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2020.11.15

「メテオ」地球に帰還


ISSで流星観測2年半
生命物質は? データ解析進む
ISSの観測窓からメテオカメラを取り外す搭乗員 カメラを乗せて昨年6月、海上に帰還したドラゴン輸送船=NASA提供
ISSの観測窓からメテオカメラを取り外す搭乗員 カメラを乗せて昨年6月、海上に帰還したドラゴン輸送船=NASA提供
 本学惑星探査研究センター(PERC)が宇宙からの流星観測「メテオ」プロジェクトに使用した超高感度カメラが12月4日から、本学の東京スカイツリータウンキャンパスで一般公開される。世界初のチャレンジとして国際宇宙ステーション(ISS)に設置され、2016年7月から2年半にわたって膨大な流星情報を記録した超高感度カメラ。PERCではいま、そのデータ解析を精力的に進めており、世界中の研究者らから注目を集めている。
3度目打ち上げで
 「メテオ」プロジェクトは12年にNASA(米航空宇宙局)への研究提案が採用されて始まった。14年10月と15年6月、ISSに物資補給船を運ぶロケットが爆発、搭載していたPERCの超高感度CMOSカラーハイビジョンカメラが失われた。それでも16年3月に打ち上げられたロケットで3台目のカメラをISSに届け、同年7月からようやく観測にこぎつけた。
 観測は19年3月まで行われ、同年6月にスペースX社のドラゴン輸送船で観測装置と全ての観測データが地球に帰還した。一般的にISSで実験を終えた実験装置は輸送船に積み込まれ、地球に帰る輸送船が大気圏に突入する際に燃え尽きてしまう。だが、本学のカメラは、再利用可能なドラゴン輸送船に搭載され異例の帰還を果たした。
 PERCの荒井朋子主席研究員は「カメラが戻ってきたのは、千葉工大とNASAとの合意として、千葉工大がカメラの開発費を負担、NASAはカメラの打ち上げと帰還、2年間のISSの観測窓の占有及びISSでの宇宙飛行士による観測支援に係る費用を負担することが決まっていたからです」と経緯を語る。
 ISSからは天候や大気の影響を受けずに流星観測ができるメリットがある。観測では流星の光の明るさを測定する測光観測と、流星の色を測定する分光観測がほぼ1年ずつ行われた。測光観測では流星の大きさの違いを調べた。明るさは塵の大きさと速さで決まる。ひとつの流星群に含まれる塵の速度は同じなので、明るさの違いは大きさの違いになる。
AIも活用し解析
 分光観測では塵の化学組成が分かる。カメラのレンズの前にプリズムの働きをする回折格子を取り付けると色が七色に分かれる。その色は元素との関係が分かっているので、青だったら鉄、緑はマグネシウム、オレンジはナトリウムと、塵を構成する主要元素を知ることができる。
 毎年決まった時期に現れるふたご座流星群などの流星群については、塵を放出している元となる「彗星や小惑星」(流星群母天体と呼ぶ)が分かっているので、流星群の観測結果から、直接探査が難しい流星群母天体の表面の化学組成の違いを調べられる。
 2年半の観測で得られたのは1個あたり750ギガバイトの容量があるハードドライブ40個分(約3万ギガ)のデータ。ISSが地球を約90分で1周するうち夜側は約30分間だが、その30分のデータ量だけで約5ギガバイトもある。大量の動画データから0・5秒程度の流星を抽出するために、本学人工知能・ソフトウェア技術研究センター(ステアラボ)の人工知能(AI)も活用し、詳細な解析を進めている。
 荒井主席研究員は「地球に飛んでくる流星の塵の中には有機物をたくさん含んでいるものがある。地球の生命誕生のカギとなった物質がどのようにして流星から供給されたのか。それを探るのが我々の主要なテーマ」と説明。「南半球と北半球を行ったり来たりしている宇宙ステーションの軌道から観測すると、地上ではどちらかでしか見えない流星群を同時に観測できる。北半球から飛んで来る流星と南半球から飛んで来る流星の明るさの違いなどの新しいトピックにも焦点を当てて論文を書いている」と話している。
 メテオに続く新たなプロジェクト「DESTINY+(デステニープラス)」も決まった。宇宙航空研究開発機構(JAXA)と本学の共同ミッションでふたご座流星群の塵を放出している小惑星「フェートン」に探査機を送る計画だ。「はやぶさ」、「はやぶさ2」に続くもので、2024年に探査機を打ち上げ、28年にフェートンに到着する予定。本学はフェートンを撮像するカメラの開発と科学ミッションの推進を、JAXAがロケットと探査機の開発をそれぞれ担当する予定だ。
PERCメテオチーム。左から千秋博紀上席研究員、小林正規主席研究員、荒井朋子主席研究員、山田学主任研究員(津田沼の管制室で)
PERCメテオチーム。左から千秋博紀上席研究員、小林正規主席研究員、荒井朋子主席研究員、山田学主任研究員(津田沼の管制室で)

米澤所長に瑞宝中綬章


コンピューター科学 進展に世界的な業績
 令和2年秋の叙勲(11月3日発令)で、人工知能・ソフトウェア技術研究センター(ステアラボ)の米澤明憲所長=写真=が瑞宝中綬章を受章した。公務などに長年従事し顕著な功績を挙げたとして贈られた。
 米澤所長は東京大工学部計数工学科を卒業後、米マサチューセッツ工科大大学院博士課程を修了。東京工業大や東京大の教授、東京大情報基盤センター長、産総研情報セキュリティー研究センター副センター長、理化学研究所計算科学研究機構副機構長などを歴任。2015年、本学ステアラボ所長に。
 コンピューター科学、特に「並列オブジェクト指向計算モデル」をいち早く考案確立し、今日の超高速大規模並列計算へ道を開いた。新型コロナウイルスのスパコン上での解析にも一部で応用されている。
 国内外の研究者を多数育て、スパコン「京」や「富岳」の開発・運用にも貢献した。2009年に紫綬褒章を受章している。

睦沢町と連携協定


本学と「未来型の町」めざし
田中町長(右)と瀬戸熊理事長
田中町長(右)と瀬戸熊理事長
 本学は10月19日、長生郡睦沢町(田中憲一町長)と、地域発展や人材育成など広範な分野で協力する連携協定を結んだ。
 睦沢町は千葉県中央部南東寄りの、里山が広がる穀倉地。最先端の技術を導入し未来型のまちづくりを進めたいと願う町側と、地域貢献による学生育成をめざす本学の目的とが合致した。
 協定式で瀬戸熊修理事長は「即戦力となるよう協力していきたい。遠慮なく相談してほしい」。一方、田中町長は「『田舎でも先進地』を目指しているので、リモートで仕事ができる企業を誘致するなどさまざまな情報提供をお願いしたい」と協力を求めた。
 式後、瀬戸熊理事長らは町歴史民俗資料館や中央公民館内の天体観測室を見学。本学は宇宙分野にも力を入れているので「天体観測室を活用した交流など、すぐにでも実行したいですね」と話が弾んだ。
 本学は5月、同町の小中学校に、マスクや卒業生が開発を手掛けた富士山消しゴムを贈っている。協定式の場で、町内の児童生徒がつづった感謝の寄せ書きが今井富雄教育長から瀬戸熊理事長に手渡された。