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2017.4.15

瀬戸熊修理事長 祝辞


地道な一歩一歩が「高み」へ
 皆さん、ご入学おめでとうございます。私ども役員・教職員・在学生一同、そして70有余年本学の歴史を築いてきた多くの諸先輩と共に心から歓迎いたします。併せて、ご列席のご父母・ご家族の皆様に重ねてお祝いとお喜びを申し上げます。
 千葉工業大学は昭和17年の創立以来、「世界文化に技術で貢献する」という建学の精神を掲げて、今年の5月15日に75周年を迎えます。本学の前身であります「興亜工業大学」は、我が国唯一の旧制私立工業大学であります。
 さて、現在日本にある大学の数は、国公私立合わせて779大学ありますが、今年の入学志願者数の全国大学ランキングでは、大手総合大学に比して、昨年に引き続き本学は9位となりました。その倍率も54倍と他大学を陵駕しております。
 このような大変厳しい入学試験の狭き門をくぐりぬけ、今日の良き日を迎えられました皆さんは、大いなる自信と誇りを持って新たなる大学生活を有意義に送っていただきたいと思います。
理工系の時代
 ここで、多くの皆さんが生まれた年1998年を振り返りますと、その年も、当時は現在と同様「新しい時代の到来」といわれました。「アイ・マック、バイオノート、ウィンドウズ98」と、今思うと懐かしい商品ですが、颯爽と登場しヒットしました。
 しかし、ここ数年のさまざまな変化により迎えつつある「新しい時代」は、主役である私たち人間にその座の交替を迫る変革を内包し、圧倒的なスピードで訪れています。
 2015年2月、人類史上、歴史的な出来事として、「コンピューターが人間を超えた瞬間」の到来も、その変革の大きな要因となりました。画像認識の精度でコンピューターが人間を超えた瞬間でした。
 また、翌2016年には全世界で話題になったオックスフォード大学の「予測論文」「10年後に現存する702の職種の47%がコンピューターに代わられる」との研究内容が発表され、これまで漠然としていた想像が判然とした、分析結果として私たちの前に提示されました。
 そして今年、皆さんの周りを、「モノのインターネットのTOT・人工知能のAI・金融とITを融合したフィンテック」と言った言葉が新聞紙上やネット上を、当たり前のように飛び交っています。家電の遠隔操作など、日常生活のさまざまなインフラに、未来社会を垣間見るシーンも定着して来ました。
 科学技術の超高速進化の一方でイギリスの科学誌「ネイチャー」から指摘を受けるほど日本の科学研究はここ10年間失速し、今、国を挙げて、「理工系人材育成戦略」を策定し、付加価値の高い理工系人材を育成するための取り組みが始まっています。まさに、現代は「理工系の時代」、皆さんが必要とされる時代の到来です。
最先端を走る本学
 このような時代背景の中、本学はいち早く基礎研究の充実を図るために、学部の改組に取組むと共に先端テーマには、それぞれ研究センターを新設。本学の教育目標である「科学技術の厳しい変化に対応できるしっかりした基礎学力を持つ人材の育成」のもと、豊かな教養と専門基礎を学び、創造性を育む実践教育に先進的に取り組んでいます。
 昨年の3月23日、世界に例を見ない一大学とアメリカ航空宇宙局NASAとの直接契約による連携が実現し、世界初の「宇宙からの流星観測」に挑戦するメテオプロジェクトが本格的に始動し、惑星探査研究センターの役割が大きくクローズアップされました。ISS(国際宇宙ステーション)内の超高感度カメラで、撮影された流星の貴重な映像は毎日、学内にあるNASA公認の管制室に直接送られ、その一部流星の映像は、本学の東京スカイツリータウンキャンパスでも公開しています。東京スカイツリータウンキャンパスは開設以来、入場者が60万人を超え、来場者と宇宙との夢のかけ橋になっています。
 次に紹介するのは、未来ロボット技術研究センターの成果です。東日本大震災の直後に福島第一原発の建屋内部で冷温停止に繋がる重要な探査を担ったロボットで千葉工業大学の名前を知った方も多いかと思います。サッカーヒューマノイドリーグでは学生のチームが7度目の優勝を果たし「ロボット学会賞」を受賞。今年7月に名古屋で開催される世界大会での優勝を目指しています。
 昨年12月のことですが、英国のハモンド財務大臣が未来ロボット技術研究センターの最先端の研究成果を展示している本学の東京スカイツリータウンキャンパスを視察に訪れました。ご承知のように、英国は、国民投票でヨーロッパ連合からの離脱を決め、今後は自前の工業力を確立しなければなりません。そのために、日本の工業力から学びたい。なかでもロボット技術で最先端を走っている本学の研究を見たいという、ハモンド財務大臣のたっての希望で、滞在わずか2日間の日程の中で見学が決まったとのことでした。
 この他にも、人工知能とソフトウェア技術をさまざまな側面からの研究開発と社会発展への貢献をめざす「人工知能・ソフトウェア技術研究センター」。人工知能や情報技術を応用して、金融商品や投資情報の研究をめざす「国際金融研究ンター」。日本周辺における海底資源の研究開発の推進が期待される「次世代海洋資源研究センター」。各研究センターと5学部17学科の連携で、皆さんと共に新しい未来に挑戦していきたいと思います。
科学技術者の力
 世界的にも有名な企業であります、京セラの創業者稲盛和夫さんの言葉に、「人生には、近道や魔法の絨毯は存在しない。自分の足で一歩ずつ歩いていかなければならない。その一歩一歩が、いつしか信じられない「高み」にまで私たちを運んでくれる。これが夢の実現に到る唯一確実な方法なのだ」とあります。この言葉の中に科学技術を目指す人たちへのひとつの答えを見出すことができます。皆さんの夢を実現するために、「何を」、「どのように学ぶべきか」の指針にもなるかと思います。
 冒頭申しました千葉工業大学の前身であります興亜工業大学の創設に尽力された玉川学園の小原國芳先生が唱えた「夢の学校論」全人教育を中核に置き、日本第一、世界第一、の教育拠点をめざす新たな創造教育の最高学府を理念の礎として現在に至っております。
 今、それぞれの専門分野に特化した長い歴史と伝統の中で培われてきた研究環境の中で、多くの学友と共に学び、切磋琢磨を重さね、夢の実現をめざし、実りある大学生活を送られることを祈念し、私の祝辞といたします。
 人間社会を豊かにする一番の原動力は科学技術者の力です、頑張ってください。

