NEWS CIT ニュースシーアイティ

2018.1.15

三浦さん 優秀講演賞


こけら葺き屋根 漏水危険度判定の研究
 日本材料学会関東支部の2017学生研究交流会(昨年10月28日、東京都千代田区の上智大四ツ谷キャンパスで開催)で、三浦大和さん(建築都市環境学専攻修士1年、石原沙織研究室=写真)が「こけら葺き屋根の表面凹凸が雨水排水に及ぼす影響」をポスター発表し、優秀講演賞を受賞した。
 社寺建築に多いこけら葺き屋根は、経年劣化で板表面に凹凸ができ、漏水を招く恐れがある。三浦さんらは、表面凹凸が雨水の排水特性に及ぼす影響を調べた。
 こけら板の表面凹凸を模して切り欠きを設けたガラス板とアクリル板を使い、雨水の排水挙動・浸入範囲・漏水量を測定。▽切り欠きの大きさ▽板同士の間隙▽材料自体の濡れやすさ――の3つの組み合わせの影響を明らかにした。こけら葺き屋根の漏水危険度を判定する基礎データとして活用されることが期待される。
 得られた知見を、正しく分かりやすく伝えるには……と苦心してポスターを作成したという。
 三浦さんは「受賞できると思わず、驚きました。研究を多くの人に評価していただけ自信になりました。石原先生、先輩ら多くの方々のご指導・助言のおかげで、感謝しています」と語った。

王さん 学生優秀発表賞


より効率的な画像圧縮手法を発表
 映像情報メディア学会の年次大会2017(昨年8月30〜9月1日、東京理科大葛飾キャンパスで開催)で、王冀さん(情報科学専攻博士課程3年、八島由幸研究室=写真)が「マルチクラスK-SVD画像圧縮におけるスパース係数のエントロピー符号化」を発表し、学生優秀発表賞に決定。12月12日、早稲田大西早稲田キャンパスで授賞式があった。
 画像圧縮技術で、JPEGやMPEGに使われるDCT(離散コサイン変換)よりも効率的として提案されているマルチクラスK-SVD(特異値分解)について研究したもの。
 K-SVDのようなスパースコーディング(ある信号をできるだけ少数の基底で表現)で算出した係数の分布特徴は、DCT係数の性質と異なるので、スパース係数の効率的なエントロピー符号化の設計が必要。王さんらは、スパース係数の大きさの分布と、対応する基底位置分布と疎性拘束項との相関を分析し、従来よりも優れた特性を持つエントロピー符号化手法を考案した。
 発表ではデータの可視化や抽象的概念の例示を工夫したというが、審査では「画像のスパースコーディングで、設計された基底に対する重み係数の分布特徴と疎性拘束項との相関の理論的分析と、効率的な符号化手法を提案したこと、発表内容を理解しやすい論理で展開した」と評価された。
 100件余の応募講演中、6人が学生優秀発表賞に選ばれた。
 王さんは中国・哈爾濱市出身で「賞が頂けたことを大変うれしく思います。八島先生と研究室メンバーたちに深く感謝いたします。受賞をステップに、研究をより深めていきたい」と語った。

米澤所長に大川賞


並行オブジェクト指向計算モデルの業績で
 情報通信分野で顕著な社会的貢献をした研究者に大川情報通信基金が贈る2017年度(第26回)大川賞に昨年11月7日、本学人工知能・ソフトウェア技術研究センター(STAIR Lab=ステアラボ)の米澤明憲所長=写真=と米イリノイ大アーバナシャンペーン校名誉教授のD・J・クック博士が選ばれた。
 米澤所長の受賞理由は「並行オブジェクト指向計算モデルの提唱と、これに関する理論から実践にわたる先駆的な研究開発」に対して。
 並行オブジェクト指向計算の考え方は、今日のスーパーコンピューターを含む並列・分散コンピューターにおけるプログラム開発手法の礎の一つとなっており、欧米をはじめとする第一線の研究者に直接的・間接的に大きな影響を与え、また実用に多く供されている。
 米澤所長は東京大、マサチューセッツ工科大を経て東京大情報基盤センター長、理化学研究所計算科学研究機構副機構長などを歴任。2015年、ステアラボ開設とともに所長に迎えられた。
 クック博士の業績は、パラレルコンピューティング分野での先駆的な功績、とくにコンパイラ技術と開発支援ツールの研究開発・普及に対して。
 大川情報通信基金は、高度情報化社会のITビジネスをサポートする(株)CSK(現SCSK(株))創業者・故大川功氏を中心に設立された公益法人。国際賞として毎年、情報通信分野の研究・技術開発で貢献した日本・海外の各1人を表彰している。

