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2010.10.15

新井研・中小企業中央会がシンポジウム


農商工連携&地域おこし
渡邉英彦・富士宮やきそば学会会長 司会する新井教授(左)
渡邉英彦・富士宮やきそば学会会長 司会する新井教授(左)
 地域経済の発展のため農林漁業と商工業などの「農商工連携」ビジネスモデル構築が求められている。そのモデルを構築できる人材育成事業の一環として、9月4日、津田沼キャンパス4号館で全国中小企業団体中央会(全国中央会)補助事業公開シンポジウムが開かれた。
B級グルメ講演「オヤジギャグの効用」で爆笑
 同事業に取り組む全国中央会の公募に対して、本学が今年度の研修実施機関に採択され(担当=プロジェクトマネジメント学科・新井潔教授)、事業期間(8月〜11月)中の講義研修として催された。
 公開シンポの前半は、渡邉英彦・富士宮やきそば学会会長による「富士宮やきそばB級グルメによるまちづくり・地域おこし」と題する基調講演。後半は新井教授の司会で「農商工連携実現のポイント」をテーマに麻生恵・千葉県商工労働部参事(兼)経済政策課長ら6人によるパネルディスカッションが行われた。
 特に講義室が沸いたのは基調講演。「B―1グランプリ」が来場者43万人強を集めるなどB級ご当地グルメは今やブームだが、渡邉氏は行政予算ゼロからスタートして全国ブランド化に成功、この9年間で430億円の経済効果をもたらしたという「富士宮やきそば」の秘訣を説明した。
 講演の中で同氏はオヤジギャグの情報伝播力を強調。たとえば、「食べ比べイベント」は「三国同麺」、「調査員」は「G麺」、バス旅行は「ヤ・キ・ソ・バ・ス・ツ・ア・ー」などというネーミング。その面白さ、楽しさ、怪しさがメディアの話題を呼び大量露出につながったと語った。
 なお、シンポの受講者募集ポスター=写真=はデザイン科学科4年(赤澤研究室)の根本大輔君が作成。富士宮の焼きそばがダイナミックに描かれ、シンプルながら印象に残る仕上がりとなっている。
全国中小企業団体中央会補助事業公開シンポジウム

進む「創造的人材開発」


発表シンポジウム開く
―社会システム科学部―
研究発表シンポジウムの様子
研究発表シンポジウムの様子
 文部科学省の「学術高度化推進事業・社会連携採択プロジェクト」に選定されている本学社会システム科学部の「地域産業における創造的人材育成プログラム開発」の研究発表シンポジウムが9月8日、津田沼校舎7号館で開かれた。
 経営情報科学科の大田勉教授の司会進行で行われた第1部のシンポジウムには約60人が参加。冒頭、プロジェクト責任者である同学科の佐野利男教授が「このプロジェクトの目的は地元企業の持っている人材の創造力育成にあり、創造力を技能の一つとして身につけさせるためのプログラム開発にある」と解説した。
 具体的には、2007年4月に習志野商工会議所、地元企業17社との共同研究をスタートさせ、本学教員らを交えたワーキンググループを立ち上げて、月1回のペースで研究を行っており、今回はその成果の中間発表だと説明した。
 続いて日本教育大学院大学教授で創造開発研究所所長の高橋誠氏が「創造人材の育成―創造には法則がある」と題して特別講演。「創造とは課題を把握し、異質な情報を結合、統合して社会や個人にとって新価値を生むこと」と指摘。
 さらにはプロジェクト専門研究員の小野修一郎氏が中間成果物であるテキスト「創造の方程式」をベースに作成したビデオ映像について説明し、参加者に創造力のチェックテストを試みた。

王教授がテーマ講演


産学官フォーラム 千葉エリア
本学から多数の成果を提供
講演する王教授
講演する王教授
 大学など千葉エリアの研究機関で生み出された学術研究成果や事業活動を企業、地域社会に広く公開して新技術の開発や新規事業の育成に役立ててもらう「千葉エリア産学官連携オープンフォーラム2010〜未来を創る 千葉の新時代へ〜」が9月14日、千葉大学で開かれ、本学からも数多くの研究成果が展示などで提供された。
 研究シーズ展示会ではパネル展示やデモンストレーションにより、研究紹介を行った。本学は12件の研究を出展し、企業や他機関の参加者からの質問や相談に応じた。
 特定テーマ講演では本学未来ロボティクス学科の王志東教授が「人間社会へのチャレンジ―人間・ロボット協調システムの研究開発―」と題して講演した。
 王教授は、ロボットが人間社会で活躍するためには、人間と協調し人間の意図に従って作業できることが重要だと指摘。高齢者用装着型歩行支援ディバイスなどの研究開発事例を示して注目を浴びた。

