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2008.1.15

FD強化・JABEE導入で「教育力」の向上目指す


本岡学長 新年の抱負語る
 新年おめでとうございます。少子化による18歳人口の減少で全入時代に入った大学は、学生を選ぶ立場から選ばれる立場に変わりました。その中で本学は、魅力溢れる大学づくりに向け、さまざまな努力を重ねてきました。本年は特に、津田沼・芝園の両キャンパスに新たな校舎の建設が予定されており、本学にとって節目となる年であります。本年を一層の飛躍の年とするため、本学がどのような方向に向かうべきか、年頭にあたり、本岡誠一学長に教育・研究面から抱負を伺いました。
(入試広報部)
新しい年への抱負を語る本岡誠一学長
新しい年への抱負を語る本岡誠一学長
教養科目や専門基礎教育を充実
 ―就任4年目を迎える今の心境はいかがですか。
 学長 教職員ならびに学生のみなさま、明けましておめでとうございます。今年も、みなさまにとって実り多き一年となりますよう祈念致します。
 私はこの4年間、建学の精神である「師弟同行・自学自律」の具現化に力を入れてきました。学生の多様化が進む中、現在の社会は、問題解決能力のある創造性に富む人材や、人と人のコミュニケーションの輪に加われるような教養と人間性を兼ね備えた人材を求めています。
 現代は、一個人の力で素晴らしい発明を行い、すべてのプロジェクトを一人でこなせるような時代ではありません。そのため機械や電子といった専門知識だけでなく、他分野との有機的な連携が重要となっています。
 ―具体的には何が必要ですか。
 学長 学部にしろ大学院にしろ、大学で学ぶ期間は限られています。すべての知識を身に付けられるほど長い期間ではありません。重要なのは、社会人となり、課題の解決に行き詰まった時、大学時代に教わったことや講義で使用した本を紐解けば打開のヒントが見つかると気づくことです。そのためには、しっかりとした教養基礎教育に裏打ちされた教養の深さが必要となります。このため本学では教養科目や専門基礎教育の充実に努めてきました。
 ―成果はいかがですか。
 学長 教育はすぐに結果が出るものではありません。しかし、基礎教科については、当初その成果を危惧していましたが、学生の満足度調査を見て、1年生から概ね良い評価を得ていることが分かりました。数学にしろ物理にしろ、問題が解ければうれしく感じると同時に、そのことが知的好奇心の増進につながっていきますから。
建学の精神を教育の場に反映
 ―教育や研究の質を高めていくため、今後どのようにお考えですか。
 学長 本学は教員が授業内容などを改善するFDに取り組んできました。本年は、若手教員はさらに研究に精力を注ぎ、留学などの自己研さんを通じて学生をリードしてほしいと思っています。また、ベテランの教員は、研究の場では指導者として活躍していただくとともに、教育の場では豊富なスキルを大いに発揮して学生の指導に取り組んでいただければと考えております。
 そのため、論文至上主義から脱却し、教育力を教員評価(昇格)に加味していくべきだと考えております。今後、FDを教育評価に反映させる仕組みづくりを進めていきたい。
 ―FDと関連しますが、今年は7年に一度の第三者評価を受ける年です。
 学長 その通りです。第三者評価は、いわば本学に対する全体評価と言えるもので、「教育理念や教育目標を実現する教育システムが確実に機能し、それらをPDCAサイクルとして改善する全学的な仕組みがあるか」が問われます。従って、建学の精神を教育・研究の場に反映させるため、FDの強化、専門を含めた教育環境の更なる向上や様々な改善を速やかに実施する必要があります。一方、JABEE(日本技術者教育認定機構)は第三者評価における学科ごとの個別評価にあたるものと考えられ、世界的に認められた技術者教育認定制度です。JABEEに取り組むことは、全学的な教育システムの質の改善につながるため、全学科へJABEE制度を導入する必要があると考えております。
 大学を取り巻く環境は年々厳しくなり、激しく変化し続けております。他大学との差別化を図る意味でも本学の「教育力」をますます高めていく必要があります。
学生は、失敗を恐れず、自分で考え行動を
 ―ところで、2005年に本学OBを中心に「千葉工業大学技術士会」ができましたね。
 学長 本学の学内外の情報発信・受信の一元化、研究の活性化、技術相談、研究成果の企業化(TLO)を目的として、2005年10月に産官学融合センターを立ち上げました。その中で、本学OBで組織する千葉工業大学技術士会は、本学の研究成果を地域社会に還元させるためのコーディネート役として、また、本学の学生に対する技術士の啓蒙活動などの諸活動を通して、本学の社会貢献に対する支援をしていただいております。このような活動が、昨年本学が立ち上げたベンチャー企業「株式会社移動ロボット研究所」のように地域貢献可能な大学づくりにもつながっているのです。
 ―今年はキャンパスの雰囲気も変わりますね。
 学長 芝園は4月、津田沼も9月にそれぞれ新校舎の供用が開始されます。よりよい環境の中で、しっかりとした教養、専門、基礎教育を身につけてほしいと思います。そのためには、新入生に対して、早い時期から入学した学科の内容に触れさせ、知的好奇心を喚起させる必要があります。本学では新入生を少人数(10数名)に分けて専門の全教員が担当し、師弟同行による動機付け教育を実施しております。この動機付け教育を通して、創造性豊かな人材に育ってほしいと願っています。
 学生は指示待ち人間にならないで、失敗を恐れず、自分で考えて行動できる21世紀型の自律した人材を目指してもらいたい。目に輝きを持ち、活力ある学生で溢れるような素晴らしいキャンパスとすべく、今後も頑張っていきたいと考えております。

本岡学長 千葉政経懇話会例会で講演――


「建学の精神」に基づく人材育成が使命
千葉政経懇話会で講演する本岡学長
千葉政経懇話会で講演する本岡学長
 本学の本岡誠一学長が昨年11月28日(水)に千葉市中央区の三井ガーデンホテルで開かれた千葉政経懇話会11月例会で「千葉工業大学の教育・研究と地域貢献への取組み」のテーマで講演した。
 本岡学長は、はじめに本学の沿革と、いま大学が直面している『全入時代』の厳しい現状について説明した。次いで本学の教育方針に触れ、「師弟同行」「自学自律」の建学の精神に基づき、しっかりした基礎学力を持ち、自分で考え行動できる人材を育成することが使命であると語った。
 このほか、学生志向で行っている教育改革や研究活動について紹介した。また社会貢献については、産官学融合センターを中心に行っている公開講座や受託研究、本学技術士会による技術シーズの社会移転などを説明。最後に「本学は旧制大学から続く、日本で最も伝統ある私立の工業大学である。21世紀の人材育成にも建学の精神が生きていることが誇り」と結んだ。