2005.4.15

3面
 
平成17年度入学式
 
 
豊田耕作理事長祝辞<原勇記常務理事代読>
「ものづくり」通じ技術と理論学ぼう
 

 新入生諸君、ご入学おめでとう。ご列席のご父母の皆様、心からお慶び申し上げます。
 さて、この21世紀は「知識基盤社会」であるといわれて、知識への要求が大変強い時代であります。そしてすでに21世紀も2005年という年を迎え、科学・工学の技術はめまぐるしいほどの進展を続けていますことは、すでに皆様方よくご存知の通りであります。
 ここで私は、諸君が入学されました千葉工業大学の沿革について一言ご説明申し上げたいと思います。
 
 
 本学の創立は、先の第2次世界大戦のさなか1942年(昭和17年)であります。このときに国家の命運を担う優れた工学技術者を養成するため「興亜工業大学」という名前のもとに設立されたものであります。この「興亜」という名称からもお判り頂けるように、日本の国策に沿って創立されたものであり、単なる私立工業大学ではなくて、国立大学に準じて国家の期待が、大変大きなものがあったのであります。
 現在のわが国で、創立当初から旧制大学という形で設立されました工業大学は本学のみであります。そして本年で創立63年目を迎えます。これまでに諸君の先輩にあたる卒業生およそ6万余名が、企業の第一線で活躍し、社会から高い評価を受け、日本の経済成長を支えてきております。本日ご入学の諸君も、これら先輩に続くことを願って止みません。
 さて、本学でここ数年の間に催してきた記念すべきプロジェクトをいくつか拾って見たいと思います。去る2002年(平成14年)でありますが、暮れの12月14日、種子島宇宙センターから打ち上げが成功したHIIAロケットに本学の小型衛星、愛称「観太くん」が搭載されまして、予定の軌道に乗りました。今日も私たちの頭上8千キロメートルの上空を1日14〜15回という回数で飛び続けております。そして、小型衛星「観太くん」の状況は津田沼キャンパスの7号館の屋上にある巨大なパラボラ・アンテナで時々刻々追跡をして、その状況を把握しております。
 このプロジェクトの最終目的は「クジラに発信機」を取り付けるということであります。このクジラに発信機を取りつける作業が困難を極めており、未だ成功していないことが大変残念であります。しかしこれが成功すれば、永い古(いにしえ)から神秘のベールに包まれたクジラの生態が解明されることになりますので、1日も早くクジラに発信機を取り付けることに成功してほしいと関係者一同、首を長くして期待しているところであります。
 次に2003年(平成15年)6月に「未来ロボット技術研究センター」(fuRo)を本学の中に設立したことであります。今日、世界の技術の大きな潮流の一つがロボット技術という世界でありまして、将来の工学技術の一翼を担う大きな分野になるであろうと考えております。このセンターでは2本足で歩くロボットとしては最先端の性能を誇る「モルフ3」型ロボットがありまして、これは階段の昇り降りはもちろん、太極拳もやってくれるという優れものであります。
 さて、これに続きまして、次の世代の夢の自動車を予感させるような8輪タイヤの「ハルキゲニア01」も公表し、大変な評判を呼んでおります。このロボットの技術を何とかして教育の場に持ち込みたいということを目下、学長を含めて検討をしているところであります。
 更には、同年11月、格付会社により「AA−(マイナス)」の格付けが与えられました。これは本学が将来に向かって発展する大きな潜在能力、ポテンシャルが高いことが、証明されたものと考えております。
 本学では「ものづくり」を通して工学技術を肌で感じながら理論を勉強する、そういう姿勢を大切にして、その一環として授業時間外でありますが、希望のものづくりを行うという「ものづくり・ベンチャー・プロジェクト」の学内募集を行なっております。
 以上のように社会に対して本学をアピールするとともに、先ほど学長の式辞にもありました「基礎学力」をしっかり身につけてこそ、社会へ出てからいろいろな事象に対面したとき、応用力が発揮されることになることは論をまちません。
 最後に諸君は、厳しい入学試験を突破して、本日ここに入学の栄誉を掴まれたのでありますから、目標をしっかり立てて勉学に励み、多くの友人と出会って切磋琢磨して立派な技術者として育ってください。毎日を悔いのない充実した時間を持つよう、そして将来、世界に羽ばたく技術者になる基礎づくりをされることを願って、本日の祝辞といたします。
 ご入学おめでとう。
 
