宇宙兄弟で知るTechnology+の学び

EPISODE 01 無重力環境での結晶実験

無重力に近い環境が再現できる宇宙船の船内は、地上のように重力に左右されず、高精度なタンパク質の結晶を作るのにベストな環境。父親をALS※という難病で亡くした宇宙飛行士・せりかは、新薬開発のため、ISSの船内で、ALSの原因となるタンパク質の結晶化を試みる。

※ALS:手足・のど・舌の筋肉や呼吸に必要な筋肉がだんだんやせて力がなくなっていく病気。しかし、筋肉そのものの病気ではなく、筋肉を動かし、かつ運動をつかさどる神経(運動ニューロン)だけが障害をうける。その結果、脳から「手足を動かせ」という命令が伝わらなくなることにより、力が弱くなり、筋肉がやせていく。その一方で、体の感覚、視力や聴力、内臓機能などはすべて保たれることが普通。
(出典:「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」、公益財団法人難病医学研究財団/難病情報センター)

「無重力を利用した研究」について工学部 先端材料工学かの小沢先生にお話をうかがいました

研究内容

材料を空中に浮遊させた状態で溶かしたり、結晶成長させたりできる「無容器プロセス」を中心に、新しい機能や特性を持った材料開発や熱物性について研究。材料分野で問題となっている課題の解決や未知現象の解明をめざしています。

episode 01-02

無重力は、材料研究にとって魅力的な環境

無重力実験 イメージ

漫画「宇宙兄弟」では、難病の原因解明に無重力環境を役立てるというストーリーが展開されています。実際に、宇宙では地上ではできない実験が可能であり、私たちが取り組んでいる材料研究にとっても、さまざまな利点があります。例えば、地上で複数の材料を溶融させようとすると、密度の大きい材料は沈み、小さい材料は浮くため、なかなか均一には混ざりません。しかし無重力環境では「無浮力・無沈降」つまり浮かない、沈まないため、材料が均一に混ざった優れた材料をつくることができます。このほかにも無重力環境には、「無静圧」「無対流」「無容器浮遊」という特徴があり、これらを生かすことで今ある材料の性能を大幅に向上させたり、新しい材料を発掘したり、あるいは新しい材料の製造法を編み出すことができます。今はまだ気軽に宇宙に行くことはできませんが、実は私たちの研究室でも、物質を浮かせたまま融解させたり凝固させたりして、新しい材料の探索や、表面張力のような物性の評価などに挑戦しています。

episode 01-01

材料の進化がなければ、実現できない未来があります

無重力実験 イメージ

ただし、材料を空中に浮かせたとしても、地上ではやはり重力の影響があります。その差を埋めたり、重力によって見えていなかった未知の現象や新しい発見を得たりするために、私たちはJAXA、ESAなどと共同でISS※の国際共同実験に参加し、今後の材料研究に役立つ基礎的なデータを得ようとしています。その意味で私たちの研究室と宇宙はやはりつながっているのです。私たちが普段目にしているものにも数多くの先端材料が使われています。スカイツリーのような超高層建築が可能になったのは、東京タワーの建設時に比べ、2倍近い強度を持つ鉄鋼材料が開発されたからです。また、ハイブリッド車やEV※が実用化できたのも、モーターに使う超強力な磁石を自動車に載せられるほど小型化できたからでした。材料の進化はこれまで不可能だったことを可能にします。社会のニーズに応じて、より優れた機能や強さ、軽さを備え、環境負荷が低く、低コストで再利用しやすいといった材料を追究する材料工学は、社会の持続的発展を支える、とても重要な分野だと言えるでしょう。

※ISS:International Space Stationの略、国際宇宙ステーション
※EV:Electric Vehicleの略、電気自動車

工学部 先端材料工学科

スカイツリーからスマートフォン、ハイブリッドカーなど、現代の建築物や製品にはいずれも多くの先端材料が使用されています。また、社会の持続的発展のためには、限りある資源を有効活用する技術や新しい材料の研究・開発が不可欠です。千葉工業大学の先端材料工学科は、こうした明日の社会の根幹となる「材料」の基礎知識と、実際の設計・製造・機能性付与・加工処理・リサイクルの技術まで、幅広く学べるメニューをそろえ、「循環型ものづくり」に対応できる材料系エンジニアを育成します。

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