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2015.11.15

タイ、中国 海外研修に参加して


 今夏、泰日工業大学(タイ・バンコク)の2015年サマープログラム(8月20〜31日)に参加した田中志弥君(未来ロボティクス学科2年)と、中国学生交流プログラム(デザイン分野)(9月11〜17日)に参加した石原成治郎さん(デザイン科学専攻博士前期課程1年)が、本紙に帰国報告を寄せた。その要旨を紹介する。
 泰日工業大はタイの産業発展に必要な技術者・人材を育てるため2007年に開学した大学で、日本的ものづくり思想を採り入れ、実践に強い学生の育成を目指している。
 一方、中国学生交流プログラムでは、技術者教育で名高い国立大学である哈爾浜工業大学(黒竜江省哈爾浜市)の学生と交流したほか、北京、上海などの名勝を見て回った。
バンコクの泰日工業大へ
「人生」を教えられた
未来ロボティクス学科2年 田中 志弥
 タイに行く直前の8月17、18日に、バンコクで爆破テロが発生。突然の事件に思い悩み、とりあえず冷静になって調べてみようと、ガイドブックに事件の発生時刻や発生場所を記入しました。それでも行きたい決心は変わりませんでした。
 今後、部活などが忙しくなり、今しか行けないと思ったのと、(過激派組織ISなど)世界情勢を考えると、平和なところなどほとんどないと思ったからです(他大学の女子学生2人は直前キャンセルしたとのこと)。
 タイでは、多くの驚きと発見がありました。中でも素晴らしいと感じたことが3つあります。
 1つ目は「バンコクの街並み」。タイには田園風景しかなく三輪タクシーのトゥクトゥクばかり、のイメージでしたが、実際のバンコクでは多くの車とバイクが走っており、とても都会でした。ただ、少し路地に入ると違う世界が広がっていました。
 交通手段は鉄道などが発達していないため、ほとんどがバスやタクシーでした。中でも「モタサイ」といわれるバイクタクシーがとても衝撃的でした。普通の2人乗りバイク?に、運転手を含め3人乗りさせられ、とても怖い思いをしました。
 2つ目は「タイ人の優しさ」。泰日工大の交換留学生として、多くの現地学生と交流し、言語などを優しく教えていただきました。特に私のバディーのPodはとても優しかった。彼はあまり日本語と英語が得意ではなく、会話は正直大変でした。バンコクにあるワットプラケオ(王宮)を2人で訪れたとき。私がタイ式のお祈りをしたいと英語や日本語で彼に伝えたところ、よく伝わらず、諦めかけました。しかし、彼は一歩も引き下がらず一生懸命、私の言葉を理解しようとしました。他人が困っていると、タイの人は本当に親身になって、相談に乗ってくれました。
 3つ目は「タイ人の宗教に対する姿勢」。いろいろな場所に行きましたが、必ずと言っていいほど「サーン・プラ・プーム」といわれる小さいお堂のような祠があります。日本の神棚のようなもの。土地神様が祭られ、とても細やかな装飾がしてありました。
 最も驚いたのは現地の通学生たちが、どんなに急いでいるときも立ち止まって“神棚”に手を合わせていたこと。心の底から感激しました。
 タクシーなど車にも必ずと言っていいほど小さい花輪と神棚があり、信号や渋滞で止まると、花輪の売り子が寄って来ました。常に咲いている花を飾らないといけない、とタクシーの運転手が話してくれました。日本人も学ばなければならないところがあるのではないかと思いました。
 タイに行って最も変化したのは、人生への考え方です。
 3日目の夜、デパートの前で待ち合わせをしていると、とてもきれいな音色が聞こえてきました。音色の方に向かっていくと、道端でキムと呼ばれるタイ伝統の打弦楽器を演奏している少女の姿がありました。少女はただ一生懸命、演奏していましたが、道行く人々はその前を素通りしていました。私がお金を入れると、その子は顔を上げて「コープクン・カー(ありがとう)」と私に微笑んでくれました。大変な生活をしているにも関わらず、本当に無邪気な笑顔で、その笑顔が忘れられません。
 タイに滞在中、路上演奏をしている子どもを少なからず見かけました。その度に、自分の人生がどんなに裕福で幸せなのか、この子たちより、いい環境にいるのに人生の時間を彼らより無駄にしているのでは、と反省しました。帰ったら、彼女や他の子どもたちに負けないくらい一生懸命生きたい。ボランティアなどにも積極的に参加したいと思いました。
タイの小学校で。後方の右が田中君 泰日工大の学生たちと
タイの小学校で。後方の右が田中君 泰日工大の学生たちと
哈爾浜工業大、北京、上海巡り
スケールの違い痛感
デザイン科学専攻博士前期課程1年 石原 成治郎
 参加のきっかけは、文化・歴史・生活が異なる中国に行き、デザインについて学びたいと思ったからです。
 私は、他大学から本学の大学院に入学しました。それまではデザインとは異なる分野を学んでいました。今、デザインについて勉強すればするほど、より詳しく学びたいという思いが強くなりました。
 スケジュールは大きく分けて、北京、哈爾浜、上海、と移動しました。
 中国に着き、交通事情に衝撃を受けました。バスの車中から街並みを眺めていたところ、歩行者は歩道がなくとも気にせず車道を横切るのが日常茶飯事。自動車のクラクションが各所で響き渡っていました。
 人間工学が専門なので、トイレにも注目しました。日本のトイレの洗浄ボタンは、最近プッシュ式もありますが、多くはハンドルが一般的です。中国はプッシュ式ボタンで相当な力を込めて押す必要があります。力の弱いお年寄りや女性には使いにくいのではないかと考えました。
 また、歩道の段差が激しく、障害者は不便を多々感じるのではないかと思いました。
 今回、中国のさまざまな土地を周ることが出来、北京周辺では天安門・故宮・万里の長城・頤和園(北京西北郊外の大庭園で西太后栄華の跡)・“鳥の巣”(北京五輪メインスタジアム)・水立法(水泳競技場ウオーターキューブ)、上海では玉仏寺(宝石をちりばめた2体の玉仏を安置)・豫園(明代の名園)・南京路などを遊覧しました。どの場所でも、スケールの大きさに驚きました。故宮で、当時の皇帝がいかに権力を持ち合わせていたかを目のあたりにしました。天安門広場には毛沢東の肖像画が掲げられており、人物を尊敬する面でも日本では見かけないほど規模が大きく、全てにおいて日本との違いに驚きました。
 万里の長城を目にした時は、終点が見えず驚きました。実際に歩いてみることで、写真では知ることのできなかった急な傾斜、道が凸凹していて不安定なこと、中国の建造物(天安門・故宮など)の装飾はとても細かく特有で、働く人の手が器用であることを感じることが出来ました。
 写真では見ていましたが、実物を目にすると大違いで、日本と中国のデザインに関する違いも知ることが出来ました。建物の装飾をとっても、日本では周りの景色と併せての風景を重視しているのに対し、中国では周りの環境というよりは、装飾そのものに力を入れているという印象を受けました。哈爾浜工大の学生との交流では、中国の学生の勉学に対する意識の高さを研究発表から感じました。
 今回、中国に行き、自分が物事を考える際に、いかに小さい規模で考えているかを痛感しました。中国の学生と関わったことで、考え方や、勉強への意欲も学ぶことが出来ました。今後、自分の生活に生かしたいと思います。
万里の長城で。前列右端が石原さん 哈爾浜工大の学生たちと
万里の長城で。前列右端が石原さん 哈爾浜工大の学生たちと