 

研究室ナビ(2)
機械サイエンス学科 茂木研究室

金属凝固のメカニズム解明
『セミソリッド鋳造法』を開発
車などの軽量化で地球温暖化抑制に貢献
 


▲「私一人ではグランプリはとても・・・」と語る茂木徹一教授
   津田沼校舎1号館1階にあるのが、機械サイエンス学科の茂木徹一(もてぎてついち)教授の研究室と実験室だ。
 茂木教授は、昨年9月に開催された「大学・研究室の『知』の見本市、新産業創造 イノベーション・ジャパン2004」の製造技術分野で「セミソリッド鋳造法の研究(マグネシウム合金およびアルミニウム合金の新しい半溶融鋳造法)」で「UBSイノベーションアワード」のグランプリ『UBS賞』に輝いた。このイノベーションアワードには、全国の232大学の研究者や民間企業が参加した中での受賞だった。
 この研究は、簡単に言うと、金属の材料を加工する場合の一つとしての鋳造、すなわち鋳物をつくる研究。茂木教授の説明では「溶けた金属の固まり方が良い製品ができるかどうかのキーポイント。最初はどうやって固まるかの凝固のメカニズムを研究しました」。
 これをもとにして「私が考えたのは、例えば一部は固まった“おかゆ状態”にする。ブツブツが固体、周りのドロドロしたのが液体とすると、この状態でも金属はよく流れることが分かり、『セミソリッド鋳造法』というやり方を開発したのです」と説明する。
 「研究には、大学院の学生も4年生も卒業研究の一環としていろいろと実験をやってくれました。実験の時は、最終電車の時間まで熱心にやってくれました。私一人ではグランプリを受けることは、とても…」と謙遜する。
 「この研究は、地球温暖化問題にも関係があり、自動車の排気ガスが社会問題になっています。そこで自動車を軽量化して、燃費も少なくなる訳です。材料のアルミニウムやマグネシウムは軽い金属で、この方法を使って製品をつくるという研究です」と茂木教授は話す。
 自動車のほかに、携帯電話機のケース、カメラの上ぶた、電子辞書のカバーなどに応用も。マグネシウムは電磁波を外へ出さないという性質があり、携帯電話機にはピッタリ。「身体に害を及ぼさない」の大きなメリットがある。
 現在、同研究室には大学院修士課程4人、同博士課程2人、学部学生11人の計17人の学生がいる。学生には「君たちがやった研究は世の中に役立つのだから…」と指導している。1週間に一度ミーティングを開いて、「今週は何をやったか。来週は何をやるのか」を各自10分間発表させ、コミニュケーション能力を高めている。「それに“研究は、まず挨拶から”が私の研究室のモットーです」と説明する。
 「ある会社と共同研究を始めたら、『すぐに技術を社内で展開したいから、卒業生をください』と言われました。中には入社して1〜2年で、研究室を持たせてくれた企業もあります。企業の人たちが来られる時は、学生も一緒に参加してディスカッションをします」と、まさに産学連携を実践している。学生たちからは「素晴らしい先生で、足下にも及びません」と強い信頼を受けている。
 茂木教授は、高校では卓球の選手で、栃木県チャンピオンになったことがある。いまは朝のウォーキングが健康法を兼ねた趣味。ほかには旅行。
 
▲「茂木教授は素晴らしい先生です」と学生たちも強い信頼を寄せる
 
  
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