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2011.10.15

子どもたちを未来ゾーンへ


大震災復興国際コンペで最優秀賞
建都“石原チーム”の15人
宮城県南三陸町志津川地区の復興プラン完成予想図
宮城県南三陸町志津川地区の復興プラン完成予想図
津波対策として橋状土木構造物の上に居住区を設定した「橋のまち」 森と川が一体化した世界一の遊び場をつくり上げる
津波対策として橋状土木構造物の上に居住区を設定した「橋のまち」 森と川が一体化した世界一の遊び場をつくり上げる
 東日本大震災復興プランを、「子どもが元気に育つまちづくり」を目標に競う国際提案競技で、建築都市環境学科・石原健也准教授と学生らのチームが、成人部門の金賞(最優秀賞)の1点に選ばれた。設計には、美しい風景と平和な生活を早く取り戻してほしいという願いとともに、50年後の世界遺産をめざす高い目標も込められている。
 提案チームは石原准教授と研究室の学生=高村正和さん(建築都市環境学専攻修士2年)、伊原孝志さん、遠藤誉央さん、近藤亜美さん(以上同1年)、大野宏己君、國島真吾君、永田真也君、星野美衣奈さん、森碧衣さん、渡辺鋼君(以上建築都市環境学科4年)の11人に、石原准教授主宰の一級建築士事務所デネフェス計画研究所・中野正也さん(平成9年度本学建築学科卒、同事務所副所長、本学非常勤講師)、齋藤大介さん(13年度建築学専攻修了)、内藤賢二さん(15年度同)、塩原貴洋さん(22年度建築都市環境学専攻修了)の4人を加えた計15人。
 石原研究室は「プレイグラウンド・サポーターズ」名で復興支援ボランティアチームを結成し、4月から現地支援活動をしており、学生たちは支援活動と並行して今回提案に参加した。
 コンペは「復興に経済・産業回復も急務だが、子どもたちの生育環境の視点も欠けてはならない」と支援を展開中の公益社団法人「こども環境学会」(小澤紀美子会長)が、日本ユニセフ協会の協力で主催した。
 今年5月に公告。子どもたちから成人まで応募年齢4区分で、国内外から広くプランを公募した結果、509人から187点の提案があった。
海と生きる 川と生きる 森と生きる
 石原チームは、宮城県南三陸町志津川地区の復興プランを「海と生きる、川と生きる、森と生きる」と題して提案した。
 南三陸町志津川地区は家屋の約80%を流失し街はほぼ全壊。志津川小学校、同中学校は高台にあって難を逃れ、3・11以降、避難所や自衛隊拠点に利用されたが、5月に小学校は再開。しかしガレキのなかスクールバスで通学。仮設住宅から通う子も多いという。
 設計でまず7つのコンセプトを立てた。
 旧市街地のほぼ全域を公園にする子どもたちが自ら創り遊ぶ世界一の冒険遊び場を設けるすべてを高台移転するのではなく、海の見える街に住み続ける自動車交通と分離した歩行者・自転車交通ネットワークを構築する建物はほぼすべてを木造とする多機能型親水護岸により、川と気水域の水質を改善する記憶の場、祭りの場を設ける。
 次に、地区人口8千余人に対し計画人口を1万人、新規必要住宅を1600戸と試算し、高台(森のまち)、旧市街(橋のまち)に半分ずつ居住する計画を立てた。地区全体は3つの公園ゾーン「こどもの国」「追悼公園」「農業公園」と、3つのまちゾーン「橋のまち」「森のまち」「海のまち」で構成した。
アーチ橋上「橋のまち」
 3公園・3まちの各ゾーンごとに設計デザインの細部をふくらませていった。また、それぞれに地元農協や土地所有者にNPO法人、日本ナショナルトラスト協会も交え、助成を考慮した現実的事業方式を提案した。
 とくに居住区「橋のまち」では、高さ17メートルの、アーチを持った橋状土木構造物の上に、総延長1キロ、幅20メートル、面積2ヘクタールの人工地盤を設け、復興住宅として木造集合住宅を載せる。橋のアーチ下には公共施設と民間商業施設が入る。33あるアーチごとに構成自由な賃貸空間としたのも新しい。
懐かしさと新しさ融合
 これらを総合し、もともと3本の川によって形成された100年前の地形と、土木建築技術が合体した新しい都市建築とが融合した、どこか懐かしく、でも見たこともない未来的なランドスケープを現出させた。今後10年計画としてタイムテーブルも付けた。
 審査委員会の和田章委員長(日本建築学会会長・東京工大名誉教授)ら約40人が審査。8月30日、日本ユニセフ協会ユニセフハウスで審査結果を発表した。石原チームのプランは見事、成人部門の最優秀賞5点のうちの1点として選ばれた。
 和田審査委員長は「多くの若者たちが被災地を見てくれたのでしょう。(プランに)その時の悲しみや思いが伝わってくる。美しい環境をつくろう、子どもたちが元気に住み続けてほしいという思いと夢を提案してくれた」と講評した。
 受賞学生のリーダー役を務めた高村さんは「実際の支援活動から被災者の方々のさまざまな思いを知った。コンペ提案では俯瞰的に街を見る視点に、現地で感じた思いを盛り込めたのがよかったと思う」と述べた。
 受賞プランは、被災住民主体によるまちづくりの資料として、対象地域で活用されるよう、こども環境学会が働きかけていく予定。
 9月25日には受賞記念講演会が開かれ、作品展は建築会館内の建築博物館で今月2日まで開催された。作品展は今後、被災3県内を順次巡って開かれる。
復興プラン・コンペの受賞者たち。後列左端が石原准教授
復興プラン・コンペの受賞者たち。後列左端が石原准教授
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