NEWS CIT ニュースシーアイティ

2015.9.15

曽根君 統計検定優秀賞


▼「3級」に挑戦 3人が合格
 ビッグデータの活用が求められる社会で、データの扱い方を問う資格試験「統計検定」3級=6月21日、千葉工大会場で=に、情報ネットワーク学科3年生7人が挑戦。3人が合格し、そのうち曽根悠斗君=写真=が優秀賞を獲得した。
 統計検定は、日本統計学会が中高生・大学生・一般人を対象に、統計の知識や活用力を資格認定する全国統一試験。3級は高校の必修科目「数学I・データの分析」を基に、データ分析に重要な概念の理解と、身近な問題に生かす力を問う。
 山崎治・情報ネットワーク学科准教授と杉山和成・教育センター(数学教室)准教授が進路指導の一環として挑戦を呼びかけた。応じた7人は約半年間、隔月に1回、勉強会に出席し過去問題に沿って指導を受けた。
 3級検定は、基本的概念に加えて▽標本調査▽データの散らばりの指標▽データの散らばりのグラフ表現▽2変数の相関▽確率――などについて、マークシート方式の4〜5肢選択問題約20問を制限時間60分で解く。
 グラフから資料の特徴を読み取る方法や、目的に応じて資料を分析するグラフを使い分けることなどを丁寧に解説してくれた杉山准教授の指導と、曽根君たちの自主努力が実った。
 曽根君は、進路選択に役立つと考え受験。「合格者は受験者の約60%、優秀賞は10%程度というので、勉強の成果がきっちりと形になって、うれしい。進路を見据え、目標を持って行動を起こすことが大切だと感じました」と語った。
 統計検定が認定する能力は、21世紀型スキルとして国際的に広く認められ、米国では高校生約10万人が検定を受験。大学側もその結果を入学選抜に反映させているという。企業が新入社員に学んできてほしい数学分野のトップも、統計学という。
 団体受験を企画した山崎准教授は「データ活用が将来、重要になるという意識を持って、積極的に取り組んでくれた学生の姿勢に心強さを感じました」。杉山准教授は「集まって勉強をすることで受験に対する意欲が高まった。皆にとって良い経験になったのでは」と振り返った。

S−CUBE 軌道投入


▼来月にも流星紫外線の観測始動
「S−CUBE」
「S−CUBE」
 本学惑星探査研究センター(PERC)の超小型衛星「S−CUBE」(エスキューブ)による世界初の流星紫外線観測が10月下旬にスタートする予定だ。日本初の3Uキューブサットである「S−CUBE」はPERCを実施責任機関とし、東北大学と共同で開発する、大学独自の先進的プロジェクト。宇宙惑星探査の新たな方向性を切り開くと期待されている。
 「S−CUBE」を積載した宇宙航空研究開発機構(JAXA)の無人補給機「こうのとり」5号機は8月19日夜、H−UBロケットによって国際宇宙ステーション(ISS)に向かって打ち上げられ、24日、油井亀美也宇宙飛行士がロボットアームを使ってISSとのドッキングを成功させた。
 この後、ISS内に搬入された「S−CUBE」は9月17日午後9時2分、再び油井飛行士の手で日本の実験棟「きぼう」から地球周回軌道に投入された。その後、津田沼キャンパス1号館に設けられた衛星運用室との間で通信が始まる。
 そして約1カ月間、電力や通信、観測機器の健全性確認などの初期運用を行った後、10月下旬から約1年間、流星紫外線を観測する。
 観測運用は1号館の屋上に設置された直径2メートルのパラボラアンテナを通して、同館19階に設けた衛星運用室で行われる。この地上運用システムは、本学が02年に開発した日本初の大学衛星である鯨生態観測衛星「WEOS」の地上局を改修したもの。
 「S−CUBE」が観測の標的とする流星は、太陽系が誕生したころにできた天体(太陽系始原天体)である彗星や小惑星の塵が、地球の大気と衝突して生じる現象。しかし、流星が発する紫外線はオゾン層によって遮蔽されるため、地上からは観測できない。
 そこで宇宙空間に浮かぶ「S−CUBE」から流星の紫外線を観測することで、その発光メカニズムを解明し、さらに波長の分析から流星塵成分の新たな情報が得られると期待されている。
 なかでもこのミッションで重視されているのが、生命必須元素の1つで、まだ観測例がない硫黄の輝線の同定(硫黄の検出)だ。もし硫黄を含む流星が見つかれば、その母天体に硫黄が存在することになり、宇宙起源の有機物探査につながる可能性がある。
 「S−CUBE」による観測が10月下旬に予定通り始まれば、最初に遭遇するのはハレー彗星を母天体とするオリオン座流星群となる。
 一方、ISSからの可視光による流星の長期観測プロジェクトで、「S−CUBE」プロジェクトと相互補完関係にある“兄弟ミッション”の「メテオ」は、3度目となる年度内の打ち上げに向けて順調に準備が進んでおり、同時観測への期待が高まっている。
■“宇宙ゴミ”観測 装置も順調作動
 PERCがJAXAと共同開発し、「こうのとり」5号機の外側に取り付けられている微小宇宙デブリ観測装置(CDM)も、ISSとのランデブー中から順調に作動している。
 CDMはJAXAが開発した宇宙環境観測装置(KASPER)の一部。宇宙には老朽化したり、事故や故障で制御不能となったりした人工衛星やロケットの部品などが無数に浮遊している。大部分は大気圏に落ちて燃え尽きるが、人工衛星やISSなどに衝突すれば大事故につながる可能性がある。CDMは100マイクロメートル以下の微小な宇宙ゴミが衝突した際の振動をとらえ、電気信号に変換する装置。
 「こうのとり」5号機がISSでの任務を終えて切り離され、大気圏に落下するのに伴ってCDMも一緒に燃え尽きる。
1号館屋上のアンテナ
1号館屋上のアンテナ

