NEWS CIT ニュースシーアイティ

2012.12.15

aba 宇井さん3賞独占


Lifilmビジネス 起業コンテスト
懇親会でメンターに激励の言葉をかけられる宇井さん(左)
懇親会でメンターに激励の言葉をかけられる宇井さん(左)
★日経BP誌 ウーマン・オブ・ザ・イヤーにも
 排泄検知シートLifilm(リフィルム)で学生ベンチャー企業を立ち上げた宇井吉美さん(未来ロボティクス学科研究生・株式会社aba代表取締役兼CEO)が、日本MITエンタープライズフォーラム主催「第12回ビジネスプランコンテスト&クリニック(BPCC12)」で、一般の部4賞のうち3賞を独占(11月17日授賞)。さらに、働く女性の雑誌「日経WOMAN」(日経BP社)が今年、各界で最も活躍した女性に贈る「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」の若手リーダー部門の1人にも選ばれた(12月6日授賞)。
 宇井さんはLifilmビジネスで6月、「第1回DBJ女性新ビジネスプランコンペティション」のファイナリストに選ばれており、本学発の宇井さんの起業に期待が集中する年となった。
 ビジネスプランコンテストのMITエンタープライズフォーラムは1978年、米マサチューセッツ工科大(MIT)やスタンフォード大の卒業生が母体となって立ち上げた企業家育成の非営利組織で、現在、世界25支部で活動を展開。その日本支部(MIT EFJ=川原洋理事長)が、21世紀の社会をひらく新ビジネスの創出を促し、今回コンテストを主催した。米国大使館も特別助成、今年で12年目。
 応募の中から、激戦を勝ち抜いたファイナリスト5組が最終審査発表会・授賞式(11月17日・発明会館=東京都港区虎ノ門)に臨んだ。
 Lifilmは寝たきり高齢者用の排泄検知シート。ベットに敷き、介護者に排泄があったことを知らせるため高齢者、介護者双方が快適に過ごせる。
 会場ステージで最終プレゼンテーションに立った宇井さんは、寝たきり高齢者数、介護士数などの背景を説明した後、排泄検知シートとサーバーを結び排泄リズムなどのデータが蓄積できるサービスシステム、事業スケジュールなどを提示した。
 審査員(各務茂夫委員長=東大産学連携本部事業化推進部長・教授=ら5氏)による評価と日本支部正会員の投票の結果、宇井さんは一般の部(計4賞)の最優秀賞に輝いたほか、優秀賞を除く新日本賞、正会員特別賞を独占した。
 審査委員の1人、インターネット起業をリードしてきた孫泰蔵モビーダジャパンCEOは「目を見張るような特筆すべき素晴らしい女性企業家(宇井さん)に出会った。ミッション、事業内容、テクノロジーともに申し分なく、ぜひ応援したいと思った」と絶賛した。
 コンテストは書類提出から最終審査まで4カ月。各ファイナリストには1カ月半、主催者派遣のメンターが2人ずつ付いてプランの完成を助け1泊2日で合宿もした。
 宇井さんは、メンターに「端末販売のビジネスモデルではなく、サービス料金で勝負するモデルにすべきだ」と指摘してもらい、意識が変わったという。
 「端末販売のモデルでは、技術力のある大手にすぐに乗っ取られます。ビジネスの核を、これから収集する高齢者の排泄情報とすること。情報を貯めていき、その情報を基に今後、多様なサービスを展開することに、私たちabaの生き残る術があります。いわば技術で売るSONY型よりも、徹底的な現場マーケティングの任天堂型であること。先端技術とともに、必要なときに必要なサービス、ソリューションを提供することがabaの使命だと思っています」と、今後を語った。

