千葉工業大学 プロジェクト研究年報 2014年版
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1.はじめに 本研究の主たる対象である『人間工学演習1』は、第3セメスター(2年生・前期)に開講された『基礎人間工学』および『応用人間工学』で習得した人間工学の知識をふまえて、製品の開発や評価に必要な計測技法等をより実践的に習得せしめることを目的として第4セメスター(2年生・後期)に開講している。 ところが、ここ数年は受講者数が毎年150名を超えるようになったことから、基本的な評価手法である筋電図などの生理計測技法に関する教育は、計測機器や計測手法を供覧する形式でのみ行えるようになった。そのため、学生が積極的に参加して計測・評価する機会が少なくなり、比較の条件を設定して実験的に検証し考察する実行力を習得するという教育目標の視点で不十分な状態となっている。 そこで、学生の積極的な参加を促し教育効率を高めるために当該授業の進め方について見直しを行ったので報告する。 2.研究の内容 デザイン科学科の演習授業の特徴は、個人ごとに取り組む課題が多いことにある。そのため、学生の多くは統計学に関する知識は有しているが、ツールとして統計を活用する必要性について十分な理解がない状態におかれることもある。 一般に工業製品を開発する際には、ユーザである人間の形態的特性や生理・心理的特性等を知ること、および集団へ適用するための合理的判断をサポートする統計的手法は必要不可欠なものである。 『人間工学演習1』も個人ごとに生理機能や心理機能に関する計測を行っているが、体験的な計測に終始することも多く、人間工学の基本である“集団への応用”には至っていなかった。 そこで、学生の積極的な参加を促し、計測の簡略化・効率化をはかり統計的な検討ができるよう、グループワークを基本とする演習になるよう内容を再構築することを試みた。今回は、次のような内容の実験・実習を試行的に行った。なお、グループは性差の影響を考慮することが必要な場合を除き、学生番号の順を基本として構成した。 ①個人の計測結果と工業製品(既製品)との関連の把握 自分の手のサイズを計測し、その結果を手袋のサイズ表と照合して自分用のサイズを確認する。その後、市販の手袋(軍手)を実際に装着して再度サイズを確認する。1グループあたりの人数はおおむね10名とした。 ②スマートフォンの設計提案 “自分の手にピッタリ合うスマートフォンの提案”と題して、スタイロフォームを切削・加工してスマートフォンの外形モデル(製品)を作製する。このとき、製品のイメージ図、三面図をモデルとともに提出する。また、完成したモデルは,グループ内で把持のしやすさについて相互評価を行う。1グループあたりの人数はおおむね10名とした。 ③人間工学的計測の体験 視力、協調動作、反応時間、つまみ力、フリッカー値、作業能力(タッピング)等について、計測の目的・意義に関する説明を受けた後に、各項目の計測・記録を行う。 計測者と被験者を体験するため、2名で1組とした。 ④感覚評価 日常生活で使用する道具類について主観的評価を行う。 この演習では、2種類の道具(片手鍋と筆記具)について 評価を行う。 片手鍋については、サイズ・色・素材が異なる3種類の鍋をそれぞれ把持し、重いと感じた順に並べる。他者への影響を排除するため原則として単独で行わせた。なお、片手鍋の重量は、内容物(米)による調整で同一の重量に調整したが、実験時には学生には知らせなかった。 筆記具については、軸径が2㎜ずつ異なる6種類の鉛筆モデル(アルミ製:軸径6~16㎜、図1)をそれぞれ把持した際の持ちやすさ等について各人の主観評価により順位付けをする。1グループあたりの人数は、おおむね10名研究項目: 教育研究助成金 研究期間: 2013/4/1 ~ 2014/3/31 研究課題名(和文): 参加型評価手法を採り入れた演習授業の構築と効果 研究者:(○;研究代表者) ○三澤 哲夫 千葉工業大学 倉斗 綾子 千葉工業大学 MISAWA Tetsuo 工学部 デザイン科学科 教授 KURAKAZU Ryoko 工学部 デザイン科学科 助教 2014 千葉工業大学附属総合研究所 プロジェクト研究年報          Project Report of Research Institute of C.I.T 2014      54

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