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2012.6.15

建都プレサポにデザイン賞
こども環境学会 大会


被災・志津川小に寄り添って
 東日本大震災の被災地で、建築デザインの立場から支援を展開してきた建築都市環境学科・石原健也研究室の院生、ゼミ生、OBで編成するプレイグラウンド・サポーターズ(略称プレサポ=代表・石原准教授)が、こども環境学会2012年大会(4月21日・仙台市=小澤紀美子会長)で2011年度「こども環境学会賞デザイン賞」を受賞した。
受賞式に臨む石原准教授(右から4人目)とプレサポメンバー
受賞式に臨む石原准教授(右から4人目)とプレサポメンバー
 受賞対象者は石原准教授、佐藤将之・早稲田大学人間科学部准教授、佐藤淳・東京大学工学部特任准教授ら指導教員と、石原研OBの塩原貴洋さん、高村正和さん、清水隆文さん、近藤亜美さん、永田真也さん、修士2年の伊原孝志さん、遠藤誉央さん、同1年の大野宏己さん、星野美衣奈さん、渡辺鋼さん、学部生の國島真吾君、森碧衣さん、与那覇歩君ら。
 プレサポたちは昨年4月11日から宮城県南三陸町に入り、町立志津川小学校(加藤敬一校長、児童数290人)を拠点に、被災地に寄り添い支援を続けてきた(昨年11月15日号1面で紹介)。受賞は一連の活動「志津川小アクションリサーチプロジェクト」に対して。
 授賞の総評によると、プレサポたちは最初の約1カ月、子どもたちとワークショップを展開。被災住民たちとの連携を通して要望を把握し、5月から具体的なものづくり、場づくりに入った。
 まず、仮設住宅の一隅の広場に、地元木材で長いベンチを数台製作。たちまち子どもたちの遊び場・お年寄りの談笑の場に。
 次に12畳ほどの木製野点床を作り、アーチ状のシェルターで覆った。昼は大人たちの井戸端会議、夕方は子どもたちのイベントでにぎわう、なごみの空間となった。
 仮設住宅群(60戸48世帯)が半分を占めた志津川小の校庭で10月、入試広報部も協力し、他の被災地に先がけ運動会を開催。校庭周りに桟敷席48台(2段ベンチ)を作り、お年寄りも疲れず観覧できるようにした。
 その後、桟敷席を組み替えてテラス(縁側)を作り、仮設住宅48世帯の室内と路地をつないで、身近に通い合う生活空間を生み出した。
 こども環境学会は2004年に設立以来、研究者や実践者が集まり毎年4月に学会大会、国際シンポジウムを開催。学会賞は昨年7月から公募、デザイン賞には8点の応募があった。約2カ月の審査の結果、プレサポが選ばれた。論文・著作賞は該当作がなかった。
 こども環境学会代表理事でデザイン賞選考委員長を務めた仙田満・放送大学教授は「レベルが高い少数激戦のなか、受賞作は多面的な高い評価が得られた」と総括。
 著名な工業デザイナーで審査委員の石井賢俊氏は「破壊された屋外空間に”まず安心して座る場”を提案したことで、生活の質が一挙に向上した。座る用具たちが、日本の伝統である簡潔な造形の中にも多機能を内蔵、美しくデザインされている。これらが生き生きとした遊びを誘発して生活を取り戻していることを高く評価したい」と総評した。
 そして「ベースに一貫して流れているのは、被災地の人たちへの、行動的で芯の強い愛情だ。さらなる展開を期待したい」と述べた。
桟敷席を組み替え住宅テラスに シェルターの下でクッション作り
桟敷席を組み替え住宅テラスに シェルターの下でクッション作り
石原准教授が記念講演
 受賞式には今年度在籍メンバー全員が参加。授賞式翌日には、石原准教授が仙台国際センターで記念講演した。
 石原准教授は「資金力も組織力もないぼくたちが、現地に対してできたことは、デザインというスキルを使った、心を込めた贈り物だった」と述べ、ステージ上の大画面でプレサポの活動ぶりを紹介。志津川小の加藤校長や子どもたち、父母、お年寄りらとの交流からニーズを知り、地元森林組合などさまざまな人々の協力を得て、デザインでベンチや野点床などの支援に変えていった様子を説明した。
 今年の支援活動では、壊滅状態となった閖上地区に、再建のシンボルとして、わかば幼稚園の移転再建プロジェクトを発表。計画によると、ワンルームの園舎で、開放回廊に囲まれ、中央櫓上に木材シェルターを載せ、大きなドーム屋根で覆う。夜は建物が行灯のように光り、閖上コミュニティーが集まる場になる。資金の目処はまだ立っていないが、夢に向かって走りたいという。
 そして「支援活動は、支援する人/される人という関係をつくり、支援側に、感謝されて当然という気持ちが芽生えがち。しかし、贈り物は本来、誰に贈りたいのか、これを気に入ってくれるだろうか、その人に似合うだろうかと、一生懸命考えるものだ。補助金を効率よく集めるのが復興計画の主眼のように思われがちだが、私たちはもう一度、何ができるかを問い、関わり、効率の網の目に穴をあけていくことが重要なのではないか」と語りかけた。

