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2018.3.15

就活本番 「好況」にも 気引締め


教職協働で最高内定率 目指す

 会社説明会が3月1日に解禁されて本格突入した2019年卒業予定者の就活戦線で、千葉工大生にはこれまで以上に企業の熱い視線が注がれている。好況感を背景に人手不足が続き、「就活前倒し」が報道されているが、本学は教員と職員が力を合わせた「手づくり」の学生支援で、過去最高の内定率達成を目指している。
 「この春卒業予定の現4年生の内定率は、過去最高だった昨年度をさらに上回っています。その勢いを受けて、現3年生の就活環境も全体的には非常にいい雰囲気です」と就職・進路支援部の福江聡部長は話す。
 2月24日、津田沼キャンパスで昨年12月に続いて開催されたOB・OG懇談会に参加した企業は昨年並みの128社だったが、参加学生は894人で昨年より約50人増えた=写真。マスコミで「就活前倒し」が盛んに報道されていることが影響しているとも考えられる。しかし、本学の対策は万全だ。
 本学の就活学生に対する支援の特徴は、教員と就職・進路支援部の職員が一体となって、個々の学生に最適の支援プログラムを手づくりし、内定を獲得するまで個別支援の手を緩めないことだ。
 プログラムづくりには本学への理解が深い企業の役員や採用担当者の力を借りることもあるが、専門企業などによる「既製プログラム」は活用しない。そこには「学生と教職員の信頼関係が第一」という大学トップから発せられた理念がある。
 そして、グループディスカッション力やプレゼンテーション力などをつける日ごろのキャリア教育に加えて、面接指導を柱に就活生の「実戦力」を鍛えることに主眼が置かれている。
 目下の就活戦線全般は「前倒し」が趨勢となる中で、本学は「指針厳守」に徹していく姿勢だ。
 その上で、福江部長は就活生にこうアドバイスしている。
 「就活は《早く準備した人ほど、早く結果につながる》。これが鉄則です。だからこそ、今のような情勢下では、自分がチャレンジしたい企業の動きを早く、しっかりと捉えておいてください」

 就職委員会と就職・進路支援部は、今月15、16、19日に合同企業説明会を開催。4月以降も数回の開催を計画しているほか、随時、個別企業説明会を開く。

高校生に“惑星科学最前線”


PERCが米研究者招き講演会
 惑星探査研究センター(PERC)は2月25日、東京スカイツリータウンキャンパスで「宇宙をひもとく惑星科学の最前線」と題した高校生のための講演会を開いた。
 講師は米航空宇宙局(NASA)の小惑星探査機「オサイリス・レックス」主任研究員のダンテ・ローレッタ・アリゾナ大教授と、太陽系外から飛来した謎の天体「オウムアムア」を発見したカレン・ミーチ・ハワイ大教授で、2人とも日本の高校生に向けた講演は初めて。
 「オサイリス・レックス」は地球の軌道を交差する地球近傍小惑星である直径500メートル弱の「ベンヌ」からサンプルを持ち帰るために、2016年9月に打ち上げられた。地球帰還は2023年の予定。
 「ベンヌ」の表面には炭素、有機物、水を含んだ鉱物が大量にあると考えられており、そのサンプルリターンに成功すれば、地球生命の起源解明に大きく役立つと期待されている。
 また、日本が2014年12月に打ち上げて、地球近傍小惑星「リュウグウ」からのサンプルリターンを目指している「はやぶさ2」(2020年帰還予定)との共同研究が期待されている。このため「オサイリス・レックス」は「アメリカ版はやぶさ」と呼ばれることもある。
 ローレッタ教授は「2つのミッションがともに成功すれば、科学的な成果は4倍かそれ以上になる」と話した。
 「オウムアムア」はハワイの言葉で「非常に遠いところから来た使者」という意味。昨年10月にハワイ・マウイ島の天文台で初めて観測され、その後、フランスの天文台の観測結果などから、ミーチ教授が観測史上初めての恒星間天体であることを論証し、軌道などを明らかにした。
 同教授によると、「オウムアムア」は長さ約100メートル、太さは長さの10分の1程度の細長い形で、太陽系の惑星の軌道面のはるか上から突っ込んできて太陽に接近。急に向きを変え、猛スピードで地球をかすめて、来年には木星の軌道を超え、そのまま太陽系を離脱していくという。
 「地球に最も接近した時の距離は、月と地球の距離の約16倍で、天文学的にはニアミス。もう少し近かったら、ぶつかっていたかも知れない非常にリスクの高い天体でした」とミーチ教授。
 会場の3Dシアタールームでは高校生など約70人が講演に熱心に耳を傾けていた。講演後には通訳をした荒井朋子主席研究員が「メテオ」プロジェクトなどPERCのミッションを紹介した。

