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2012.11.15

新鋭「サクラ」公開


「Japan Robot Week 2012」開く
 「Japan Robot Week 2012」=1面参照=は「ロボット大賞」と「NEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)国際ロボットフォーラム」「ロボットイノベーション2012」「つくば国際戦略総合特区フォーラム」の4イベントを集めた総称で、東京ビッグサイトに62社・団体、203ブースが参加して開催され、パデュー大学特別教授の根岸英一博士(2010年ノーベル化学賞受賞)らの講演があった。
サクラの走行デモ。西村研究員が操縦し、小柳副所長が説明
サクラの走行デモ。西村研究員が操縦し、小柳副所長が説明
地下作業に強い小型化ロボット
 NEDO主催のロボットフォーラム開催前日の10月16日、会場で、災害対応の最新ロボットとして未来ロボット技術研究センター(fuRo)と本学ベンチャー企業・(株)移動ロボット研究所が開発した「Sakura(櫻=サクラ)」が、報道陣に初公開された。
 小型の先行探査型移動ロボットとして、クインス、ローズマリーに次ぎ、探査が最も困難とされる地下施設内などでの情報収集を目的に製作された。
 原子炉建屋の地下は、地上階よりも一段と厳しい条件下にある。▽地下階段の傾斜角が42度と急斜度(1〜5階の階段は40度)▽階段の幅、踊り場の幅が各70センチ(1〜5階では91センチ)▽圧力抑制室の上部に到達するには傾斜角52度の階段を昇降する必要がある▽抑制室上部の走行路面・通称キャットウオークは鉄製のグレーチング(格子状でありクローラーが挟まるため走行しにくい)上で走行・方向転換する必要がある――などのため。
 サクラは小型化した筐体(ロボット本体)に必要センサを搭載し、特に高い運動性能と高線量防護機能を備えた。通信ケーブル自動巻き取り装置(300メートル)も小型化し、プラグイン充電方式を採用。厳選した材料でつくり3年間メンテナンス不要を目指した。
 福島第一原発建屋内に投入して地下部分の格納容器、圧力抑制室や配管の損傷有無、壁や床面の汚染水漏れなどを調べることができる。今後、遠隔無人建設機械などが入れば、これを支援する「目」として活躍が期待される。
 会場ではfuRoの西村健志研究員がサクラの操作を実演し、性能を解説した。モックアップ(模型)施設などで実証試験を繰り返し、災害現場への投入に向けて研究を続けていくという。
クインスなどを出展
 NEDO国際ロボットフォーラム(10月17、18日)は「ロボットが築くスマートな社会」をテーマに開かれ、国内外の最新ロボット動向が紹介された。fuRoレスキューチームは歴代レスキュー・災害対応ロボットをブース出展した。
 クインスの先駆けになった「Kenaf(ケナフ)」とクインス、ローズマリー、最新サクラの4機種。開発段階から実用へ、さらに特化した改良型へ、と本学が誇るロボット技術を展示解説。西村研究員らが実機の走行デモを行った。
 18日のフォーラムでは、メーンステージで小柳fuRo副所長が「災害対応ロボットの開発と課題」と題して講演、福島第一原発でのロボットの実働ぶりや今後の可能性について説明した。

