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2013.5.15

有機材料研究・冨塚さんに
笹川科学研究助成金


冨塚真義さん
 大学院で有機合成化学を学んでいる冨塚真義さん(生命環境科学専攻修士2年・環境有機材料化学研究室=写真)の研究が、財団法人日本科学協会の平成25年度笹川科学研究助成事業に選ばれた。上限100万円までの助成金が与えられる。
 テーマは「イソシアニド‐アセチレン環化反応を用いた新規1、8‐ジアザペンタセン誘導体の合成と特性」。
 有機ディスプレーや有機EL、太陽電池などに共役系有機分子が使われ、中でもベンゼン環が直線状に縮環したアセン型が注目されている。共役系に窒素や酸素、硫黄を組み込む(ヘテロ芳香族)ことで新規の性質が期待できる。
 冨塚さんは柴田充弘教授・島崎俊明助教の指導の下、アセン骨格に窒素を含む芳香環を縮環したジアザペンタセンを合成し、それを物性解析することを計画した。構造と特性の関係性を解明し新材料合成や分子設計に役立てることが目標だ。
 ペンタセン誘導体の合成は、有機薄膜トランジスタの実現などにつながるが、環の数が多いため難しい。合成できるまで諸条件を試し、ひたすら実験を繰り返す。合成できなければ成果はゼロ。そこが苦労で、楽しいところでもあるという。
 昨年度は学術、実践の両研究部門に計1195件の応募があり325件に助成が決まった。冨塚さんが申請した一般科学研究の化学系には若手研究者(大学院生以上)138件が応募し40件が採択された。
 助成研究の奨励会は4月26日、東京都港区赤坂のANAインターコンチネンタルホテルで行われた。大島美恵子科学協会会長から冨塚さんらに採択書が授与された。
 冨塚さんは「何も結果を出せていない現状で助成金をいただけるとは思っていませんでした。将来を期待されてのことだと思うので、今まで以上に研究に力を注ぎたい」と喜びを語った。

倉斗助教が建築学会奨励賞


オープンプラン型学習環境の継続調査研究で
倉斗綾子デザイン科学科助教
 学校建築に関し、倉斗綾子デザイン科学科助教=写真=が筆頭著者として発表した論文が2013年日本建築学会奨励賞に選ばれた。日本建築学会が4月15日に発表した。
 論文は「使われ方の経年変化および教師の評価からみたオープンプラン型学習環境の意義」(2011年6月の日本建築学会計画系論文集第76巻第664号に収録)。橋本都子デザイン科学科教授、上野佳奈子明治大学准教授と連名で執筆した。
 廊下脇に並ぶ従来型教室に対し、オープンプラン型とは、オープンスペースを可動パネルなどで仕切って生み出す柔軟で開放的な学習空間。
 倉斗助教は大学院時代から学校建築を中心に研究。論文では公立小3校を長期間、継続観察し、現場教師の評価に基づき「オープンプラン型」の意義を教育面、環境面から検討。また、オープンプラン普及当時にはなかった教育現場の今日的課題などを踏まえ、これからの教育環境計画のあり方を提案した。
 建築学会は受賞事由を「10年以上追跡調査し、オープンプラン型学習環境が学校の運営方式や教師意識の変化と関係し合って変化する様を明らかにした。また、当初の意図以外の使い方を教師が発見的に行っていることなどを考察、多くの知見を明らかにした功績は大きい。対象を継続して見つめ続けることは研究者としての使命でもあり、とりわけ建築計画研究に望まれる姿勢である」としている。
 授賞式は8月30日の2013年度建築学会大会(北海道大学で開催)で。
 倉斗助教は「自分の研究姿勢を認めていただけたようで本当にうれしいです。論文執筆などで背中を押してくださった橋本教授や研究仲間、サポートしてくれた家族のおかげです。今後もフィールドへの想いを忘れずコツコツと研究に励もうと思います」と語った。
 倉斗助教は研究成果を実際の学校づくりに生かすよう努力している。
 大震災被災地・岩手県陸前高田市の統合中学校建設プロジェクトや島根県出雲市の中学校建て替え案、後世に残り得る建築を目指す熊本アートポリス事業の小中一貫校設計やワークショップに計画アドバイザーとして参加し、実証と研究の両輪で活躍している。
 今年は滋賀県守山市が公募した市立守山中学校校舎の改築設計コンペで、石原健也建築都市環境学科教授(デネフェス計画研究所)の応募案作成に計画アドバイザーとして参画、最優秀賞を獲得した。開放的な校舎空間を目指したもので、2014年度着工を目指し設計を進めている。
<守山中学校改築>開放的なコミュニケーション空間の提案=写真提供・石原健也建築都市環境学科教授
<守山中学校改築>開放的なコミュニケーション空間の提案
=写真提供・石原健也建築都市環境学科教授

