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2018.5.15

板倉さん、橋川さんの研究に


18年度 笹川科学研究助成
 公益財団法人日本科学協会(大島美恵子会長)が運営する2018年度笹川科学研究助成に、板倉真博さん(機械サイエンス専攻修士2年、小澤俊平研究室)の「半導体Si-Ge融体の表面張力に対する雰囲気酸素分圧の影響」と、橋川直人さん(生命環境科学専攻修士1年、島崎俊明研究室)の「Benzo[c]naphtho[2、1-p]chrysene誘導体の合成および物性評価」が選ばれた。
 助成は若手の独創性・萌芽性を持ち発想・着眼点が新しい研究に与えられ、19年2月までの成果に上限100万円までが贈られる。
 4月27日、東京・赤坂のANAインターコンチネンタルホテル東京で開かれた研究奨励の会で決定通知書が手渡された。
 2人の研究内容と感想は次の通り。
●板倉 真博さん
 新しい半導体として期待されるSi-Ge(シリコン-ゲルマニウム)の単結晶成長プロセスの最適化や現象解明に関するもの。
 小澤研究室は国際宇宙ステーション(ISS)で表面張力を正確に計測する国際共同研究に参加。板倉さんはこの宇宙実験データを正しく取り扱うために、Si-Ge融体の表面張力に対する雰囲気中の酸素濃度の影響を明らかにする研究をしている。研究が達成されれば、世界で初めて温度と雰囲気を同時に考慮した表面張力データが得られ、次世代デバイスの開発などに大きく貢献すると期待されている。
 「期待に応えられる結果が得られるよう、より一層、研究に力を入れていきたいと思います」
●橋川 直人さん
 標題研究の反応によって合成される化合物は、本来、芳香族化合物が持つ平面性を逸脱していることが予想され、それに由来する光物性の発現が興味深く、今回評価の対象となった。
 新反応の開発とそれを用いた新規化合物の合成研究で、合成方法を確立することでこの分野に有益な知見を与えることになる。
 「評価していただき、とても光栄です。支援をいただいている自覚を持って、より一層研究に励みたいと思います」
助成が決まった板倉さん(左)と橋川さん 助成が決まった板倉さん(左)と橋川さん
助成が決まった板倉さん(左)と橋川さん

中川助教と3学生に感謝状


南房総市 塾通い助成業務をICTシステム化
 南房総市は3月、情報ネットワーク(NS)学科の中川泰宏助教と同学科の学生3人に対し、学校外教育サービス利用助成事業の処理システムを無償で開発してくれたとして教育長感謝状を贈った。
 同市は小学5・6年生の塾通い(スポーツ教室を含む)に、一部費用を助成している。その処理業務が煩雑だったが、中川助教の指導のもと、NSの学生3人が作業をICT(情報通信技術)システム化し、事務負担を大幅に軽減した。
 南房総市は本学など県内大学と産学協働地域活力創造事業を進めている。事務の煩雑ぶりを知った中川助教が、学外活動に積極的だった今井駿汰さん、柄澤勇弥さん、薩摩顕蔵さん(3年=当時)を誘い、学生提案型のICTシステム化プロジェクトとしてボランティアで請け負った。
 助成手続きは職員が保護者申請の助成券1枚1枚を手作業で確認し、表計算ソフトに書き込み管理していた。中川チーム提案のシステムは、助成券の登録番号や名前をスキャナーで読み込んでPCで一括管理する。これにより担当職員の作業時間を従来の10分の1程度に減らすことができた。
 昨年8月の初回ミーティングから12回の学内開発会議を経て、今年3月下旬、システムを市教委子ども教育課に納品。丸山分庁舎で中川助教ら4人に、三幣貞夫教育長から感謝状が手渡された。システムは30年度から運用が開始されている。
 今井さんら学生は「実際に人の助けになるシステムを、自分たちの手で開発できたことがとてもうれしかった。学生時代に大きな体験ができた」。
 中川助教は「技術の観点から地域に貢献しつつ、学生が自ら主体性を持って問題解決を図れる機会を得たことは本当によかった。地域、学生、大学の3者にメリットがある活動なので、今後も必要に応じて継続していきたい」と語っている。
感謝状を手に(左から)中川助教、薩摩さん、柄澤さん、今井さん
感謝状を手に(左から)中川助教、薩摩さん、柄澤さん、今井さん

