第1回お役立ちロボットコンテスト
2位と3位に本学チーム −現代GP−
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床に描いた線をセンサーが探知して動く 自動化車いす |
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中嶋准教授 |
地域と連携してロボット産業を創りだそう――日本初の人間が乗った自動化車いすのロボットコンテストと、産業創発を探るシンポジウムが3月21日、本学芝園校舎で開かれ、朝9時から午後6時まで熱気の一日となった。
産業創発探るシンポも開催
2つのイベントは本学現代GPのロボット産業創発プロジェクトから生まれた現代ロボットグランプリ実行委員会が主催、習志野市商工会議所、日本感性工学会などが共催した。
高齢化社会の中で医療・福祉・介護の分野の深刻な人手不足が進み、同時に、過重労働を軽減したいという要請も高まっている。第一回現代ロボットグランプリ「お役立ちろぼっとコンテスト」の目的は、こうした状況に対処する方策の一つとして、移動困難な人の自律移動を補助する車いすを実現することにある。
コンテストには本学の学科、研究室、サークルからの8チームはじめ、企業や長野の大学、宮城の専門学校、千葉県内の高校からの14チームが参加した。
本学からの5チームは「現代GPものづくり実践講座」のメンバーで、未来ロボティクス学科をはじめ経営情報科学科、情報工学科、機械サイエンス学科の学生に市川工業高校の生徒を加えた31人を本プロジェクトを主催する未来ロボティクス学科中嶋秀朗講師(現准教授)、fuRo大和秀彰研究員が指導し、昨年4月以降、ロボット製作だけでなく、コンテストの企画・準備に取り組んできた。
車いすの実用化を前提に、(1)ロボコンとして初めての人間搭乗型(2)初の「乗り心地」追求(3)現実に近い模擬病院環境を競技のフィールドにしたことがコンテストの特徴。
競技は通常使われる手動車いすに制御装置を付けて自動化、会場に引かれた複数色のラインをセンサーで色判別及びトレースしながら走る。トレースの正確さやタイム、乗り心地、技術プレゼンテーションなどを総合して得点で評価する。予選では審査員が車いすに乗って採点。本戦には企業1、本学4の5チームが進出した。
本戦は、スタート時にくじで決める色と同色のライン上を走る。途中で医師にカルテを渡すため向きを変えて寄り道をする。もちろんすべて自動だ。ラインは直角や半円形など難所が多い。
プログラムの不備や機械の不具合などで、途中手動に切り替えるチームも出たが、完全自動で走りきったチームもあり、全参加者に盛大な拍手が送られた。
表彰式の講評で審査員の一人、中野栄二未来ロボティクス学科長は「会場は太陽光や照明、床色など現実に近い難しい環境だった。多様な環境に対応する手がかりができた」と健闘を称えた。
また、審査員とアカデミック・アドバイザーを務めた同学科の富山健教授は「実用化が近いという感じを得た」と述べた。審査結果は上表の通り。
ロボット技術生かした地域からの産業起こし
−パネリストが研究報告−
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ロボットと人間の共生について発表する富山教授 |
コンテストに続きシンポジウム「ロボット産業の創発に向けて」が開かれた。本学の現代GPは「地域にどう貢献できるか」をうたっているが、4人のパネリストは、ロボット技術を通じた地域からの産業おこしの可能性を探った。
まず、現代ロボットグランプリ実行委員長を務めた中嶋講師が「ロボット技術及びロボット産業創発プロジェクト紹介」と題して、本学のロボット研究と具体的成果を披露し、地域の産学連携を呼びかけた。
次に小出ロール鐵工所嘱託・白石勝紀氏が「弊社と習志野ベンチャーNETSの紹介〜ロボット活用計画の事例紹介〜」と題し、本学から毎年インターンシップの学生を受け入れ、大学のテキストも使って理論と実践を体験させていることを紹介。
3番手は千葉県産業支援技術研究所・石井源一氏が「ロボット研究を通じた千葉県の産学官連携推進」と題して、同県の新産業振興戦略を説明。ロボットを有望な産業分野と位置づけ、県内大学と共同研究を進め「企業・大学・社会の三方得」を目指すと語った。
続いて、本学の富山健教授が「感性ロボティクスと擬似感性」と題してロボットと人間の共生について発表。超高齢化社会の到来で福祉に対する工学的アプローチは進んでいるが、被介護者の物理的・身体的支援を行う機器が中心で、心身状態の把握や精神的なケアの面は未達成だ。今後は「被介護者とコミュニケーションをとる」と同時に「介護者を支援する」ロボットが必要で、人間の感性的な振る舞いを読み取り、行動するため「擬似感性」を持たなければならないと説明した。すでに学生らと試作機を製作している。