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2013.12.15

宗教と科学を語る
ダライ・ラマ法王14世来校


愛に満ちた世紀へ「責任負う若者たち」
慈愛の心を熱く説くダライ・ラマ法王14世 「空」について語るダライ・ラマ法王14世
慈愛の心を熱く説くダライ・ラマ法王14世 「空」について語るダライ・ラマ法王14世
 チベット仏教の最高指導者でノーベル平和賞を受賞したダライ・ラマ法王14世(78)が11月16日、本学を訪れ、ジャーナリストの櫻井よしこさんと「宗教と科学」について熱く語り合った。同15日に約1年ぶりに来日した法王は「ぜひ日本の学生とじかに話したい」と強く希望し、櫻井さんの尽力で東京や京都などでの多忙な日程に先だって本学来校が実現した。
大教室はダライ・ラマ法王14世の話を聞く学生たちで埋まった
大教室はダライ・ラマ法王14世の話を聞く学生たちで埋まった
櫻井さんが仲介
 この日のテーマは「宗教者の立場から見る科学の役割」。会場の津田沼校舎2号館3階大教室は約500人の学生諸君や来賓などで埋まった。
 小宮一仁学長が「今日のお話は《世界文化に技術で貢献する》という本学の建学の精神にも沿うものだと思う」とあいさつした後、櫻井さんとともに舞台中央に進んだ法王は年齢を感じさせない張りのある声で、時にジョークを交えながら2時間近く熱弁を振るい、会場からの質問に答えた。
 以下、法王の発言の要旨を再録――。
【慈悲深い世界をつくるために】
 20世紀には科学が急速に発達したが、その技術が戦争に使われた“暴力の世紀”でもあった。日本の兄弟姉妹に対して核兵器が使用された。この過去をわれわれは消し去ることはできないが、未来はまだ到来していない。人類はこの21世紀を平和で愛に満ちた世紀とする機会を持っている。その責任を負っているのは主に若者だ。
【慈愛を持って技術を使う】
 技術は素晴らしい。技術は中立的だ。だからこそ憤怒や嫌悪や憎しみ、過度に自己中心的な思考をもって技術を使えば、人間を不幸に陥れる道具となる。この世界を恐怖にさらす力をもっているのは人間だけだ。しかし、そもそもわれわれの中には慈悲・慈愛の種がまかれている。その種を生かし、成長させて人類全体をひとつの家族ととらえることが大切だ。あらゆる宗教が、敵であっても慈悲の心で接するように教えている。
【多くの科学者が宗教家との対話を望む理由】
 仏教には、「自らの力だけで存在しているものはこの世にはない」という『空』の教えがある。物質的な存在に一切の実体性はない、すなわち『空』である。しかし、『空』であるがゆえに、すなわち他のものに依存しているがゆえに、物質的な存在として成立することができるという教えだ(注・色即是空 空即是色)。これは量子力学の概念と一致する。インドの高名な原子物理学者はこう言っていた。『2000年以上も昔のインドで生まれた仏教の経典に量子力学の概念がすでに書かれていたということを、私たちは誇りに思う』と。
【湯川秀樹博士の研究と仏教】
(櫻井さんの発言)日本人として初のノーベル賞を受賞した湯川博士が、『色即是空 空即是色』の考え方を基に、授賞対象となった「中間子理論」を構築されたことはよく知られている。
 このあと、学生から「現在の科学は障害のある胎児の人工妊娠中絶や、植物状態の高齢者の延命を可能にしている。これをどう思うか?」「ロボットがより人間に近付くことに法王は賛成するか?」といった質問が出され、法王は前者には「一般化した答えをすることは難しいが、われわれは結局、脳が機能してこそ生きているのです」、後者には「ロボットが(人と同じような)意識を持つようになるとは思わない。しかし、研究は続けるべきでしょう」などと答えていた。
ピーターさんが法王作詞曲歌う
 法王と櫻井さんとの対談のあと、舞台に1960年代に人気を博した米国のフォークトリオ「ピーター、ポール&マリー」(PPM)のピーター・ヤーロウさん(75)が登場。全米でいじめ撲滅運動を続けているピーターさんは、法王が作った詩に自分が曲をつけた『ネバー・ギブ・アップ』(決してあきらめないで)が入った最新のソロアルバムの世界キャンペーンのために来日中で、「ぜひ法王の前で歌わせてほしい」と希望して大学での共同発表が実現した。ピーターさんは「思いやりをもち、相手の気持ちになって考えよう」と切々と歌い上げた。
 さらに会場を改めて法王一行は、未来ロボット技術研究センター(fuRo)の櫻壱・弐號などのロボットを見学。また、惑星探査研究センター(PERC)の松井孝典所長が鉄隕石で造ったという貴重な刀を興味深そうに手にとり眺めていた。
ダライ・ラマ法王14世とともに。右はピーター・ヤーロウさん、左から小宮学長、櫻井さん、瀬戸熊理事長 ロボットの操縦について説明を聞く
ダライ・ラマ法王14世とともに。
右はピーター・ヤーロウさん、左から小宮学長、櫻井さん、瀬戸熊理事長
ロボットの操縦について説明を聞く
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