平成29年4月1日

学校法人千葉工業大学

理事長 瀬戸熊 修

「役に立てよう」思い続けて


次世代海洋資源研・加藤所長が激励
 入学式に続いて、本学の次世代海洋資源研究センター(ORCeNG)の加藤泰浩所長が「大学に入学して何を目指すのか―私は何のために研究してきたのか―」と題して講演し、新入生を激励した=写真
 4月1日付で初代所長に就任した加藤所長は「実は私も今日、千葉工大に入りました」とあいさつ。タヒチ・ハワイ沖の太平洋海底で2011年、世界で初めてレアアースを含む泥の鉱床を見つけ、世紀の大発見と報じられた海洋資源探査について紹介した。
 「地球誕生以来の環境変動に興味があった」という加藤所長は、資源地質学が専門。東大大学院で当初は太古の海底堆積物を起源とする世界各地の堆積岩を研究し、その分析から生命誕生のなぞ解きをしようと研究を進める中で、陸から海にフィールドが移った。
 現在のミッションは本州から1800キロメートル離れた日本最東端の島、南鳥島周辺の深海底に眠る膨大なレアアース泥の資源開発。同じ海底域では昨年、マンガンノジュール(直径約10センチのマンガン酸化物の球体。銅やニッケルの資源になる)が広く密集していることも確認され、鉱床としての価値がパワーアップ。海底5000メートル超での鉱物資源開発は、実現すれば世界初の快挙だ。
 レアアースは電気自動車や発光ダイオード、燃料電池などハイテク製品の部品や新素材の開発に欠かせない希少な鉱物資源。加藤所長は「中国からの輸入に頼らず自前で安定供給できれば、ものづくり国家・日本を再構築する要となる」と開発の意義を説き、「研究は自分のためではなく、子どもたちの未来のため。何かに役に立てようと思い続けることが誰も気づかなかったスイッチの発見につながる」と強調。
 「現代の科学や工学はさまざまな分野が関連するので、幅広く興味を持ちいろいろな分野を学んでほしい。努力した人には必ず未来が開ける。諸君、一緒に未来をつくろう」と締めくくると、会場は拍手に包まれた。
 世界を驚かせたレアアース泥の海底鉱床については、加藤所長の著書『太平洋のレアアースが日本を救う』(PHP新書)が詳しい。