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2014.5.15

柴田准教授に論文賞


材料技術研究協会 生体適合材料を新合成
柴田裕史准教授
 人工骨など生体関連材料を研究している生命環境科学科の柴田裕史准教授=写真=が橋本和明教授と連名で材料技術研究協会の協会誌「材料技術」に発表した「両親媒性高分子存在下における形態制御リン酸カルシウム粒子の調製」に関する2報が同協会論文賞に決まった。4月26日、東京理科大学神楽坂記念講堂で表彰された。
 ハイドロキシアパタイトに代表されるリン酸カルシウムは、生体適合性セラミックスとしてドラッグデリバリーシステム(DDS)のキャリアーや骨補填材料への応用が注目されている。だが合成途中に晶析反応が進んで粒子構造がアスベストに似た針状構造を持つ場合があり、生体に悪影響を与えかねない。そのため構造的に安全性の高い球状粒子の合成が望まれていた。
 柴田准教授は論文で、まず、細胞膜を構成するリン脂質のように両親媒性(一端は水に馴染み、他は水に馴染みにくい)を有する高分子がある中でリン酸カルシウムを合成することで、DDSキャリアーに期待できるカプセルのような構造を持つハイドロキシアパタイトの合成に成功したことを報告した。
 次に、蛍光バイオイメージングなどに使われているポリスチレンに着目し、同様の高分子存在下で、ポリスチレン表面にだけリン酸カルシウムを被覆したコア‐シェル構造の「ポリスチレン‐ハイドロキシアパタイト粒子」の合成に成功したことを報告した。
 両親媒性高分子を用いた形態制御リン酸カルシウムの合成についての知見が乏しく、新合成方法として高く評価された。
 柴田准教授は「リン酸カルシウムに関する研究は本学着任時(2010年度)から橋本教授にご指導いただきながら始めた研究なので、受賞は非常にうれしく、今後の励みになります。今後も界面化学的手法で生体材料、触媒材料などへの応用が可能な新材料を精力的に開発していきたいと思います」と語った。
 材料技術研究協会(元島栖二会長)は、材料に関する科学技術の発展と実用化のために活動。研究発表会やセミナーを開き、優れた研究・技術に論文賞、進歩賞、技術賞などを授与している。

佐野教授に感謝状


機械学会 関東支部の発展に貢献
佐野正利教授
 機械サイエンス学科の佐野正利教授=写真=が、日本機械学会関東支部創立20周年を記念し3月14日、東京農工大小金井キャンパスで開かれた同支部の記念式典で感謝状を贈られた。
 感謝状によると佐野教授は同支部千葉ブロック設立当初から長年、運営委員、商議員、支部幹事、メカトップ関東編集委員長、千葉ブロック長などを務め、学会と支部の発展に大きく貢献した。
 佐野教授は熱流体工学が専門で、マイクロ熱交換器の性能向上など、熱エネルギーの効率よい移動・制御を研究。本学と千葉ブロックが開く公開講座の講師も長年にわたり務めた。機械学会の流体工学部門貢献表彰、ターボ機械協会からも論文賞などを受賞。昨年1月、日本機械学会フェローに選ばれている。