活躍する校友


“超エコ”で3割節約
自然対流暖房システムを開発
建築設計事務所代表
天谷 一男(あまや かずお)氏(57歳)
(昭和51年、建築学科卒業)
天谷 一男氏
子どものころから模型づくりが好きだったという天谷さん。後輩たちの成長を期待している
 秋の訪れの早い北海道。雪や寒さと共存しつつ、いかに快適に暮らすか。家づくりをになう建築家の知恵と腕にかかっているが、「自然対流式暖房換気システム」を共同開発し、特許権をもつ本学建築学科卒の拓建築設計事務所代表、天谷一男さん=1級建築士=は、いま業界注目のひとりである。
 夏涼しく、冬温か・・・・・・これは住まいの理想。気密性、断熱性をぐんぐんアップしてきた近代住宅の課題でもある。ただし、ネックはとくに冬季の結露とカビだ。外気と室温、家屋内でも暖房ルームと非暖房ルーム間の温度差によって生じる。防ぐには全館暖房がうってつけ。北大、北海道立北方建築総合研究所との産学官連携により、天谷さんがこぎつけたのが、この換気システムである。
 外気をいったん床下へ取り入れ、暖房器に通して室内へ送り出す。暖気は上昇し、一部は天井の排気塔から外へ抜ける。しかし、大部分は家の中を秒速10〜30pで自然循環し、全体を温めていく。換気と暖房を同時にこなす。まるで“息づく建物”だ。昨年、天谷さんの名義で特許を取った。
 「この方式の家は全道で今100棟ほどある。暖房光熱費は2〜3割カットできる。これに太陽光発電、床下蓄熱式暖房を組み合わせたら、8割まで縮減可能な超エコ住宅ですよ」。札幌市内のオフィスで図を描きながら、ていねいに説明してくれた。
 道の職員だった父親の転勤で道内各地を歩いた。釧路市内の高校を卒業し、本学へ。「子どものころから模型づくりが好きだったのと、授業料が安かったので建築の世界に入った」と笑う。
 サークルは「建築研究会」で、飲み会、マージャンの日々だったとか。建築でも意匠系で、構造は苦手だったらしい。「構造系単位の一部は4年に、それも追試でパスした。試験監督の助手が教室を回りながら、答案用紙の脇の机をコツコツたたくんです。『ほら、違っているゾ』というサインです。助かりました。でも、このころの友だちは一生ものですね」。おおらかな時代だった。
 卒業と同時に都内の建築設計事務所へ。戸建て、集合住宅、店舗の設計・監理、なかでも病院設計をたくさんこなした。10億円、15億円という大きなプロジェクトである。仕事はハードだ。体調を崩してしまい、“里帰り”を決意し、83年に今の事務所を開いた。なんでも設計できると思い込んで。
 「ところが木造家屋ひとつまともに建てられないと分かり、がく然とした。鉄筋構造とはまったく違う。これはいかんと、工業高校(建築科)の教科書を買い、一から勉強し直しました」。そう言いながら、書架から2冊の本を取り出した。慢心への“いましめのテキスト”でもあるようだ。
 「現場で建てるのは大工さん。話をし、指示はするが、うまく動いてもらえない。私の未熟さゆえですが、2割くらいしか思うようになりませんでしたね」
 その傍ら、北海道電力総合研究所との換気システム共同実証研究に加わり、いわば雌伏の時を過ごした。「仕事が趣味みたいなものですから」。ほぼ10年の歳月が流れ、2年ほど前から日経新聞や業界紙に紹介され、花開き始めた。「施主に『温かい家を造ってくれてありがとう』と感謝される。それはだめ。『寒くも暑くもなく、普通に生活できる』というのが建築家への最高のほめ言葉ですよ」と謙虚だ。
 換気システムは夏も効果がある。夜に冷気を取り込んで滞留させ、昼に循環させる。「寒冷地だけでなく、全国どこへでも活用できる画期的な技術です」と気を吐く。
 システムの話に及ぶと、どうにも止まらない。学者や研究者が自分の専門領域について喜々として語るのと似たおもむきである。
 そして、「自分の愛せる分野を探りあて、続けられる人になってほしい」と後輩たちの成長を期待している。