムの信頼性向上――などが期待される。
 その開発手法を、モデル理論アプローチと高校程度の数学を使って分かりやすく解説している。
 論理トレーニングから始め、システム理論の基礎を学びながら、その応用としての情報システム開発を学ぶ。
 モデル編は、論理学と集合論の基礎、オートマトン、表のサイエンスに基づくデータベース論などを解説。モデル編を理解後に、連携した実践編の各章へ飛んで読み進めるよう工夫されている。
 2007年刊行の『形式手法モデル理論アプローチ―情報システム開発の基礎』を改訂したもので、モデル編と実践編の2分冊になった。各150ページ前後。

活躍する校友


長野の星空が原点
迷わず「光学」の道へ
株式会社コシナ取締役
関 敦夫(せき あつお)氏(57歳)
(昭和57年、精密機械工学科卒)
関 敦夫氏
「ぜひ頑張って」――メテオ計画にエールを送る関さん
 満天の星に魅せられ、レンズの世界へ――光学機器製造メーカー「コシナ」取締役、関敦夫さんは趣味を仕事にしたような人である。しかも同社のレンズは国際宇宙ステーション(ISS)で使う本学惑星探査研究センターの流星観測用カメラ「メテオ」に搭載されて今年3月、高度約400キロの軌道へ。まさに夢は天翔る――。
 3月23日(日本時間)、長野県中野市の「コシナ」本社。社員ら10人ほどがパソコンを食い入るように見詰めた。画面には米宇宙航空局(NASA)によりISSへ向けて米フロリダ州で打ち上げられた「アトラスV」ロケット。メテオを積んで過去2度失敗している。
 今回は見事成功。リアルタイムの配信画像に「やった!」と歓声が上った。
 「最初の打ち上げ失敗時、カメラがテレビニュースで紹介された。見れば、うちのレンズが付いているじゃないですか。びっくりでした」(関さん)。これをきっかけに、会社として全面協力を申し出、改良版が宇宙へ飛び立ったわけだ。
 関さんの生まれた長野市の夜空は美しい。小学生のころから天体望遠鏡をのぞいた。天文少年は高校生になって一眼レフを手に星を撮影、フィルムの現像などもお手のもの。「だから迷わず精密機械工学科でしたね」。
 千葉市内のアパートで4年間過ごした。囲碁や将棋のサークルをのぞいたりしたが、ずっと無所属だ。が、関心は常にカメラ。一眼レフカメラを片手に都内の名所を撮影に巡ったことも。費用のかかる機材、交通費などはデパートの深夜模様替えのバイトなどでひねり出した。
 学科の研究室には暗室があった。その暗がりにラジカセから流れたのはかってのアイドル、薬師丸ひろ子の『セーラー服と機関銃』(1981年)。「形状記憶合金」という当時としては走りのテーマの卒業研究をへて、故郷のコシナに入った。
 レンズ加工を柱に1959年設立された若い会社である。光学ガラス開発・製造の小布施事業所(小布施町)を皮切りに、飯山事業所(レンズ研磨、飯山市)、中野事業所(カメラ・交換レンズ組み立て、中野市)などを歩いた。レンズの素材であるガラスの自動重量選別機を独自に考案している。
 この間、本社で労務・人事も担当。学生には「基礎学力を。それと英語を話せるように」とアドバイスする。2015年、小布施事業所長となり、今年取締役についた。全社員約500人のうち、本学OBは2人。
 同社は開発・設計から製造・販売までの一貫システムと、そこから生まれるハイエンド光学デバイス(高性能・高級品)にこだわる。実力は世界有数の光学機器メーカー、ドイツ・カールツァイス社との共同開発・販売の締結(2004年)で立証ずみだが、その技術力が大気圏へ突入する宇宙の塵や流星の成分をISSの窓越しに約2年間も長期連続観測するメテオへの採用につながった。
 使われたのは、「F0・95、焦点距離10・5ミリ」超広角レンズ。F値が小さいほど明るく写り、微弱な光をキャッチできる。宇宙飛行士が回析格子(板状のガラス)をレンズに簡単かつ正確に装着するための特別な機構を新たに搭載した。「ぜひ頑張って成果を」と、関さんは天空へエールを送る。
 一方で、カメラの世界はどんどん電機製品化しているといわれる。半導体がフィルムを席巻したデジカメ、それに拍車をかけるスマホの登場。「でも被写体情報の入り口であるレンズだけは残る。それに当方はプロやマニア向けの高級品。さほど影響はありません」。関さんは淡々としたものだ。
 趣味はいまも写真。地域の愛好者とクラブを作り、シャッターを押す。「学生時代に撮った堀切菖蒲園(東京都葛飾区)のショウブの作品を家に飾っています」。35年前の自分と対話しているのだろう。