建都院生4人 優秀賞


「表参道のcafe」提案 ヒューリック学生コンペ
 東京・表参道を代表する新建築を募集した第5回ヒューリック学生アイデアコンペは昨年10月15日、主催のヒューリック(株)本社(東京・日本橋大伝馬町)で公開2次審査が行われ、「表参道のcafe」を提案した本学の4人チームが、最優秀賞に次ぐ優秀賞3作品の1つに選ばれた。
 4人は川合豊さん(建築都市環境学専攻修士2年、遠藤政樹研究室)、嶋田緒音さん(同)、岸田和也さん(同1年、石原健也研究室)、小池翔太さん(建築都市環境学科4年、遠藤研究室)。
 課題は、表参道と青山通りの交差する場所に、表参道を象徴する建築「THE表参道」を提案するもの。
 4人はケヤキ並木の下のベンチから着想を広げ、交差点に高さ80メートル、奥行わずか4メートルの、薄くて空中庭園を兼ねた17階建てランドスケープ・カフェを提案した。
 建築は耐火皮膜不要の鉄骨柱FR鋼で想定。人々は上昇する眺望を得られ、前後に薄いカフェに腰を下ろすことで都市の眺望に身体をおく感覚を持てる。交差点にいる人々からは、建物が薄いので内部の人の行動が建物を成しているように見える。側面には電光掲示板の機能を持たせた。
 10月に1次審査通過10組が公開プレゼンテーションし、受賞が決定した。応募総数は188点だった。
 隈研吾・審査委員長(東京大教授・建築家)は「学生にとって一番魅力的な敷地だが、魅力を感じる敷地ほど、自分を客観的に見られなくなる危険がある。そんな場合に重要なのは、社会のニーズ、社会の『気持ち』を理解すること。今回も“自分が楽しい”を超え“今の社会が何を求めているか”に気づいた案が残ったと思う」と総括した。
 コンペは不動産会社のヒューリックが2013年から毎年開き、年ごとに「有楽町」「渋谷」「横浜」「浅草」……と、実際に存在する場所を対象敷地としている。
「表参道のcafe」(中央)と受賞した4人。(前列左から)川合さん、嶋田さん、(後列)岸田さん、小池さん
「表参道のcafe」(中央)と受賞した4人。
(前列左から)川合さん、嶋田さん、(後列)岸田さん、小池さん
「表参道のcafe」(中央)と受賞した4人。(前列左から)川合さん、嶋田さん、(後列)岸田さん、小池さん

久保・山崎教授ら最優秀論文賞


開発計画の成功・失敗事例可視化
山崎教授 久保教授
山崎教授 久保教授
 日本生産管理学会などが開いた第3回生産管理国際大会(ICPM2017=昨年9月7〜11日、タイ・バンコクのアサンプション大で開催)で、久保裕史・プロジェクトマネジメント学科教授と山崎晃・金融・経営リスク科学科教授らが発表したマネジメント工学に関する論文が最優秀論文賞を受賞した。
 標題は「Empirical research on quantitative evaluation by the modified magnetic model for the R&D project management(R&Dプロジェクトマネジメントのための磁性モデルを応用した定量評価モデルの実証研究)」。林田秀樹・大阪大大学院招聘准教授、舩島弘紀・神戸大大学院特命講師と連名で発表した。
 内容は、特定の研究開発プロジェクトの成功・失敗事例のデータ上の特徴を、磁性モデルを応用した分析手法で定量的に区別し、可視化できることを明らかにしたもの。
 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のプロジェクトに採択された追跡評価調査に関し、参加大学が集めた大規模データを使ってシミュレーション。従来困難とされてきた「事業化に成功する研究開発プロジェクト」と、企業の経営指標や組織・文化との関係性を可視化できることを示した。
 久保教授は「企業にとって、いかにイノベーションを創出し事業の成功に結びつけるかは、極めて重要な課題です。しかし、そのために必要な、経営指標や組織・文化等を定量的に評価し可視化する手法は、未開発のままでした。今回発表した成果が国際会議で最優秀賞を受賞し、感慨もひとしおです。さらに研究を発展させて社会に貢献していきたい」と語った。