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2015.3.15

PM技法で新価値創造を


■R&D PM研究会 為末氏ら招いて第2回シンポ
約70人が参加したシンポジウムの会場
約70人が参加したシンポジウムの会場
 プロジェクトマネジメント(PM)学科の久保裕史教授を中心に活動している「R&D PM研究会」が2月13日、「第2回R&Dプロジェクトマネジメントシンポジウム」を東京スカイツリータウンキャンパスで開催。産業界や大学、官公庁などから約70人が参加した。
 この研究会は2012年6月に「ものづくりR&DPM研究会」として発足。研究開発にPM技法を適用することで、革新的な製品やサービスを次々と産み出す仕組みや組織作りの知識体系構築を目指して活動してきた。最近、ものづくりを伴わないサービスが幅広い分野で増えていることから、本年度から「ものづくり」の冠を外して活動域を広げている。
 今回は「価値創造をもたらす研究開発(R&D)プロジェクトマネジメント(PM)」をテーマに、1年間の成果を報告し、今後の活動の方向性を議論した。
 第1セッションでは、400メートルハードルの日本記録保持者で、2度の世界選手権銅メダルに輝いた為末大氏が「アスリート能力開発とプロジェクトマネジメント」と題して講演。「走る哲学」とも称された為末氏は、その経験を元に、いかにして、「目的」「失敗」「満足」というハードルを乗り越えながら自己成長を遂げてきたかを、親しみやすい独特の口調で語りかけた。
 明確な目的を掲げ、限られた時間と環境の下で試行錯誤を繰り返しながら、技術に磨きをかけて、目標値を具体化していく能力開発のプロセスがR&DPMのプロセスと通じるものがあり、会場の共感を呼んだ。
 次いで立命館アジアパシフィック大学AP‐IMACセンター長の中田行彦教授が「すり合わせ型R&Dのプロジェクトマネジメント:シャープの液晶開発を解きほぐす」と題して講演。日本のものづくり企業は、その強みである「すり合わせ」を生かした「グローバル化」を目指すべきであり、それには「すり合わせ型R&Dプロジェクトマネジメント」が欠かせないと、シャープの事例から得た豊富なデータに基づいて解説した。
産官学がグループ報告・討議
講演する為末氏
講演する為末氏
 第2セッションでは本年度の研究会の成果が4つのワーキンググループ(WG)から報告された。
 まず「啓発WG」(リーダー=本学・下田篤准教授)からは、R&DにおけるPMの適用範囲拡大を目指して、共通の枠組みの定義や業種別特徴の分析結果とともに、広く活用可能なアセスメントチェックリストの作成状況が報告された。
 「定義・ツールWG」(リーダー=リコー・清田守氏)からは、リコーの事例をもとにR&DPMのプロセスに対応する9つのツールが紹介され、今後これをステージゲートに対応させて体系化していくことが報告された。
 「ステージゲート(SG)WG」(リーダー=金子浩明・グロービス経営大学院教授)からは、R&DへのSG導入に伴う固有の問題解決を図るため、定義・ツールWGと共同で、日本型SGのプロトタイプを開発中であることが報告された。
 4つ目の「人材育成WG」(リーダー=本学・五百井俊宏教授)からは、R&DPM人材育成の重要性と、その具体的手段とその評価法研究の進捗が報告され、さらに今後P2M(Project & Program Management)理論に基づいて研究を深めていくことが報告された。
 第3セッションは「価値創造のためのR&DPMとは」がテーマのパネルディスカッション。久保教授がコーディネーターを務め、パネリストは中田教授▽横森清氏(JST)▽下村道夫教授(本学PM学科)▽内平直志教授(北陸先端科学技術大学院大)▽山崎晃教授(本学金融・経営リスク科学科)の6人。
 それぞれ前職が、ものづくり系やIT系の大手企業、経産省であることから、産官学の複眼的視点で、R&DPMをいかに価値創造に結び付けるか、その思いをショートプレゼンに込めて発表した。
 研究会は来年度からさらにオープン化され、R&DPMの知識体系づくりを着実に推し進めていく計画だ。