卒研が奨励賞に


▼機サの小山さん・高村さん
(左から)高村さん、小山さん、瀧野教授
(左から)高村さん、小山さん、瀧野教授
 機械サイエンス学科の小山大貴さんと高村真さん=ともに瀧野日出雄研究室・今年3月卒業=が、砥粒加工学会主催の卒業研究発表会に瀧野教授と連名で発表した論文「焼結金属の旋削加工における工具摩耗特性」が、工作機械技術振興財団が選ぶ26年度(第36次)工作機械技術振興賞のうち奨励賞に決まった。6月22日、東京・霞が関の東海大校友会館で開かれた授賞式で表彰された。
 小山さんと高村さんは瀧野教授の指導の下、組成の異なる焼結金属を種々の切削工具で旋削加工して、切削工具の摩耗特性を調べた。そして焼結金属に含まれる各成分が、工具摩耗にどう影響するかを詳細に明らかにした。
 瀧野教授は「就職する学生は、学内の卒論発表が終われば最後の春休みを満喫するのが普通ですが、受賞した2人は卒論発表後も何日も大学に来て学会発表の準備をしていました。その努力が報われて本当によかったと思います」と語った。卒業後、小山さんは工業用精密ゴム部品開発の興国インテックに、高村さんは精密機械部品生産の平和産業に勤務している。
 工作機械技術振興財団は、工作機械技術に関する各種学会の研究発表論文集の中から、工作機械技術振興賞として2つの賞(論文賞、奨励賞)を贈っている。奨励賞は卒業研究を対象とするものので、今年度は、日本機械学会、精密工学会、砥粒加工学会で発表された154件の中から8件が選ばれた。

日本人初IEEE論文賞


▼山崎教授 誘導電動機の新等価回路提案
山崎克巳教授
山崎克巳教授
 山崎克巳・電気電子情報工学科教授の研究室と(株)安川電機(本社・福岡県北九州市)が、IEEE(アイ・トリプル・イー=米国電気電子工学会)のTransactions on Energy Conversion(電力・エネルギー部門論文誌)に発表した論文が、IEEEの2015年論文賞に選ばれた。IEEEは世界最大の電気電子情報技術者の学会で、同部門論文誌での日本人の受賞は賞創設以来、初めてという。
  論文は「Circuit Parameter Determination Involving Stray Load Loss and Harmonic Torques for High Speed Induction Motors(漂遊負荷損と高調波トルクを含む高速誘導電動機の回路パラメーターの決定)」。
  山崎教授の説明によると、交流モーターで代表的な誘導電動機は、新幹線の主電動機や各種生産設備などに幅広く用いられ、多くの先進工業国で全電力の約半分を消費している。効率よく作動させるため、電動機の特性算定や制御には等価回路が用いられるが、近年普及してきたインバーター(交流変換装置)で高速運転を行う場合、特性算定精度が大幅に悪化することがわかってきた。
  これを改善するため山崎教授は、電磁界解析結果を分析し、新しい等価回路を考案。安川電機の協力で実機試験を行い、提案回路が妥当で有用であることを明らかにした。安川電機との共同研究の成果として2013年、IEEE電力・エネルギー部門論文誌に発表した。
  同論文誌では毎年、過去3年間の掲載論文について、論文誌編集委員会が投票で3件を最良論文と認定している。山崎教授の論文は今年の投票で2位の票を集め、受賞が決まった。
  表彰式は7月30日、米国デンバーで行われた。論文誌編集長から賞状が授与された後、山崎教授は5分間、受賞スピーチを行った。