「理科教室」チーム 優秀賞


風力発電コンペ エネルギー利用部門
前列左から佐藤君、里中君、後列左から宮内さん、江口さん、貝森さん
前列左から佐藤君、里中君、後列左から宮内さん、
江口さん、貝森さん
 アイデアに富んだ環境エネルギー機器を作って性能を競う日本大学生産工学部主催「第5回風力発電コンペWINCOM2012」(11月4日、日大生産工学部津田沼校舎)のエネルギー利用部門で、CITものづくり「理科教室」チームの7人(代表・江口逸実さん=機械サイエンス学科2年)が優秀賞を受賞、賞状・盾と副賞の10万円を獲得した。
 メンバーは機械サイエンス学科2年の江口さんと貝森瑛美さん、里中舞斗君、生命環境科学科2年の宮内理加さん、佐藤俊輔君、長島里佐子さん、電気電子情報工学科1年の伊藤彰さん。受賞作は翼状のプロペラを持つ風車型発電機「蜂鳥」。縦80センチ×横60センチ×高さ80センチで、ジオラマに風車を取り付け、起こした電力で夜景を点灯させた。
 2年生中心のチームなので材質、流体解析、CAD設計など未修得分野が多く、調べることから始めた。理解の共有に時間がかかり、企業に教えてもらい、時には徹夜で作業を進めた。
 翼は揚力がよく働くよう、電子秤に乗せ風を当てて減量を試験したり、流体解析をして形状を決定。薄板は本大会では接着剤と相性が良いABS樹脂を使用した。羽の枚数やピッチを変えられ、いろいろな条件下で検証もできる。見て楽しく、とジオラマにし建物の照明にLEDを使った。
 「理科教室」チームは市民に身近な科学現象を学んでもらおうと活動しておりメンバー募集中(連絡はCit.science@gmail.comまで)。
 江口さんは「企業と連絡を取り合うなど、材質選びは特に勉強になりました。『理科教室』は立ち上げて1年も経っていませんが、小さな努力が少しずつ実ってきているのだと感じました。お世話になった津田沼工作センター、萩原電材、スリーボンド社などにお礼を言いたい」と語った。

荒井PERC上席研究員南極へ!


隕石探査米国隊に参加 日本人女性初
 惑星探査研究センター(PERC=松井孝典所長)の荒井朋子上席研究員=写真=が「米国南極隕石探査」(11月27日〜2013年1月25日)に日本人女性として初めて参加が決定し、11月27日に出発した。
 探査計画は米航空宇宙局と米国立科学財団が実施するもので、探査地域は南極大陸横断山脈の南部(グロブナー山周辺)。
 本隊8人・偵察隊4人で編成され、11月26日からニュージーランド・クライストチャーチの南極サポートセンターに集合して準備。12月1日、極地用輸送機で南極の米マクマード基地入り。同月10日から来年1月20日までの42日間、裸氷域(氷が露出している一帯)にテントを張り、スノーモービルで移動しながら隕石を探査、採集し記録する。1月25日にマクマード基地に戻る。

小澤准教授に論文賞


微小重力下で表面張力測定
 機械サイエンス学科の小澤俊平准教授=写真=の研究が、無重力環境下での科学を研究する日本マイクログラビティ応用学会(JASMA、会長=太田治彦・九州大教授)の第5回論文賞に選ばれ、11月22日、同学会第26回学術講演会会場(福岡市・九州大学西新プラザ)で表彰された。
 受賞論文は「放物線飛行中の微小重力下での酸素分圧の影響を考慮した溶融銅の表面張力」。
 授賞理由によると、小澤准教授は、電磁浮遊技術を用いて溶融銅の表面張力測定に対する酸素分圧依存性を計測。航空機による微小重力実験を国際協力のもとに実施し、酸素分圧の制御に成功した。この成果は微小重力環境での材料、結晶学、熱物性科学の発展に大きく貢献。実験方法の完成度の高さに加え、国際学術誌への活発な発表も高く評価された。
 小澤准教授によると、近年コンピューター技術で溶接、鋳造、結晶成長などの高温融体プロセスが、数値シミュレーションによって最適化されるようになってきた。そのためには融体の正確な熱物性値が必要だが、表面張力については正確なデータが十分に整備されていない。理由は1従来の容器を用いた方法では高温下、融体と容器の化学反応が避けられないので、ほとんどの測定が比較的低温に限られている2金属融体の表面張力は雰囲気中に不純物として含まれるわずかな酸素の影響を受けるが、それを考慮した研究がほとんどない――の2点から。
 これを解決するのは無重力状態で金属を空中に浮遊させて加熱・溶融し測定する方法。小澤准教授は、小型ジェット機の放物線飛行中に得られる約20秒間の微小重力環境で雰囲気を制御しながら金属融体の表面張力を測定する実験を世界で初めて試み、約100回の無重力実験に成功。正確な表面張力データを取得し表面張力の理論的計算式の有効性を確認した。
 さらに高精度な検証を目指し国際宇宙ステーションで実験を行う予定で、海外の研究者やヨーロッパ宇宙機関、米航空宇宙局(NASA)と連携して準備を進めている。
 小澤准教授は「共同研究者や学生たちの手助けなしには成功はあり得ず、感謝しています。今後も研究を続け、新しい材料プロセスの開発などで社会の発展に寄与できるよう努力していきたい」とコメントした。
 同学会には宇宙飛行士、宇宙実験を志す学生なども所属。優秀な発表をした学生が毛利衛宇宙飛行士から表彰される「毛利ポスターセッション」でも知られる。