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2012.11.15

ロボット大賞 社会貢献特別賞


fuRoクインス/ローズマリー
原発事故対応で貢献
表彰される(右から)宮川博光常務理事長、fuRoの小柳副所長、吉田上席研究員、西村研究員
表彰される(右から)宮川博光常務理事長、fuRoの小柳副所長、
吉田上席研究員、西村研究員
 今年国内で最も活躍したロボットとソフトウエアなど10件に贈られる第5回ロボット大賞(経済産業省、日本機械工業連合会主催)の公共・フロンティアロボット部門で、未来ロボット技術研究センター(fuRo)の原発対応ロボット「Quince(クインス)/Rosemary(ローズマリー)」が「社会貢献特別賞」に選ばれた。東日本大震災・東京電力福島第一原子力発電所事故で建屋内の探査に大きく貢献したことが認められたもので、10月17〜19日、東京ビッグサイト(東京都江東区有明)で開かれた「Japan Robot Week 2012」=2面に関連記事=の会場で表彰された。
今年5月23日、3号炉1階TIP(移動式炉心計測装置)室内を調査するクインス。奥に水素爆発で吹き飛んだTIP室の扉が見える(東京電力提供)。 クインス2台を用いた学内での操縦訓練
今年5月23日、3号炉1階TIP(移動式炉心計測装置)室内を
調査するクインス。
奥に水素爆発で吹き飛んだTIP室の扉が見える
(東京電力提供)。
クインス2台を用いた学内での操縦訓練
 ロボット大賞は独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)や日本ロボット学会、日本科学未来館など10団体が主催者に協力して、2006年から開催され、合同展示と表彰式が行われている。
 クインスは2011年3月11日、福島第一原発の損傷で、東電作業員を放射線から守り原発建屋内を探査する必要から、レスキューロボットで実績のあった本学fuRoが打診を受け、急きょ開発した。
 走破能力に優れた既存クインスをベースに東京電力の要請で、多数の機器を搭載し狭い通路を走行、急斜度の階段を昇降できるよう強化された。
 高温多湿、強い放射線の建屋内で有効な防護措置や、有線通信、水位計、カメラ(前・後方用、俯瞰用など)、線量計、温度計、湿度計、ケーブル巻き取り装置などを搭載。重量増でバランスを崩さぬよう足回りの動的バランス機能も開発した。
 クインス1号機は昨年6月20日、本学を出発して福島入り。原子炉建屋2、3号機内でダストサンプリングや冷却系状態調査、放射線量測定、写真撮影などを行い、冷温停止計画に必要なデータを収集した。
 一方、小柳栄次fuRo副所長らが東電作業員にロボット操縦を伝授。全身防護服や三重手袋を付けた作業員が操作できるよう、一連のモニター操作画面も構築した。
 クインス1号機は昨年10月、原子炉建屋2号機5階からの帰路、3階でケーブルが切断し帰還不能に。切断事故に対して有線・無線を併用し対応できるよう改良されたクインス2、3号機が今年2月、福島に送られた。6月、再び原子炉建屋2号機1〜5階の探査に挑み、燃料プールの鮮明な撮影に成功した。
 さらに、後継機として、パワフルで稼働時間も長いローズマリーを開発。積載可能重量はクインスの10キロから一挙60キロに。高所カメラ、放射線発生源の強度を色で示すガンマカメラを搭載できる。また、電池交換時の二次的被ばくを減らすためプラグイン充電方式に変えるなど、性能を向上させた。
 クインスとローズマリーについて、ロボット大賞審査委員会は「ロボットを現場に導入するために必要な現場作業ニーズとの擦り合わせや操縦者の訓練などを積極的に行い、長期間にわたって有効に活用されている点が評価された」と講評。特に公共の未来を切り拓いたとして、社会貢献特別賞に選んだ。
 小柳副所長、吉田智章上席研究員、西村健志研究員らは10月17日、東京ビッグサイト東3ホールで表彰式に臨んだ後、翌18日に同ホールでプレゼンテーション。クインス活躍の様子やローズマリーが会場に展示された。
ロボット大賞会場に並べられたケナフ、クインス、サクラの本学ロボット群
ロボット大賞会場に並べられたケナフ、クインス、サクラの本学ロボット群
ユーザーの視点
大切にした結果
 受賞について、小柳副所長らは「冷温停止実現に向け、バルブ操作作業を行うための建屋内の撮影、線量分布計測は特に重要だった。現場の作業員と密にやりとりしながら工夫改良を施し、学内に建屋模型を構築して訓練を行うなど、ユーザーの視点に立った開発がこの成果につながったと思う」とコメントした。
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