2005.6.15

3面

木村君、国際カーデザイン・コンペティション2005で優秀賞
 
 
未来の人とクルマ、都市環境との関係を提案
 

 大学院デザイン科学専攻2年の木村友紀君(長尾・松崎研究室)が、先頃開かれた「CAR STYLING国際カーデザイン・コンペティション2005」で優秀賞(学生の部)を受賞した。
 このコンペは、自動車デザイン専門誌の「CAR STYLING」誌が毎年開催し、今年は将来の社会、道路利用等を想定し、乗り物としての使われ方やシステムも含めた提案に主眼がおかれ、今回の課題は「X年後の道路利用トランスポーティーション」だった。
 木村君の作品は「Park in Ride」。将来の人とクルマ、都市環境との新しい関係を示したもので、ステーション(鉄道)とトランスポーティーションとをリンクさせたシステムとその車両デザインとして提案した。燃料電池を動力源とするこのコミューターは、車いすでの乗降、操作が可能で、エレベーター等にも乗り込めるくらいコンパクトにデザインされている。
 このシステムは、コミューターごとステーションに進入でき、鉄道での移動も可能。さらにスティーション内には燃料電池スタンドや銀行などで一つの都市を形成することにより、障害者にも優しい街づくり、公共機関との融合にフォーカスした提案になっている。スタイリングコンセプトは、外側の車両と内側の車いすを「靴と靴下の関係」として捉え、車いす利用にフィットしたレイアウトで、三角形をモチーフしたフォルムは車いす乗員を優しく包み込むハーフカウル風のデザイン。
 木村君は「元々は修士課程の研究として井村五郎先生から提供してくださったテーマでした。昨年はモデル製作で大変でしたが念願の入賞を果たすことができました」と受賞の喜びを語った。


▲作品のコミューターを前にして受賞の喜びを語る木村友紀君
 
 
ノーベル化学賞受賞(1989年)――
アルトマン氏が本学で講演
 
 
学生や教員、企業から120人聴講
 
 千葉工業大学主催、文部科学省私立大学ハイテク・リサーチ・センター整備事業など協賛の「特別セミナー」が、5月19日(木)、本学津田沼校舎で開催され、ノーベル化学賞受賞者のエール大学学長S・アルトマン氏が講演した。
 アルトマン氏は、tRNA前駆体から成熟tRNAをつくるリボヌクレアーゼPを分離した。そしてこのリボヌクリアーゼPのRNA成分のみでもtRNA前駆体から成熟tRNAをつくることができるという発見で1989年にノーベル賞を受賞している。
 今回の来日は3度目で、ジーンデリバリィーシンポジウムでの後援で来日した。本学の高久洋教授(生命環境科学科)と数年前からリボヌクレアーゼPを応用した遺伝子治療の関係で、同じ分野の研究を進めていることから、互いに情報交換をしながらこの分野の研究を行っている。また、今回の来日でリボヌクレアーゼPによるインフルエンザ、エイズ治療の共同研究を進めることになっている。
 「リボヌクアーゼP:構造と機能」と題した講演では、リボヌクレアーゼPによる標的RNAの切断に要求される構造とその切断能の解析について解説をするとともに、遺伝子治療への応用についても述べた。そして最後に、現在もっとも有効な手段として遺伝子治療に用いられるRNA干渉法と比較したところ、速度論的にもリボヌクレアーゼPの手法が優れていることを証明したと述べた。
 当日は、生命環境科学科や他大学の学生たち、教員や企業からの参加も含め約120人が聴講した。講演後の懇親会では、流暢な英語で質問する学生や、教員の通訳を交えて質問する学生たちで賑わい、めったにない機会に感激した様子だった。
 
▲講演するアルトマン氏
 
S.アルトマン氏の略歴
 1939年、カナダのケベック州モントリオール生まれ。1960年にマサチューセッツ工科大学卒業、1967年コロラド大学で博士号取得。ハーバード大学などで研究後、エール大学助教授(1971)、同准教授(1980)、同学部長、(1983)、エール・カレッジ学長(1989)。
<(株)名鑑社「ノーベル賞名鑑」より>