はやぶさ2
山田研究員らが開発


小惑星リュウグウ撮影の高性能カメラ
山田研究員
山田研究員
  2014年12月に打ち上げられた宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小惑星探査機「はやぶさ2」が2月26〜27日、小惑星Ryugu(リュウグウ)の撮影に成功した。リュウグウの姿を捉えた光学航法カメラ(Optical Navigation Camera:ONC)は、本学惑星探査研究センター(PERC)の山田学研究員が開発に大きく関わったもので、順調な性能を発揮している。
 「はやぶさ2」は、目標天体リュウグウへ今年7月に到着予定で、イオンエンジンの連続運転による飛行を続けている。打ち上げから3年3カ月の飛行距離はおよそ29億キロメートル。
 今回の撮影は、地球スイングバイ時に地球や月を撮影したように、観測機器試験の一環として、(想定される)リュウグウの方向へカメラを向けて実施。日本時間2月26日正午から翌27日午前9時までにリュウグウの姿を捉えることに成功した。
 ONCはJAXAと東京大、千葉工大、名古屋大など7大学が協力して開発。山田研究員はチームメンバーとして開発と観測計画の検討に携わった。
 探査機と目標の小惑星との相対位置関係を把握するデジタルカメラで、視野角60度のモノクロ広角カメラ2台と、7種の波長で小惑星を見る望遠カメラ1台の計3台で構成。はやぶさ初号機のカメラと金星探査機「あかつき」の紫外イメージャ電気系の長所を合わせて改良、分光用フィルターは含水鉱物を見分けられる。
 PERCはほかにも小惑星の内部物質採取時に使う衝突装置やレーザー高度計などの機器開発に貢献している。
 山田研究員は北海道出身で北海道大理学部、同大学院などで地球の上層大気などを研究。金星探査機搭載紫外イメージャの開発・運用を経て2012年、PERCに入所。現在、小惑星探査機搭載機器の開発・運用に没頭。探査計画と娘の成長を“同時観測”する日々という。
はやぶさ2から捉えたリュウグウと光学航法カメラ(JAXA資料から) はやぶさ2から捉えたリュウグウと光学航法カメラ(JAXA資料から)
はやぶさ2から捉えたリュウグウと光学航法カメラ(JAXA資料から)

大気の生成過程解明


タイタン・原始地球 洪研究員・東大チーム
  生命の起源を探求する科学者たちは、土星の衛星タイタンを包む、分厚いヘイズ(有機物エアロゾル=有機物で作られたエアロゾル)に注目してきた。酸素濃度が増す以前の原始地球(約25億年前)でも、生命の起源となる前駆物質の合成に適した環境があった可能性があるからだ。しかし有機物エアロゾルの生成過程はあまり解明されていなかった。
 惑星探査研究センター(PERC)の洪鵬研究員(前・東京大新領域創成科学研究科=写真)と東京大大学院理学系研究科の関根康人准教授、杉田精司教授らのグループはこのほど、原始地球では従来考えられていたよりも有機物エアロゾル層は薄かった可能性がある、と発表。成果は2月15日付の欧州科学誌イカロス電子版に掲載された。
 土星のヘイズでは、太陽から来る紫外線や高エネルギー粒子によって、炭化水素分子がさまざまな反応を繰り返し重合していることが知られている。米航空宇宙局・欧州宇宙機関の土星探査機カッシーニが集めた情報で解明が進んできたが、不明な点も多く残る。
 タイタンでは遠紫外線よりも波長の短い極端紫外線や高エネルギー粒子によって反応が起こされているが、地球では遠紫外線の照射量のほうがはるかに大きいことが知られている。
 洪研究員らは、原始地球の気候を理解する上で遠紫外線による反応メカニズムを調べることが重要と考え、遠紫外線を発生できる水素−ヘリウム光源を製作。タイタンと原始地球の大気組成を模擬したメタンと二酸化炭素の混合気体に照射した。そして生成したエアロゾルの生成率や赤外透過スペクトル、気相分子の質量分析を行った。
 その結果、①メタンより二酸化炭素が多い大気組成ではエアロゾルの生成率が大きく下がる②生成されたエアロゾル粒子には直鎖状炭化水素に由来する化学結合が多く含まれる――などが分かった。
 さらに光化学反応を計算する数値モデルを構築し解析したところ、従来想定されてきた低次の炭化水素重合反応よりも、粒子表面でメチルラジカル(エネルギーが高まり反応性が高くなった分子)の付着による不均一反応(固体と気体など2種類以上の相の共存状態での反応)が顕著であることがわかった。
 これらの結果から、タイタンの中層大気では不均一反応による粒子の成長が卓越すること、また原始地球では従来の予想よりも有機物エアロゾル層が薄くなる可能性が示唆された。
 タイタン以外に冥王星や太陽系外惑星でもヘイズ層が確認されており、今回得られた知見はそんな天体にも広く適用できると予想されている。