杉浦さん学術奨励講演賞


表面改質の研究で
杉浦祈さん
 今春、機械サイエンス専攻修士課程を修了した杉浦祈さん=写真=が卒業直前、表面技術協会第127回講演大会(3月18〜19日、埼玉県南埼玉郡宮代町の日本工業大学宮代キャンパスで開催)のポスターセッションで、優れた発表を行ったとして第19回学術奨励講演賞を受賞した。
 杉浦さんは坂本幸弘研究室で、プラズマを用いた表面改質を研究していた。発表論文は「ラジカル窒化による鋳鉄の表面改質における前処理の影響」。
 窒化とは、鉄鋼材料やチタン合金の表面に窒素を浸み込ませ、表面を硬化させて耐摩耗性や耐食性、耐熱性などを向上させるもの。ラジカル窒化はプラズマにさらして窒化させる方法に改良を加えた新技術。高速度工具鋼や合金工具鋼などの処理に適し、また、硬質膜形成と複合処理して硬質膜の特性を向上させることができる。
 杉浦さんは鋳鉄について表面改質を研究。鋳鉄は対摩耗性に優れ機械の回転部などに使われる半面、溶融点が低く鋼よりもろい。杉浦さんは鋳鉄をラジカル窒化する前に、表面の清浄化を目的に水素プラズマでエッチング(不要原子を除去)を施すことで、遊離炭素が除去されて窒化が進行するために硬さが向上し、未処理と同等の摩擦係数のまま高硬度が得られることを明らかにした。
 データを大きく取り上げ、見やすいポスターに仕上げた。説明文が少ない分、口頭で丁寧な説明を心掛けたという。
 杉浦さんは「学生生活最後の学会で研究成果が認められ、大変うれしく思います」と感想を寄せた。

クインスが受賞


日本機械学会賞(技術)
クインス2号機
クインス2号機
 東日本大震災の津波で破壊された東京電力福島第1原発内でモニタリングロボットとして活躍している本学未来ロボット技術研究センター(fuRo)の「Quince(クインス)」が2012年度「日本機械学会賞(技術)」を受賞。クインス開発チームが4月19日、東京都港区の明治記念館で開かれた同学会定時総会の会場で表彰された。
 クインス受賞は第5回ロボット大賞「社会貢献特別賞」(昨年10月)に続く快挙。
 機械学会賞は日本の機械工学・工業の発展を奨励する目的で、日本機械学会が1958年に設けた。論文・技術・技術功績の3分野があり、クインスは技術分野での表彰8件の1つに選ばれた。
 クインスが高く評価されたのは、高濃度の放射能で汚染され、人が立ち入ることのできない原子炉建屋内でのモニタリング活動。瓦礫や段差、急傾斜の階段などを走破する走行機能、小型で耐久性に富みメンテナンスフリー、防水・防塵・防爆に加え、強い放射線に当たっても電子部品が故障しない耐放射線特性を備え、有線/無線ハイブリッドシステムを駆使した遠隔操作で建屋内での情報収集活動を行った。
 また、複雑で熟練した技術を求められるこれらの遠隔操作をやりやすくするためのヒューマンインターフェースを開発し、これを使ったオペレーターの養成に取り組んだことも評価された。
 福島第一原発事故の冷温停止と廃炉に向けた収拾活動には、今後も遠隔無人操縦の災害対応ロボットの活用が不可欠だ。開発スタッフは「クインスから生まれた新技術が日本の安全とさらなる発展に寄与できると確信しています。今回の受賞を励みに今後も研究に邁進します。ご協力いただいた皆さまに深く御礼申し上げます」と話している。