「櫻壱號」 日本原電が導入


本学発、広がる原発対応技術
「櫻壱號」を記者たちに説明する古田所長
「櫻壱號」を記者たちに説明する古田所長
 本学未来ロボット技術研究センター(fuRo)が独自開発した災害対応ロボット「櫻壱號」が、日本原子力発電(株)(日本原電)の「原子力緊急事態支援センター」(福井県敦賀市)に導入され、4月17日発表された。古田貴之fuRo所長と一緒に記者会見に臨んだ宮川博光常務理事は「これを機に、本学発のロボットが世界の原子力発電所に標準装備される日がくることを期待している」と抱負を語った。
 「櫻壱號」は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が2012〜13年度に約10億円の予算を投じて実施した「災害対応無人化システム開発プロジェクト」の一環としてfuRoが開発した災害対応ロボット「SAKURA」の知見を基に、新たに開発された。今年1月、本学と三菱重工業との間で製造・販売契約が結ばれた「櫻弐號」の兄弟機。
 今回、日本原電に納入されたのは、本学が提供した技術を基に(株)日南(堀江勝人社長)が事業化した「原発対応版櫻壱號」。
 日南は自動車や家電など先端機器のプロトタイプ開発と製造に優れた技術と実績をもつ会社。fuRoがこれまでに研究・開発したヒト型ロボット「モルフ3」や、自動車技術とロボット技術を融合させた「ハルキゲニア01」、カブトガニのようなスタイルで、ビークル、アニマル、インセクトと3つのモードに“変身”する「ハルクU」などを実際に製造した。
 「原発対応版櫻壱號」は、1幅70センチの階段の狭い踊り場でも旋回でき、斜度45度の階段でも昇降できる1約8時間の連続走行が可能1放射線、温度など建屋内部の調査に必要なさまざまな計測機器を搭載できる1高性能カメラによって、リアルタイムに現場の状況を監視できるD高い防水性能を備え、深さ1メートル未満の水中で30分間活動しても問題ないことを確認――などの性能を備えている。
 「原子力緊急事態支援センター」は日本原電が2013年1月に設置した組織で、1年365日、24時間、原子力緊急時に対応できる体制を整備している。しかし、同センターがこれまでに導入した遠隔操作可能なロボット3台はいずれも米国製だった。
 日南は競争入札の結果、国産ロボットとして初めて「櫻壱號」の納入を決めた。また、fuRoが開発した模擬操縦訓練が可能な「災害対応ロボット操縦訓練シミュレータ」も活用されることになった。
 古田貴之fuRo所長の話 「櫻壱號」は事故が起きた原発建屋の内部など、人が立ち入れない極限の環境下で情報収集するための先行探査型の遠隔移動ロボットで、目的に応じてセンサーを追加搭載するなど、用途に応じて改良を施すことを想定しています。本学は今後、「櫻壱號」の後継機など、より高度なロボットの研究開発を進めると同時に、日南と協力して「櫻壱號」の用途拡大を進めていきます。

AreaT、Uで心拓塾


ロボット所長とアニメ監督
古田&河森 ドリーム対談
心拓塾で。左が古田所長、右が河森さん
心拓塾で。左が古田所長、右が河森さん
 《各界のヒーローと一緒に親子が楽しく学ぶ 新しい学びのカタチ》をキャッチフレーズに活動している「心拓塾」(ヒーローズエデュテインメント(株)主宰)が4月13日、東京スカイツリータウンキャンパスで開かれ、未来ロボット技術研究センターの古田貴之所長と、アニメ『マクロスF』の総監督などで人気のビジョンクリエーター・河森正治さんの“ドリーム対談”が実現した。
 新学期最初の心拓塾に参加したのは、応募した小学生とその父母など30組。参加者たちはまず古田所長の案内で「AreaTロボット技術ゾーン」と「AreaU惑星探査ゾーン」を見学。「ステップタップ」や「ムーンウォーカー」などを楽しんだ後、「バルキリーVF‐25F」の展示コーナーでは、特別にフェンスの中に入れてもらって、実物にタッチ。戦闘で付いた傷まで“再現”されていることに驚きの声をあげていた。
 河森さんがデザインした「バルキリーVF‐25F」は、航空機「ファイター」と人型「バトロイド」、その中間の「ガウォーク」の3形態に変形する。展示されているのは「ガウォーク」の前半部で全長約9メートル、全幅約8メートルの実物大サイズ。
 「この架空のバルキリーをいつかは宇宙で本当に動くようにしたい」という古田所長と河森さんの思いを込めた「マクロスfeat.CITプロジェクト」も進行中だ。
“ドリーム対談”のテーマは「いかに子供たちの好奇心の芽を摘まずに、創造力を育むか」。
 「勉強しろとうるさく言われて取った100点は零点の価値しかないが、自分から努力して取った80点には200点の価値がある」「好きなことは決して諦めないでやり遂げよう。嫌いなことはとっととやめよう」(古田所長)
 「農薬も肥料も使わず耕しもしない自然農法こそが、本物の作物を育てる」「あらかじめ解答が用意されている○×式の教育が日本人の学力を低下させ、いまその子供たちが応用力を著しく低下させている」(河森さん)
 2人の含蓄たっぷりの言葉に、参加した父母たちはうなずいていた。