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2015.10.15

坂本研 院生3人が受賞


▼材料科学会とヨウ素学会で
 日本材料科学会が若手研究者を対象に開いた発表会で、坂本幸弘研究室の大学院生2人が相次ぎ受賞。また、ヨウ素学会のシンポジウムでも1人が受賞した。
■菊池佑介さん
 (機械サイエンス専攻 博士前期課程2年)
 日本材料科学会・平成27年度学術講演大会(6月5日、東京・西新宿の工学院大新宿キャンパスで開催)のポスター発表部門で、若手奨励賞を受賞した。
 研究テーマは「高速度工具鋼に被覆したDLC膜の密着性の及ぼす軟窒化処理の影響」
 高速切削などで、硬く摩擦熱に強い高速度工具鋼を生むために、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)膜を成膜する際、軟窒化処理が膜の密着性にどう影響を及ぼすかを調査した。
 軟窒化処理は鋼の耐疲労性を高めるため比較的低温で処理する方法。硬度を高めるラジカル窒化の後に軟窒化処理を施すことで、DLCと鋼の密着性向上が認められた。
 「データを多く取り上げ、見やすいように心がけた」と菊池さん。「受賞できて光栄です。多くの方々に助けていただいた結果で、大変感謝しています」と語った。
■中田朋貴さん
 (機械サイエンス専攻 博士前期課程1年)
 第22回材料科学若手研究者討論会(8月26日、千葉工大東京スカイツリータウンキャンパスで=韓国の研究者と意見交換する「JKMST2015」と同時開催)でプレゼンテーション賞に選ばれた。
 発表論文は「熱フィラメントCVDによるダイヤモンド合成におけるCH4/NH3流量比の影響」
 熱フィラメントCVD(化学蒸着法の一種)でダイヤモンドを合成する時、反応ガスにV族(周期表第15族)元素の窒素を添加すると、電界電子放出特性の向上、硬度の上昇などが期待できる。ダイヤモンド中に窒素を添加することでn型半導体となる。
 中田さんは、異なる基板温度でダイヤモンドを合成する時のCH4/NH3ガス流量比の影響を検討し、窒素含有ダイヤモンドを得る過程を説明した。
 パワーポイントで図表を調整し、発表でいかにわかりやすく伝えるかを心掛けたという。「受賞できて大変うれしい。坂本教授と研究仲間=藤井健人さん、田中一平さん=らの協力、助言のおかげです」と感想を述べた。
■藤巻果織さん
 (機械サイエンス専攻 博士前期課程2年)
 第18回ヨウ素学会シンポジウム(9月16日、千葉大西千葉キャンパスで約230人が参加し開催)で優秀ポスター賞を受賞した。
 「RF(高周波)スパッタリングによるTi‐C‐I膜の作製」を詳細図にまとめ、発表した。
 生体の必須元素の一つ・ヨウ素を含有させた生体材料の創出につながる研究。チタンとポリビニルピロリドンヨード(PVP‐I)含有ポリエチレンを同時ターゲットに、スパッタリング(真空チャンバー内で、ターゲット表面の原子をはじき飛ばして基板に製膜させる方法)し、できた薄膜の組成や特性を評価した。
 その結果、チタン膜中に、ヨウ素を含有させられることを確認。ヨウ素は皮膜表面に均一に分布し摩擦係数が低下したという。
 藤巻さんは受賞の感想を「とても光栄です。坂本教授をはじめ研究室の皆様やお世話になった方々に感謝します」と述べた。
後ろ左が中田さん、右が菊地さん、手前は藤巻さん
後ろ左が中田さん、右が菊地さん、手前は藤巻さん

