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2016.1.15

伸びる「千葉工大」ブランド
好回転を今年も


新春の抱負 対談
 平成28(2016)年が明けた。近年、ロボティクスや惑星探査の研究で千葉工大の元気いっぱいの姿は国内はもちろん、海外にも届いている。入学志願者数は増加の一途をたどって理工系大学(II部除く)のトップになり、4月には新たな工学部、創造工学部、先進工学部がスタート。津田沼、新習志野両キャンパスの教学環境整備もさらに進む。申年の今年は、この勢いにさらに弾みをつける年になるだろう。瀬戸熊修理事長と小宮一仁学長に新春の抱負を語っていただいた。(聞き手は入試広報部)
小宮 一仁 学長(左)、瀬戸熊 修 理事長(右)
小宮 一仁 学長(左)、瀬戸熊 修 理事長(右)
――平成28年の干支は昭和31年に次ぐ丙申で古来、大変革の年だそうですが、千葉工大にとっては?
■工学部再編控えて
 瀬戸熊修理事長 ここ数年、大変革を続けてきましたからね(笑)。とりわけ今年は工学部再編で新たに3学部12学科が誕生し、大学全体では5学部17学科になる。私がこの変革を決断した背景には、再来年から18歳人口が再び減少に転じるという大学にとって正念場の「2018年問題」があるわけです。
 その問題を超えるためにはどうしたらよいのでしょう。
 そのためには世の中の動きを敏感に捉え、全学の意識改革を一層押し進め大学の今日までの組織の形態をドラスティックに変えていくことが、急務と考えています。その一方で、口で言うのは簡単ですが、物事には変えられるものと変えられないものとがあります。変えられないものとは、「世界文化に技術で貢献する」建学の精神、そしてわが国唯一の旧制私立工業大の素晴らしい伝統です。本学の建学の精神は今の時代にもまったく色あせておりません。
 変えられるものは、全力を傾け変えていくことです。大学の組織体系は時代の流れに応じて自ら速やかに変革していかなければ生き残れないのも事実です。この2つの基本的なことをしっかり見定めながら、本学の経営に全力を尽くしていく所存です。
 小宮一仁学長 本学の現状を一言で言い表せば「いい状態」にあります。理事長が推進されているブランド戦略の成功で「千葉工大」の知名度が上がり、それに後押しされて入学志願者が好調に増加しています。私が学長就任以来、課題としてきた退学者数も教職協働の取り組みによってかなり改善されてきました。何より学内が明るくなってきた実感があります。工学部改編もそうした環境変化の上にあるわけですから、この好調を今年も維持し、さらに伸ばしたい。足踏みは退歩の始まりです。教学面でもやらなければならないことは山積しています。情報科学部と社会システム科学部の改編の検討も緒に就くと思いますが、社会システム科学部については、4月に新しい研究センターも開設されるようなので、その力も借りながら社会人と留学生を取り込んだ学部から大学院まで一貫する新しいシステムを構築できれば、と考えています。
■創出へのこだわり
 理事長 理学は原理、真理を探求する学問です。それを応用して夢のような未来を実現するのが工学だと思います。その工学の分野にも文系の発想と感性が必要と考え、文理融合を図るため意図して開設したのが社会システム科学部です。4月に開設を予定している国際金融研究センターも、金融工学に人工知能を応用するという画期的な分野の研究を進めていくためです。幸い新しいセンターは、社会システム科学部と共通の土台がありますので、両者が協力して優れた成果を挙げることを期待したいです。研究者は失敗や挫折を繰り返しながら、壁を一つ一つ乗り越えて、困難な領域に踏み込んでいくことが最も大切なことです。真の技術革新もそういうところから生まれてくると思います。
――ロボット技術と惑星探査の2つの研究センターの活躍が目覚ましいですね。
 学長 本学の知名度アップに大きく貢献し、やる気のある学生が全国から集まるようになって、教える側にとってもやりがいのある環境に向かいつつあります。同時に研究センターの成功例を見て、多くの教員の間に教育と研究で新しいものを創出しなければ生き残れないという意識が芽生え始めています。私はかねて学生の愛校心を育みたい、「この大学に入ってよかった」「この大学を卒業してよかった」と思われる大学にしたいと言い続けてきましたが、研究センターの活躍は現役学生だけでなく、同窓生の励みにもなっていると思います。
 これは学生の就職など本学と社会とのつながりという面でも、大きなメリットを生み出していると感じています。
■環境・施設が牽引