未ロボ3人、国内2位


フリースケール杯カーレース
準優勝した(左2人目から)羽根田君、小田君、下篠君
準優勝した(左2人目から)羽根田君、小田君、下篠君
 未来ロボティクス学科の小田裕一朗君、下條和真君、羽根田友希君の4年生3人(ともに林原靖男研究室)が「フリースケール・テクノロジー・フォーラム(FTF)ジャパン2012」(10月22、23日、東京都港区のザ・プリンスパークタワー東京で開催)のフリースケール杯インテリジェント・カーレース決勝大会で準優勝に輝いた。
 インテリジェント・カーレースは、高専生、大学生、大学院修士のチームがロボットカーを製作。ラジコン操縦でなくプログラミングで自律走行させてトラック周回のタイムを競う。コースアウトせず最速で完走した車が勝者となる。世界20カ国の約1万5千人が参加して各国で開かれているが、日本では初開催。国内15チームが出場し、東海大高輪キャンパスでの予選を勝ち抜いた7チームが決勝に進出した。
 下條君らにとってFTFジャパンは、電気・電子工学(回路、インターフェース、ソフトウエア設計)と機械工学(制御理論)の学習成果を試し、コミュニケーションや協力のスキルを磨く絶好の機会だった。3人は下條君をリーダーにチームを結成。日ごろのプログラミングの腕を生かし予選を通過。決勝大会でもトラブルなく完走したが、一歩及ばず2着に。日本代表として世界戦に挑むチャンスを逃した。
 下條君らは「研究室での研究の傍ら、こなしましたが、やってみると少時間で効率よく開発を進めるノウハウを学べ、楽しみながらできました。他大生と関われ、自分の現在位置を知る機会にもなりました。準優勝には満足しませんが有意義な経験でした」と語った。
 FTFジャパンは米国の世界的半導体企業フリースケール・セミコンダクタの日本法人が、先端技術を集めて、技術トレーニングとビジネス交流の場を提供。決勝大会優勝チームは、各国代表と世界一を争うチャンピオン大会に出場できる。

段差越える車イスロボ


中嶋研が開発 国際福祉機器展に出展
 未来ロボティクス学科・中嶋秀朗准教授の研究室は、段差を自律判断して乗り越える車イスロボット「パーソナルモビリティビークル RT‐Mover P‐type」を開発し、第39回「国際福祉機器展2012」(9月26〜28日、東京ビッグサイト東展示ホール)に出展した。
 バリアフリー化が進むものの、街中にはさまざまな段差や溝が残る。中嶋研の車イスロボットは、舗装路面では車輪で効率よく移動し、段差や溝があると、自分で判断して車輪の脚でまたぐ新しいジャンルの乗り物。
 「RT‐Mover P‐type」と命名したロボットは、4輪駆動と5つの軸で動く。ユーザーはジョイスティックで進行方向を指示するだけ。あとはロボットがセンサーで周囲の地形を判断し、適切に動作する。
 不整地では、座面が常に水平を保つよう制御される。段差のあるなしや大きさを距離で測る複合センサーを足元に装備。車輪のトルク状態もバックアップとして使い、確実に路面を検知する。
 センサーで段差を見つけたら、脚を上げられるかどうかを計算。後ろのステアリングが安定性を高める準備をしたうえで、脚を上げる。
 ロボットは車輪を一列に並べ左右に補助脚を出すことで、狭い場所で居ながら回転もできる。
 同展は、手作りの自助具から最先端技術の福祉車両まで世界15カ国1地域の548社・団体から約2万点の福祉機器を集めて開かれ、延べ10万人以上が来場。中嶋准教授らがイベントスペースで車イスロボットを実演=写真、来場者への説明にあたった。
 中嶋准教授は「動きが大体できて、見てもらえるようになった段階。次はいろんな人に乗ってもらい使い心地を研究していきたい」と話している。
 当日の様子は、デジタイズドインフォメーションwebサイトに動画ニュースとして取り上げられた。

 中嶋研は「ふしぎや驚きのウラにある知恵と技術にふれてみよう!」と開かれた千葉市科学フェスタ2012(10月6、7日・千葉市科学館「きぼーる」)のイベント会場・子ども交流館アリーナ(科学体験ブース)にも車イスロボットなどを出展。中嶋准教授とスタッフ13人が、訪れた子どもや大人たちに操縦体験してもらい、交流の時を過ごした。
車イスロボ実演 中嶋研
 「ロボットイノベーション2012」では介護・福祉ロボットや移動ロボットを展示。未来ロボティクス学科・中嶋秀朗准教授の研究室は車イスロボット「パーソナルモビリティビークル RT‐Mover P‐type」を出展した=上記福祉機器展の記事を参照。
 ステージで中嶋准教授らが実演。車輪走行していた「RT‐Mover P‐type」が、段差や溝を発見すると、脚でまたぐように乗り越え来場者の注目を集めた。