「はやぶさ2」を語る


■千秋上席研究員 “地域の縁”墨田区で
会場からの質問について司会者と話し合う千秋上席研究員(右)
会場からの質問について司会者と話し合う千秋上席研究員(右)
 惑星探査研究センター(PERC)の千秋博紀上席研究員が2月14日、東京都墨田区のすみだ生涯学習センター(ユートリヤ)で開かれた天文学ファンの集まりで「はやぶさ2のすべて」を熱く語った。この講演会は、東京スカイツリータウンキャンパスに惑星探査ゾーンをもつ本学と地域的なつながりを求める墨田区側の希望で実現した。本学が目指す「地域との共生」が東京都内へも広がりを見せ始めた。
 「したまち天文学」と名づけて1年間に2回程度開かれているこの講演会は、墨田区から委託を受けたNPO法人すみだ学習ガーデンが運営している。墨田区が進めている区民のための生涯学習活動の一環で、宇宙飛行士の山崎直子さんを講演に招いたこともある。
 千秋上席研究員のこの日の講演のタイトルは「はやぶさ2打ち上げ成功!〜52億キロの旅の始まり〜」。昨年12月3日に打ち上げられ、小惑星「1999JU3」を目指して宇宙の旅を続けている「はやぶさ2」。地球への帰還は2020年の年末の予定だ。
 千秋上席研究員は、2003年に小惑星「イトカワ」に向けて打ち上げられ、2010年にサンプルリターンを成し遂げた「はやぶさ」初号機の話から説き起こし、「はやぶさ2」打ち上げの目的とそれを達成するための構造や搭載機器などについて分かりやすく解説。とりわけ「1999JU3」の内部物質を採取するときに使う衝突装置(SCI)やレーザー高度計(LIDAR)など、PERCが開発に貢献したり科学的検討に参加した5種類の機器について、熱心に会場の参加者に語りかけた。
 また、講演の後、参加者から出された質問に答えながら司会者と話し合うコーナーでは、「はやぶさ2が故障したら、どうやって修理するのですか?」「イオンエンジンは4つあるが、どうして全部同時に使わないのですか?」といった質問に、「修理はできないので、性能を二重にしたり、それでも故障が起きたらどうリカバーするか、あらかじめ考えています」「イオンエンジンは少しずつ劣化するので、交代で休ませるのです」などと答えていた。
 会場には親子連れの姿もあり、閉会後、千秋上席研究員にサインを求める小学生も。“未来の宇宙科学者”に「千葉工大」が強く印象づけられたようだ。

坂本研などブース出展


■サーテック2015開く
 表面技術の最前線を紹介する「SURTECH(サーテック)2015‐表面技術要素展」(表面技術協会など主催)が1月28〜30日の3日間、東京都江東区有明の東京ビックサイトで開催された。日本のものづくり産業を支える基盤技術の総合展示会=写真
 主催側の依頼で本学も、坂本幸弘・機械サイエンス学科教授の研究室がグループ展示として▽CVD(化学気相蒸着法)によるダイヤモンド合成、真空装置やその部品、真空計、陽極酸化を施したアルミニウム摺動部材の展示▽院生らによるイオンプレーティング(真空メッキ)実演――などを協力会社と出展した。
 また、千葉工大ブースとして、坂本教授のほか機械サイエンス学科の井上泰志教授、電気電子情報工学科の小田昭紀教授がエレクトロクロミック材料やダイヤモンドライクカーボン成膜用プラズマ、硬質炭素系材料の合成に関する研究などを展示した。
 サーテックは、国際ナノテクノロジー総合展など13の展示会と同時開催され、特別講演やセミナーも開かれてビジネスマッチングの場を提供。毎年5万人近くが来場している。