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2016.7.15

「メテオ」観測始まる


世界初、宇宙で2年間
 本学惑星探査研究センター(PERC)が国際宇宙ステーション(ISS)の米国の与圧実験棟で行う「メテオ」プロジェクトの世界初の流星観測が7月7日、スタートした。まず7月28〜29日に活動が極大期になるみずがめ座デルタ流星群、続いて8月12日に極大期を迎えるペルセウス座流星群を本格観測する。
まず2流星群を追う
「メテオ」カメラによる観測始動を喜ぶPERCチーム。(左から)荒井朋子上席研究員、山田学研究員、小林正規上席研究員、千秋博紀上席研究員=津田沼8号館のメテオ運用管制室で
「メテオ」カメラによる観測始動を喜ぶPERCチーム。(左から)荒井朋子上席研究員、山田学研究員、小林正規上席研究員、千秋博紀上席研究員=津田沼8号館のメテオ運用管制室で
 2012年にNASA(米航空宇宙局)からの連携呼びかけで始まった「メテオ」プロジェクト。2014年10月と15年6月の2度、ISSに物資補給船を運ぶロケットが続けて爆発し、搭載されていたPERCの超高感度CMOSカラーハイビジョンカメラも失われた。
 今回観測に使われているカメラは今年3月23日(日本時間)に打ち上げられた。当初は4月から観測を始める予定だったが、ISS側の事情や予期せぬトラブルで観測窓のシャッターが開けられなくなり開始が遅れた。
 5月20日にカメラを地上から直接運用するためのISS上のパソコンと津田沼キャンパス8号館にあるNASA公認のメテオ運用管制室との通信が確立。6月16日のカメラ起動・動作確認を経て、七夕の7月7日にシャッターを開ける許可が下り、観測開始にこぎ着けた。
PERC津田沼管制室が始動
 観測開始直後からカメラで捉えられた散在流星や雷、世界の都市の夜景などの映像は、ほぼリアルタイムでメテオ運用管制室にダウンロードされ、PERCのウェブサイトのメテオプロジェクトのページですでに公開されている。
 また、7月と8月の観測で得られる2つの流星群のデータを記録したハードディスクは、8月末にISSを離れる無人補給船によって地球に持ち帰られる予定だ。
 PERCは今後2年間のメテオプロジェクトの観測で得られる膨大なデータを基に、流星の飛跡や明るさから流星塵の大きさを求めたり、流星発光の輝線の分光観測から、流星塵の化学組成を調べる。これによって流星塵を放出した母天体(彗星や小惑星)の直接探査に迫る科学成果が得られ、地球の成り立ちや地球生命の起源の研究の新たな展開につながることが期待される。
 メテオカメラによる主要流星群などの映像はプロジェクトのウェブサイトのほかユーチューブ、スカイツリータウンキャンパスの大型スクリーンでも公開される予定。
ISS窓に設置
メテオのファーストライト(最初の試験観測)映像から。上部に見えるのはISSのロボットアーム
メテオのファーストライト(最初の試験観測)映像から。上部に見えるのはISSのロボットアーム
ISS米国与圧実験棟の観測窓に設置されたメテオ(7月7日、宇宙飛行士が撮影)=NASA提供
ISS米国与圧実験棟の観測窓に設置されたメテオ(7月7日、宇宙飛行士が撮影)=NASA提供

引火を抑える! 国内初「防爆」ロボ


fuRoと三菱重 共同開発
 未来ロボット技術研究センター(fuRo)と三菱重工業は7月12日、引火性ガスが充満するトンネル内などでも自らが発火源とならない「防爆性能」を備えた遠隔操縦式の移動ロボット「桜II号(防爆仕様)」を、国内で初めて共同開発したと発表した。
「櫻弐號」をベースに
 本学と三菱重工業は2013年8月、原子力分野向けロボットを共同で開発・生産するための技術協力協定を締結。その第一弾である「櫻弐號」はすでに数台が国内の原子力施設や研究機関で稼働している。
 「桜II号」は、東日本大震災で破壊された福島第一原発の内部調査に活躍した「クインス」と、そのソフトウエアを引き継ぐ「櫻弐號」の走破性などの優れた性能と、三菱重工業がもつ防爆ロボット開発のシステムエンジニアリング力を活用して開発された。
 三菱重工業エネルギー・環境ドメイン原子力事業部の大西献主幹技師は会見で「最強のコラボレーションで、これまでにないロボットを生み出せた」と胸を張った。
 また、fuRoの古田貴之所長は「我々はロボットのハードウエアだけでなく、運用や操作者の訓練のための教習まで含めて一貫したシステムとして提供できる態勢を整えている」と強調した。
 「桜II号」の防爆構造は、リチウムイオン電池などを収納した「耐圧防爆容器」を、モーターやコントローラーなどの電気機器とともに外部より高圧の窒素ガスを封入した「内圧容器」でさらに包み込んだ二重方式。引火性ガスの中でも、自らが出す電気火花や熱などで爆発や火災を引き起こす危険性を大幅に抑えることができる。
 このためガソリンやメタンガスなどが充満したトンネル事故の現場などで、換気前でも遠隔操縦(無線・有線)でトンネル内部に進入し、ガスや酸素濃度情報、映像、現場の形状データなどを人に代わって収集することができる。引火性と拡散性がともに高い水素ガスにも対応している。
 fuRoと三菱重工業は今後、防爆性能を備えたロボットアームの開発や自動走行化などにも取り組み、さらなる用途拡大と潜在ニーズの掘り起こしに注力する。
 7月12日、東京都港区港南の三菱重工業品川本社で行われた記者会見には約60人の報道陣が集まり、「桜II号」の走行デモ=写真=では会場から驚嘆の声が上がっていた。