NEWS CIT ニュースシーアイティ

2017.10.15

PM4人が優秀賞


秋季研究発表大会で研究発表
(左から)上野さん、谷口さん、竹山さん、林さん
(左から)上野さん、谷口さん、竹山さん、林さん
 プロジェクトマネジメント(PM)学会の2017年度秋季研究発表大会(8月31日、9月1日、福岡市城南区の福岡大で開催)で、本学の発表者13人のうち4人が学生研究発表賞優秀賞を受賞した。
 受賞したのは上野奈々さん(マネジメント工学専攻修士1年・下村道夫研究室)、竹山侑輝さん(PM学科4年・加藤和彦研究室)、谷口和幸さん(同・下田篤研究室)、林幸宏さん(同3年・田隈広紀研究室)。
 発表内容と受賞の感想は次の通り。
■上野 奈々さん

「歴史上のサブリーダーから学ぶプロジェクトマネジメントの教訓に関する一考察」

 歴史上のサブリーダーを9人選定し、各人物の行動を抽出。プロジェクトマネジメントの観点から分析し、サブリーダーとしての教訓を導き出した。
 文献調査や補佐行動の抽出、行動の分析……作業が多くて苦労したが、好きな分野だったので楽しくできたという。
 「興味がある分野だったので、その研究で賞がいただけてうれしく思います」
■竹山 侑輝さん

「欲求連鎖分析を用いたステークホルダーエンゲージメントマネジメント支援」

 システム開発のプロジェクトで、プロジェクトを取り巻く関係者(ステークホルダー)の欲求を可視化することで、ステークホルダーマネジメント問題の解決を目指した。
 欲求連鎖分析の手法を適用するために時系列化を取り入れることや、欲求の抽出・把握をどうするかに苦労した。
 「大変光栄に思います。今後もより良い研究成果を発表し社会に貢献できるよう、精進したい」
■谷口 和幸さん

「反復型開発における経済的バッチサイズの推定方法」

 反復型開発とは、ソフトウエアを複数に分割し、開発を繰り返しながら段階的に完成させる方法。顧客の要件が変わりやすいので使われるが、反復単位(バッチサイズ)を決める際、期限などを優先し、経済的な最適性は保証されなかった。
 研究では、分割数が多くなるほどコストが増加する要因(マニュアル作成、打ち合わせなど)と、反対にコストが減少する要因(欠陥を探し改善する作業など)を整理し、これらを組み合わせて開発コストを推定し、経済的バッチサイズを決める方法を提案した。
 「指導していただいた方々に感謝します。初めての論文執筆で苦労しました」
■林 幸宏さん

「知識エリアに基づく情報伝達の問題分析と伝達項目補完における教訓の提案」

 プロジェクトの情報伝達で起きる問題の傾向を、実務経験者12人の事例を集めてプロジェクトマネジメントの10の知識エリアを基に分析し、解決への教訓を考えた。その教訓を疑似プロジェクトに適用し、情報伝達の欠落が解決され、伝達効率も低下しないことを確認した。
 指導教員らの協力で実務経験者から短期間に多くのデータを得、これが研究の印象を押し上げてくれたという。
 「自身の問題意識をテーマに、私なりに全力で取り組みました。多くの示唆をくださった先生・実務経験者たちのおかげと感じています」

EASTS年間論文賞に
佐藤教授とOB藤原さん


環状道路と経済の関係を分析
佐藤徹治教授(左)と藤原さん
佐藤徹治教授(左)と藤原さん
 アジア交通学会(EASTS)が選ぶ2017年の学会論文賞に、本学・都市環境工学科の佐藤徹治教授と卒業生の藤原真さん(2016年度建築都市環境学修士課程修了、現・横浜市建築局勤務)の共同論文「Impact of Development of the Orbital Expressway on Reduction of the Logistics Costs and the Regional Economy in the Tokyo Metropolitan Area」(東京都市圏における環状高速道路の整備が物流コスト削減と地域経済にもたらす影響)」が選ばれた。
 9月20日、ベトナム・ホーチミン市のシェラトン・サイゴンホテルで開かれた学会国際会議で表彰された。
 佐藤教授・藤原さんの論文は、地域計量経済モデルと都市圏物資流動調査の詳細なデータから、環状道路整備が物流コストと地域経済に及ぼす影響を分析する新たな手法を開発。同時に、東京都市圏を対象に実証モデルを構築し、圏央道整備がもたらす物流コスト削減効果と地域経済効果を計測した。
 EASTSが、学会投稿論文560点の中から理論研究、応用研究など6部門でそれぞれ最優秀論文を選定。佐藤教授らの論文は応用研究部門の最優秀論文に選ばれ、学会論文賞が授与された。
 佐藤教授は「論文は(日本学術振興会の)平成28〜30年度科学研究費・基盤研究の成果の一部で、藤原君の修士論文を再構成したもの。今後も関連研究を続け、アジアや世界各国のよりよい交通の実現に貢献したい」と語った。
 EASTSは、交通に関するあらゆる側面、手段について、研究や実務支援、交流を促進する目的で1994年設立。東アジア・東南アジアの各国とオーストラリア、ニュージーランドなど19の国・地域の支部組織を持ち、2年に1度、国際会議を開いている。

既存サイズで飛躍的容量
マルチコアの光ファイバ


長瀬研と6社技術陣が開発
長瀬教授
長瀬教授
 機械電子創成工学科・長瀬亮教授の研究室は8月8日、日本電信電話(株)、(株)KDDI総合研究所、住友電気工業(株)、(株)フジクラ、古河電気工業(株)、日本電気(株)の6社とともに、現在広く使用されている光ファイバと同じ細さで、1本に4個の光の通り道(コア)を持つマルチコア光ファイバを開発し、世界最大の毎秒118・5テラ・ビットの信号を316キロメートル伝送することに成功した、と発表した。
 標準外径のガラスを採用したことで、製造やファイバ同士の接続などで既存技術が活用でき、複数メーカーの技術を組み合わせて長距離大容量のマルチコア伝送システムを構築できることを実証。マルチコアによる光通信システムの実用化へ大きく前進した。
 光ファイバによるデータ伝送は、世界的に伝送限界が予測されるほど増大。このため1本の光ファイバに10個以上ものコアを持たせるマルチコアの研究開発が続いている。しかし、ガラス直径が既存より太くなるので製造・接続など周辺技術の開発が必要になり、実用化には今後10年はかかるとみられている。
 そこで、配置コア数をあえて抑え、既存技術を生かしながら伝送容量を飛躍的に高める方策を研究。各メーカーの技術陣と協力し合って、国際規格で既存サイズのガラス直径(125マイクロメートル)に4個のコアを配列し、既存の製造技術や周辺技術を活用しやすいマルチコア光ファイバを開発した。
 一方、マルチコアファイバを接続する光コネクタにはファイバ同士の整列だけでなく角度を精密に合わせる機能が必要となる。長瀬教授らは既存の光コネクタに新たな機構を追加し、従来と同等の接続特性をもつマルチコアファイバ用光コネクタを開発、今回の伝送実験に使用した。
 この結果、既存の光ファイバ製造技術を有効活用しながら、現在の光ファイバの伝送限界を大幅に上回る、毎秒100テラ・ビット超の長距離伝送が実現できることを示した。実用化は2020年代前半を目指している。
 今回の成果は7月31日〜8月4日にシンガポールで開催された光通信技術に関する国際会議のポストデッドライン論文(極めて高い評価を得た締切事後論文)として報告された。
マルチコア光ファイバの説明図
マルチコア光ファイバの説明図