▲アルトマン氏の講演を傾聴する参加者
 
 
 
研究室ナビ(4) 生命環境科学科 高久研究室
 
 
“RNA干渉”で感染症を治療
「細胞機能とその制御の新展開」
エイズ研究は世界のトップクラス
 
津田沼校舎の金属・化学実験室2階の研究室に生命環境科学科の高久洋教授を訪ねた。
 高久教授は、ハイテク・リサーチ・センター整備事業のリーダーとして、「細胞機能とその制御の新展開」を研究し、この研究プロジェクトは文部科学省から平成16、17年度の研究補助金を受けている。また、平成17年度厚生労働科学研究費補助金(エイズ対策研究事業)のリーダーとして、「薬剤耐性ウイルス株の出現を制御する新規医薬品の開発」を受けている。
 高久教授の研究は、いま感染症とがん治療が主体。具体的にはエイズ、C型肝炎、インフルエンザ、がん(肺がんと肝臓がんが主体)の治療の研究。やり方は『RNA(リボ核酸)干渉』法を利用してエイズとか肝炎ウイルス遺伝子の発現を制御することで感染症の治療を行うというもの。
 
▲高久研では、研究員、院生、学部学生が総勢40人学んでいる(中央が高久教授)
 「本年度よりRNA機能の解析が国策のトップに立っています。RNA機能の中でもRNAiはショウジョウバエ、動物などさまざまな生物に保存された機構であることが示され、遺伝子ノックアウト法として簡便でかつ有効な手法です。このRNAiはScienceの2002年の最も優れた研究分野のbPに選ばれ、世界中の話題になったのです。我々のグループの場合は特にエイズの研究を中心に進んでいて、米国のグールプとの競争です」と説明する。「また、C型肝炎も我々のグループは日本の研究グループと共同でやっています。それから、もう一つは免疫です。体の中の免疫を利用してやろう…と。一つは外来物質として昆虫バキュロウイルスを利用することを考えました。バキュロウイルスは動物細胞には感染するけれどもウイルス自身が増殖しないので安全なのです。この原因は昆虫と人とは遺伝子を発現するためのプロモータが異なるため増殖することはない。そこでバキュロウイルスを感染させるとバキュロを異物と認識し、生体は防御しようという機能を発揮、免疫機能を高めて、ウイルス感染などを防ぐ働きをすることが分かった。がんに対しても細胞性免疫が誘導されてがんが攻撃され、薬を飲まなくても自然に体の中にあるものを利用して直してあげるという訳です」と語る。
 実際にマウスで肝臓がんをつくった実験では、完全に肝臓がんが治っていて、インフルエンザのワクチンとしても効力が出ている。

▲『ものごとは、考えてやること』と語る高久洋教授
   高久教授は「ただ、バキュロウイルスによる免疫治療は当研究グループが主体で、他の研究機関ではやっていません」と語る。「この発想はどこから生まれるのですか?」の質問には、「難しいですね。やはり、発想は偶然が重なり合った場合が多いです」と答える。
 「薬と言うのはいろいろ問題があって、生体の中に入れて、標的のがんの組織の細胞の中に誘導してやらないといけない。その運ぶシステムの開発が大事で、それが治療の成功の鍵となる場合もあります。いま、ペットに対しての免疫治療の実験を考えています。産学連携は、あるベンチャー(大学の獣医学部やペット産業)を組むところまで話しは進んでいます」と実態を説明する。
 現在、研究室には院生は修士課程が12人、博士課程が2人、博士研究員が5人、学部学生21人の計40人が学んでいる。「最近の学生は、面白みが分かるまで時間が掛かるのが大変。特に生物というのは、目に見えないことをやるわけですから、理解するまで時間が掛かります」と教える難しさを語る。
 座右の銘は、『ものごとは、考えてやること』。「いまの学生は考えても動かないタイプが多い。一方では、学部で成績がよくなくても、大学院で伸びる学生がいます。彼らはもともと能力があったのだと思います。だから、いかに興味を持たせて伸ばしてやるか、それに学生同士の競争意識を持たせるのも大切です」と。高久研究室からは、すでに約500人の卒業生が社会に巣立っている。
 
 
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