PM国際資格に8人合格


▼スキルを測るCAPM®に挑戦
 プロジェクトマネジメント(PM)学科の3年生14人が国際資格CAPM®に挑戦し、8人が合格した。
 CAPM®(Certi fied Associatein Project ManagementはPMBOK®ガイドなどのプロジェクトマネジメント標準の策定・普及で知られるPMI(米国プロジェクトマネジメント協会)が認定する国際資格。
 受験者のプロジェクトマネジメントに関する経験、教育、知識を測るもので、法的資格、免許ではないが、PMスキルがプロの域にあると評価される。資格保有者は現在、世界で約2万5000人。
 試験では、パソコン画面に表示される問題150問を3時間で回答する。受験資格は、実務経験を1500時間以上積むか、公式PM研修を23時間受講した者。このため本学では昨年8月、「PPA特別教養講座」の援助を受け、4日間の短期集中研修を開講し、条件を満たした。研修会では、本学PM学科1期生でPM教育・コンサルティングを提供する(株)アスプロスの西田絢子社長が講師を務めた。
 合格者第1号の1人、櫻井拓巳君(PM学科4年)は「学習してきたことをライセンスで証明できて、うれしい。研修会は想像以上にハードだったが、卒業生の先輩から知識をブラッシュアップしていただき、楽しい時間だった。資格取得を通して得た知識を、学会発表や卒業後の実務につなげたい」と語った。
 特別教養講座を運営した田隈広紀PM学科助教は「私もCAPM®を受験したが、かなり難しいと感じた。学生から初めて届いた結果報告メールを開くのに少し勇気が必要だったが、合格していたので本当にうれしかった」と喜んだ。そして「今後も講座を企画し、学生たちに社会から評価される実績を付けてほしいと思っている。我こそはと思う学生はぜひチャレンジし、先輩たちに続いてほしい」と語った。
 今回の合格者8人は次の通り。 ▽山崎将君(遠山研)▽加瀬和成君、佐藤隆平君(久保研)▽田頭翼君(堀内研)▽若月純君(矢吹研)▽櫻井拓巳君、野嶋光司君、松田隆聖君(田隈研)
資格に合格した学生たち
資格に合格した学生たち

鈴木君が奨励賞


▼CFRPの質を高める研究
 機械サイエンス学科・鈴木浩治教授の研究室で炭素繊維強化プラスチック(CFRP)などを研究する鈴木恭平君(4年=写真中央)がANSYS Convergence‐2015日本会議の学生ポスターセッション(9月4日、東京・台場のホテル日航東京で=アンシス・ジャパン(株)、サイバネットシステム(株)主催)で「CFRP積層制振板減衰特性の最適化に関する研究」を発表し奨励賞を受賞した。
 CFRP積層板の性能を落とす要因に、内部振動による層間剥離や層内樹脂割れがあるが、炭素繊維の配向角を変えて振動を減らす特性を高めれば抑えることができる。
 鈴木君らは、層間にダンピングシートを挿入したCFRP積層制振板の振動減衰特性について、繊維配向角を設計変数とした最適化をMOGA(多目的遺伝的アルゴリズム)などを用いて試みた。解析にはANSYS Workbench(解析の各プロセスをつなぐ統合操作環境ツール)を用いた。その結果、振動減衰比を飛躍的に向上させる結果が得られたという。
 ポスター発表では、CFRP材料について一から説明を求める人もいれば、解析方法や結果を詳しく質問する人もいた。鈴木君は「自分の研究を初めて、大勢の前で発表する機会となりました。相手に理解してもらう難しさ、足りなかったことを教わる大切さを学ぶことができ、大きな収穫となりました」と語った。
 ANSYS Convergenceは世界各国で開催され、コンピューター支援技術の業界では最大級の検討会議。

跳べる“竹馬”論文賞


▼南方准教授、電気学会産業応用部門で
 高所作業を補助する機器を開発した未来ロボティクス学科の南方英明准教授が、その仕組みを解析した論文が、電気学会の平成27年産業応用部門論文賞に決まった。9月3日、大分市の大分大旦野原キャンパスで開かれた部門大会で表彰された。
 昨年1年間に電気学会部門誌(和文・英文)に掲載された論文の中で、特に学術・技術に貢献したと評価された。
 掲載論文は「能動足首を有する脚拡張外骨格の開発」=2014年電気学会論文誌D・134巻に収録。
 南方研では2011年から、手を使わず人力のみでも動かせる足首の付いた軽金属製の竹馬のようなものを開発している。
 装置は太ももとすねにベルトで装着し、搭乗者の膝の動きや足首の動きを再現しつつ、脚長を40センチ程度伸ばすことができる。習熟すると階段を上ったり、走ったり跳ねたりできる。壁塗りや電灯交換など高所に手を伸ばす作業に有効という。
 南方研の町浩輔さん(2012年卒・現在は佐川電子運営責任者)らが開発に携わり、作業に適したリンクの組み合わせや人間の膝に合わせた関節機構などを試しながら、考察してきたことが実ったという。
 南方准教授は「開発に関わった学生たち(在学生・OB)に感謝するとともに、今後も面白いものを作っていければと思っています。もっとも、作っただけでは論文賞になりませんので、学生の皆さん(&私?)は数式を恐れずに取り組んでほしい」と話している。