KidSize サッカーV4


ロボカップ・ジャパン2012 敵なし「CIT Brains」
 5月3〜5日に開かれた「ロボカップ・ジャパンオープン2012」(ロボカップ日本委員会主催、大阪市旭区・大阪工業大学大宮キャンパス)のヒューマノイド・サッカーリーグKidSizeで、本学「CIT Brains」が4連覇を達成した。
CIT Brains チーム。前列左から2人目が林原教授。後列右端が南方准教授
CIT Brains チーム。前列左から2人目が林原教授。後列右端が南方准教授
 予選3試合すべて10点を先取するコールド勝ちで国内、敵なし状態。世界大会は6月18〜24日、メキシコシティで開催される。CIT Brainsは昨年の世界大会(イスタンブール)KidSizeで準優勝しており、今年こそ世界初優勝にかける。
予選はすべて
コールド勝ち
 KidSizeは身長制限30〜60センチの自律移動ロボたちが3on3(3機対3機)で対戦する。CIT Brainsは2010年から投入した機種「ダイナモ」で臨んだ。常に滑らかな関節角度を維持して安定歩行でき、最大歩行速度は秒速40センチ。
 予選で金沢工業大学の「SiTik」、大阪大学「JEAP」、明星大学「いわき☆めいせい」をすべて10―0で破った後、決勝戦でSiTikと対戦。連続9得点を挙げ、あと1点でコールド勝ちだったが、SiTikのゴールキーパーがゴール前に粘り、時間切れとなった。
 今大会は台湾、タイなど海外勢の参加が増えて他リーグ上位を占める中、ヒューマノイドリーグはCIT Brainsの優勝で開催国の面目を保った。
 チームは、未来ロボティクス学科の南方英明准教授をリーダーに林原靖男教授、未来ロボット技術研究センター(fuRo)の入江清主任研究員、未来ロボティクス専攻修士2年の野平幸佑さん、土橋一成さん、未来ロボティクス学科4年の谷本和城君、秋谷駿行君、山田幸果さん、同2年の伊藤裕介君、前川大輝君の10人。
 大会初参加の伊藤裕介君は「大会の雰囲気や試合の流れ、制限された空間・時間のなかで優先すべき事柄などを経験でき、自身の改善点も見つけることができました。世界大会では、よりチームに貢献できるよう頑張りたい」と述べた。
 ダイナモは、インテル製CPUボードに、ルネサスエレクトロニクス製サブCPUを搭載。サーボには双葉電子工業製18個。頭部には画像認識用USBカメラ、加速度センサやジャイロセンサなどを搭載している。世界大会には、CPUボードなどを刷新した新機種で挑むという。
 初日に行われたテクニカルチャレンジでは、CIT Brainsはスローインと障害物回避ドリブル、ハイキックの3競技で計27ポイントを獲得し1位。2位SiTikは10ポイント。ハイキックは床面を転がす2次元的動きから、3次元の動きを増そうと、今回から新設された。ボールから30センチ以上離れた位置から走り出し、蹴り上げるボールの高さを競う競技。
決勝戦で相手を圧倒するCIT Brain(右3機)
決勝戦で相手を圧倒するCIT Brain(右3機)