 理事長 ここ数年、学生諸君が前向きになってきていることは確かですね。学生だけでなく、ご父母や卒業生の間にも「子供をこの大学に入れてよかった」「千葉工大の卒業生であることを誇りに思う」という声が私の耳にもよく聞こえてきます。私学はどんなに良い教育や研究をしていても、学生が入学して来なければ経営は成り立ちません。私は理事長に就任以来、「補助金や寄付金頼みでなく、自分の軸足でしっかり立つ経営」を念頭に事に当たってきました。財務基盤をしっかり固めて、プラスになった部分はでき得る限り教学環境の整備充実に努めてきました。私より半年遅れて小宮学長が就任し、その柔軟な発想と行動力とが相俟って、うまく回転を始めたのです。
 学長 法人が進めてくれている教学環境の整備には本当に感謝しています。近年、諸外国を見ても、国公立大学よりも環境・施設の整った私立大学に学生が集まる傾向が見られます。将来日本もそうなるべきです。800近い大学がひしめく日本ですが、これだけ恵まれた立地にあり、これだけ充実した環境整備のできる本学のような大学は限られています。これから先、本当の意味の大学間競争が始まったときに、これは必ず大きな力になると思います。
――本学が交流協定を結んでいる海外の大学は現在、11カ国・地域の23大学ですが、国際化についての考え方をお聞かせください。
■国際化の中身充実
 理事長 私は単に英語を話せる学生を育てることが即ち国際化であるかの如き、風潮に一寸疑問を感じています。本学の《世界文化に技術で貢献する》という建学の精神は、平たく言えば、グローバル社会で活躍できる教養あふれる優れた科学技術者を積極的に育成するということですから、できるだけ大きな視野に立った物の見方ができる人材を育てなければと考えています。グローバル社会を理解するためにはまず、生まれ育った自国の文化・歴史を知り、その上で、異文化を吸収し、理解を深めたその時こそ、初めて対等の付き合いができると思うのです。是非学生達には入学のときから日本の文化・歴史についての理解を深めていただきたい。学長も同じ考えで初年次教育の改革に積極的に取り組んでおられるので、期待しています。
 学長 グローバル化とは本来「垣根を取り払う」という意味です。私は学長に就任して、まず学内のグローバル化を呼びかけてきました。教員と職員との間の垣根、津田沼と新習志野の間にある垣根を取り払おう。従来の垣根を取り払って前に進もうと。そういう意味のグローバル化に向けた意識改革は、まだ十分とは言えませんが、かなり浸透してきたと思います。一方、国際化については、平成26年7月に公表した「千葉工業大学のグローバル化ビジョン(国際化の方針)」に沿う形で進めており、そこで掲げている留学経験を持つ学生の割合3%以上や、交流協定締結校25校以上などの数値目標も達成できそうです。長年望んでいたメキシコの大学との交流協定締結が近々実現する運びですし、加えてフィリピンとタイ等のトップの大学との協定締結の準備も調いました。これからの課題は国際化の中身の充実です。本学の学生をどんどん海外に出す一方、海外の学生を積極的に呼び込みたい。法人の努力で海外からの留学生のための奨学金などもつくってくださっていますので、本当の意味での国際化、文化交流を進めて、海外でも物怖じしない日本人を育成していきたいと思います。

「世界的視野」を育てたい


新春の抱負
小宮学長 瀬戸熊理事長
小宮学長 瀬戸熊理事長
――この春には新習志野キャンパスの再開発も完成します。
 理事長 教学の改革と施設などの環境整備は表裏一体となって行うべきものですが、ここで私が言っておきたいのは、先人達の「めげず、諦めず」の不屈の精神とたゆまざる努力のお陰で今日の千葉工大があるということを忘れてはなりません。1942年の創立以来、本学は慢性的な財政難と幾多の困難を乗り越えて歩んできました。なかでも先代理事長の豊田耕作先生の先見の明と果敢な経営決断があったからこそ、現在の恵まれた津田沼キャンパスと新習志野キャンパスがあります。新習志野の再開発も豊田先生のご遺志を継いできたことなのです。
 学長 新習志野キャンパスには新たな食堂棟と体育館とともに日本人学生と外国人留学生を収容する国際交流会館もできますが、これらは外国の伝統ある私立大学のカレッジに似ていると私は思います。もともと本学は全寮制の大学だった歴史がありますので、国際交流会館の運用開始を機に、桑蓬寮と椿寮を加えた3つの学生寮を使って、外国の私立大学に見られるような教育支援を進めていくことも考えています。学生と教職員が一緒にフォーマルディナーをいただくなど、いろんなことができるのではないでしょうか。寮で学生を指導する教員やポストドクターの構想もあります。理事長からは千種寮を有効活用できないかという話もありますので、これらを合わせて、より学生に密着した教育支援の態勢を構築していきたい。そして、それをさらなる改革につなげていこうと考えています。
