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2007.8・9合併号

新型移動ロボット HallucII完成


[ 記者発表 ] 車・昆虫・動物…に変幻自在
新型移動ロボット「ハルク・ツー」
新型移動ロボット「ハルク・ツー」
 8つの脚・輪が自在に動き、車、昆虫、動物の姿で歩き、走る――新型ロボット「ハルク・ツー(HallucII)」が完成、7月25日、本学津田沼キャンパス5号館で記者発表が行われた。本学未来ロボット技術研究センター(fuRo)が共同開発した超多モーターシステムを搭載した高精度・ハイパワーの新型移動ロボットで、“未来”への可能性がまた一つ開けた。
山中代表 古田所長
山中代表 古田所長
 fuRoの開発相手は「リーディング・エッジ・デザイン(L.E.D.)=山中俊治代表」。ヒューマノイドと車の融合ロボット「ハルキゲニア01」プロジェクトに共同で取り組んできた。
 名前から分かるように「ハルク・ツー」はこの“先輩”をさらに進化させたもので、多関節ホイール(車輪)モジュールを8脚装備した移動ロボット。新規開発された超多モーターシステムを搭載しており、脚・車輪ロボットとしては最多クラスの56個のモーターを装着。環境に応じてビークル(車両)モード、インセクト(昆虫)モード、そしてアニマル(動物)モードと3形態に変化する。
 車として前後左右に自在に動き回る姿はハルキゲニアと同じだが、デコボコ道なら昆虫となり脚を出してぽこぽこ歩く。狭い所は動物として身をすぼめて歩く。段差も車体を水平に維持したまま動ける。走行と歩行を随時切り替えることで、従来にない高い移動能力を実現した。
 会見では、fuRoの古田貴之所長がハルク・ツーの特徴を説明。また山中代表は「渋滞などに対応する車の開発は行き詰まっている。ロボット技術を車に応用したい」と語った。
 デモンストレーションでは、80人を超すマスコミ関係者の前で、さまざまな性能を披露した。
 車両モードでは、(1)直進・旋回(2)その場で高速回転(3)真横に走行(4)2次元自在走行(遊園地のコーヒーカップ型乗り物)(5)段差や坂道の水平走行(6)脚と車輪の半々走行や脚を使った物運びなど。昆虫モードでは、速歩も披露。また、動物モードでは“体を丸めて”歩いた。
 従来の車はパワーを車輪に振り分けているが、ハルキゲニアは32個のモーターを協調作動させている。今回のハルク・ツーではそれが56個になる超多モーターシステムを開発、車体を上下させるリフティング用関節のすべてがダブルモーターとなっている。このシステムによって関節駆動はパワフルに、また、ギアのバックラッシュはゼロになり、回転や反転動作もスピーディーになった。
 ハルク・ツーは全長805ミリ、重量20キログラム。車体下向き、横向きに距離センサー13個、全周囲障害物検出用のレーザー測域センサー2個、車体姿勢検出用の3軸姿勢センサー1個を装備している。
 fuRoでは、ハルク・ツーの開発理由として、自然破壊を伴う舗装道路なしで移動できる「環境と共存できる未来の乗り物」を挙げる。さらに、コンピューターやセンサーなどが安価になり多モーター、多センサーを利用したロボットが実現しやすくなるという産業的背景も想定している。
 当面は、救急車、レスキューなど特殊車両、物流用や福祉車両への応用を視野に入れている。
日本科学未来館で公開、操縦体験も
記者発表で自在の動きを披露するハルク・ツー
記者発表で自在の動きを披露するハルク・ツー
 なお、ハルク・ツーは8月1日から東京江東区の日本科学未来館で一般公開されている。その操作は、fuRoとL.E.D.が共同開発したロボット操縦システム「ハル(Hull)」で行われる。
 ハルは、人とロボットの一体化を目指し、さまざまなロボットを一つの装置で簡単に操縦することができる「コックピット」。一般の人も利用できる。

小学生にロボット操縦体験 [ 現代産業科学館 ]


本学から二足歩行ロボ「マキナ」が参加
“夏休み体験学習”で二足歩行ロボットの操縦体験に集まった子供たち
“夏休み体験学習”で二足歩行ロボットの操縦体験に集まった子供たち
 小学生を対象とした“夏休み体験学習”が現代産業科学館(千葉県市川市)で開かれ、企業や研究所、大学などが協力した。本学からは8月7日、総合工学研究会が「二足歩行ロボット操縦体験」と題して参加した。
 操縦体験は、同館入り口近くのエントランスホールに設けられた会場で行われ、入場者の注目を集めた。予約した40人が午前と午後の部に分かれてロボットの操縦を楽しみ、子供たちは、リモコンでロボットを前後左右に歩かせたり、キックさせたりと、そのパワフルな動きに歓声を上げていた。当日の見学者の中には、飛び入りで操縦したいという親子連れもたくさんいて、人気の高さは関係者を喜ばせた。
 操縦体験には総合工学研究会が製作した全身アルミ製のロボット「マキナ」が使用された。高さ31センチ、重さ約2キログラム、強力なサーボモータ21個が組み込まれている。
 操縦の指導は、同研究会部長の前田尚泰君(機械サイエンス学科3年)、松丸伸之君(同)、平野正光君(同)の3人が担当した。

ロボカップ世界大会の活躍を披露


― マナビゲート2007 ―
サッカーロボットの仕組みについて説明を聞く来場者
サッカーロボットの仕組みについて説明を聞く来場者
 子供たちに大学が持つ最先端の知的資源を公開し、『学びの楽しさ』を育むことを目的とした「マナビゲート2007」(NPO法人・学びの支援コンソーシアム主催)が、8月18日、19日の2日間、東京国際フォーラム(千代田区丸の内)で開催された。
 この催しには26の大学や団体が参加、本学も工学部未来ロボティクス学科の教員と学生たちが、「最先端のサッカーロボット“パフォーマンス・ロボット”のワールドカップをのぞいてみよう」のテーマでアピール。今年7月に米国で開催されたロボカップ世界大会で活躍した人型サッカーロボットを出展した。ロボットがゴールに向かってシュートしたり、ゴールキーパーとなったロボットがファインセーブする場面を見て感嘆する子供たちも多く見られた。