今井さん柄澤さん最優秀賞


WOWOW「ウーとワー」で「ARかくれんぼ」
 テレビ有料衛星放送のWOWOWとFuture Tech Hub(日本初をうたうVR/AR特化型起業支援施設)は3月31〜4月1日、WOWOWの公式キャラクター「ウーとワー」を“XRの世界で活躍させてみよう!”と呼び掛けたハッカソンを東京都中央区のFuture Tech Hubで開催。本学の今井駿汰さんと柄澤勇弥さん(いずれも情報ネットワーク学科4年)の2人チームが発表した「AR技術を活用した新しい、親子で可能な体験コンテンツの作成」が最優秀賞に選ばれ、トロフィーと賞金15万円を獲得した。
 ハッカソンはHack(コンピューターで何かをやり遂げる)とマラソンを合わせた造語で、数人ずつのチームが短期でソフトウエアやサービスを共同開発し成果を競うイベント。「ウーとワー」は頭に耳のような触覚を載せた白と黒の“宇宙人”という想定。
 映像感覚世界はAR(拡張現実)、VR(仮想現実)、MR(複合現実)と、これらを総称するXR(Extended Reality)と、次世代技術を模索している。今回はウーとワーがXRの世界でどう活躍できるのか、展開イメージを募った。
 今井さんらは、比較的短期間でプロトタイプを作れそうなAR技術を用い、スマホをかざして親子で楽しめる「ARかくれんぼ」を提案。UIデザイン・アニメーションと画面遷移は柄澤さんが、内部設計・プログラミングは今井さんが担当し、2日間、プレゼン数分前まで作業に没頭し、ぎりぎりで動作させることに成功。デモ実演までできた。
 審査では「子供も大人も楽しめる魅力的なコンテンツで完成度が高く、ウーとワーの新たな展開の可能性が感じられた」と評価された。今後、WOWOWが2人の着想を事業展開する可能性もある。
 今井さんは「2日間でデモとして遊べる完成度まで持っていくのに苦労しました」。柄澤さんは「懇親会で、最近ポピュラーな技術であるARと、誰でも知っている遊び『かくれんぼ』を組み合わせたのがよかった、と評価されました。実際に懇親会でプレーしてもらい、熱心にウーとワーを探そうとしている様子に、やりがいを感じました」と語った。
柄澤さん(左)と今井さん
柄澤さん(左)と今井さん

宇宙飛行士と直接交信


荒井主席研究員 幕張で“千葉工大ウィーク”
 「メテオのハードディスク(HDD)を交換していただき、ありがとうございます」という荒井朋子PERC主席研究員=写真中央=のにこやかな呼びかけに、「ISS(国際宇宙ステーション)の窓を使って地球に落ちていく流星を観測するメテオの研究、素晴らしいアイデアだと思います」と金井宣茂宇宙飛行士の爽やかな声が返ってくる――。
 GWさなかの5月2日、幕張新都心と地上400キロを周回する国際宇宙ステーションの間で、荒井さんと金井さんが初めて対話し、宇宙と地上の距離を感じさせないクリアなやりとりに、イベント会場に集まった人たちは歓声を上げた。
 5月1日から6日までイオンモールで開かれた「わくわく宇宙ウィーク」のひとこま。子どもたちや地域住民にもっと宇宙を身近に感じてほしいと、イオンモールが宇宙航空研究開発機構(JAXA)の協力を得て実施した。
 会場のよしもと幕張イオンモール劇場は大勢の親子連れなどで埋まり、よしもと芸人たちも参加して熱気むんむん。
 メテオカメラで撮った映像を収めるHDDの容量が満杯になったとき、新しいHDDと交換する作業を金井宇宙飛行士にやってもらっている。そのお礼を言った後、荒井主席研究員が「宇宙から見た流星は、金井さんの目にはどのように映りましたか?」と問いかけると、金井宇宙飛行士は――。
 「(メテオカメラが取り付けられている)窓は宇宙ステーションの床側にあるので、私たちは地球を見るときは上下逆さまになって、窓に頭を突っ込んで、あたかも見上げるような格好になっています。ですから流星も頭の上のほうで光っているのが見えるのです」
 まさに宇宙飛行士ならではの実感のこもったコメント。
 この「わくわく宇宙ウィーク」では、6日間の会期を通して「はやぶさ2」とPERCの関わりや、気球による成層圏での微生物・ウイルス捕獲実験、流星観測衛星S-CUBE、「生命は宇宙から飛来したのか」という謎に迫る「赤い雨プロジェクト」など、PERCの研究プロジェクトをポスター展示。
 さらに和田豊・機械電子創成工学科准教授(PERC非常勤上席研究員)が、子どもたち対象の手作りロケット教室(2日)や、「千葉工業大学の宇宙研究最前線」(6日)と題したトークショーを開催。「将来、宇宙関連のことがしたくなったら、ぜひ千葉工大を思い出して」と呼びかけるなど、“千葉工大パワー”全開のGWだった。