学生寮に隣接する国際交流会館は昨年11月10日に上棟式を終えた。新体育館とともに3月の完成を待つばかりだ
学生寮に隣接する国際交流会館は昨年11月10日に上棟式を終えた。新体育館とともに3月の完成を待つばかりだ
――教育力・研究力のさらなる向上については。
■ポイントは教職協働
 理事長 小宮学長が就任以来、さまざまの施策により退学者数は確実に減少してきました。教職員には一人ひとりが自ら個々の問題と捉え、教え育てると言う教育の原点に立ち返り、さらなる使命感を持って改革改善のための努力を続けていただきたい。学生は皆、理工系が好きだから志願してくるわけです。まさに「好きこそものの上手なれ」です。それを嫌いにさせてしまうのは我々の責任です。学生達には「めげず、諦めず」の精神を植え付けたいですね。何があっても負けないぞという“強い気持ち”を植え付けることも、これからの我々の教育の重要な課題の一つであります。教職員も「自分はこの大学で共に生き残っていくんだ」という前向きな姿勢を持つことにより、モチベーションが更に上がるのではないでしょうか。
 学長 教育力向上の重要なポイントは「教職協働」です。教えるのは教員であって、職員の役割はそれをサポートすることという考え方は、古い考えだと思います。学生を預かっているという点では、教員も職員も同じです。FD(Faculty Development)やSD(Staff Development)も教職協働でやってこそ成果が挙がるのです。教員・職員が一体となって学生を指導していく態勢をさらに推進していこうと思っています。研究面でも職員の皆さんが参加できるものもあるだろうし、地域貢献も教職協働でやっていかなければなりません。
――企業では信賞必罰は当たり前ですが、授業が上手な教員と、そうではない教員の処遇については。
 学長 成果を挙げた教員をどんどん表彰しています。FD委員会と教務課にお願いして、外部の教育方法の専門家を招いてFDフォーラムやFD講演会などを年に数回開催しています。専門家による教育法のセミナーも開催しています。将来的には教え方に不安のある教員には、このセミナーの受講を必須にしようかと、理事長と相談しながらいろいろと頭を巡らせているところです。
 理事長 学長のおっしゃったことは至極当然です。まさにその教員と職員は大学を支える車の両輪であり、運命共同体なのですから、何事も私と学長の2人で多様な意見を取り入れながら、即断・即決・即実行を心掛け加速してきたことが最近、学内に浸透して行き良いムードになってきたと感じています。
――2度のロケット爆発に見舞われた長期流星観測プロジェクト「メテオ」の3度目のカメラ打ち上げが3月10日に予定されていますが、今年はどんな“千葉工大発”のトピックスが新たに期待できますか。
■100周年へ盤石な礎を
 理事長 いろいろありますが一つだけ。それは、日本がまだ縄文時代だった紀元前3300年頃に、今のトルコからシリアの辺りにヒッタイトという王国があり、人類の歴史上初めて鉄を使った民族と言われており、有名なエジプトのラムセス2世と戦い破ったことも分かっています。このヒッタイトの鉄器文化について、今、惑星探査研究センターの松井孝典所長がトルコの考古学研究機関と協力して解明を進めています。考古学に科学的メスを入れる画期的な発想は素晴らしいことです。人類と鉄に関するこれまでの歴史の通説を覆す発見につながるかも知れません。乞う、ご期待!というところです。
――2017年は本学創立75周年。理事長が常々言われている100周年に向けての盤石な礎づくりについてお聞かせください。
 理事長 よく知られている企業の30年興亡説がありますが、世の中には100年を超す歴史を持つ企業も数多くあります。大学でも100年以上の歴史がある大学には確固たる基盤をもっているところが多い。本学もそのような存在になることを目指しているわけですが、その前に難関が立ちはだかっています。先に申した2018年から減少し、2032年ごろと予測されている18歳人口の100万人割れ、これを何としても乗り切らなければならない。そのためには今から準備を重ねておく必要がある。ここ数年の改革もその一環ですが、長い目でみれば緒に付いたばかり。本番はこれからです。
 学長 千葉工大は今、新しい大学の姿をリードしていると自負しています。しかし、これでいいと安心してしまえば、あっという間に追い抜かれてしまいます。そうならないためには、自身が常に新しく変わり続ける必要がある。理事長がおっしゃっているように、全学を挙げて改革を日々緊張しながら進めていかなければならないと思っています。
――ありがとうございました。