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2013.4.15

高速衝突実験室
超高速の現象をナノ秒単位で検証


PERCが開所式 世界トップ級
発射装置を前に(右から)小宮学長、松井所長、瀬戸熊理事長
発射装置を前に(右から)小宮学長、松井所長、瀬戸熊理事長
 本学は3月13日、津田沼校舎・旧工作センター内に最新の二段式軽ガス銃を備えた「高速衝突実験室」を開設した。
 惑星探査研究センター(PERC)が、天体の衝突シミュレーションによって天体の起源などの解明を目指すもので、開所式には小宮一仁学長、瀬戸熊修理事長、松井孝典所長、研究員らが出席して開所を祝った。
 開所式で松井所長は「昨年から計画されていましたが、無事に実験室が立ち上がりました。大学レベルではありえない実験室で、大学側のご理解、スタッフの協力のたまものです」と、喜びを語った(7面に関連講演記事)。発射デモンストレーションも行われ、黒澤耕介研究員が機能を説明した。
 特注の二段式軽ガス銃は、直径4.6ミリの弾丸を秒速約9キロメートルまで加速できる(ライフル銃は秒速約300メートル)。計測機器には時間掃引型高速分光計、高速ビデオカメラ、四重極質量分析計などを備え、さまざまな物理・化学計測を行うことができる。
 地球や惑星の形成時には小天体が惑星や衛星の表面に高速で衝突、その結果として、大気や海、生命の材料物質がつくられる。この過程を解明するため高速衝突銃を用いてクレーター形成や衝突に伴う脱ガス、発光などを測定。そのほか、
 1人工衛星搭載の宇宙塵捕集機器の新規開発。宇宙塵とは小惑星、彗星を起源とする宇宙に漂う塵のこと。小型衛星でそれらを無傷回収できれば、小天体の成り立ちを知ることができる。
 2「はやぶさ2」などで予定されている衝突探査のための基礎データ取得=小天体から地表物質を回収する際、新鮮な試料を得るため、衝突により地表をうがち、地中の試料を回収する。そのためのテスト。
 3天体衝突現象の理解を目指した基礎実験=地球史が経験してきた天体衝突では、超高温の衝突蒸気雲がつくられる。この衝突蒸気雲中での物理、化学過程を理解することが必要である。
 PERC研究員を含むチームが、恐竜絶滅は天体衝突によって引き起こされたと結論付けたが、逆に原始地球での生命の起源にも、天体衝突が重要な役割を果たし得たと考えられている。
 「我々はどこから来たのか? 我々は何者か? 我々はどこへ行くのか?」というアストロバイオロジーの問いかけに答えるために、天体衝突現象の解明に挑む。
実際に球が撃ち込まれて出来たクレーターの様子
実際に球が撃ち込まれて出来たクレーターの様子

新習志野キャンパスに名称変更


津田沼の建物名も
 本学は芝園キャンパスを、4月1日から「新習志野キャンパス」に名称変更した。
 また、津田沼キャンパス内の建物名を、次のように変更した。
 ▽新2号棟を「1号館」に。新1号棟を「2号館」に。新学生ホール棟(学生食堂・購買)を「3号館」に。
 (4〜8号館は変更なし)

科学博物館 無料で


パートナーシップ継続入会
 本学は「国立科学博物館大学パートナーシップ」に今年度も入会した。この結果、本学学生は国立科学博物館=写真(画像提供:国立科学博物館=東京・上野公園)のほか、同館付属自然教育園(東京都港区)、筑波実験植物園(茨城県つくば市)に、学生証を提示するだけで無料で入館(入園)できる。
 今年度は企画展(無料)として「江戸人展―からだが語る『大江戸』の文化―」「日本のアザミ展(仮称)」「砂漠とくらし展(仮称)」が開催されるほか、特別展(600円引き)の「グレートジャーニー 人類の旅」「深海」などが開催予定。
 *詳細は国立科学博物館ホームページ「大学パートナーシップ」をご覧ください。

活躍する校友


度量広く、先を読む
夢追い あきらめず
(株)きしろ会長
松本 好雄(まつもと よしお)氏(75歳)
(工業経営学科 昭和37年3月卒)
松本 好雄氏
「学生は少し生意気くらいがいい」と語る松本さん
 戦艦「大和」の砲身を削った大型旋盤と競走馬たち。兵庫県明石市の鋳鍛鋼品加工メーカー「きしろ」会長、松本好雄さんは時代の先を鋭く読む、たぐいまれな多才の人である。
 瀬戸内海の鯛で有名な明石市で生まれ、高校まで過ごした。父は、戦前に船舶用エンジンの製造、戦後はディーゼルエンジンのクランクシャフトなどの切削加工へ転じた「きしろ」のオーナー。工場へ出入りし、自ずと理系に。本学ではクラブなどに属せず、マイペースで卒業まで6年を要した。「いまでも『試験の答案が書けへん』って夜うなされるんですわ」と笑う。
 卒業研究のテーマは、「自動車部品プレス加工工程の短縮」。千葉県内の工場へ通い、引率の教授や工場の経営者とマージャンで親交を深め、楽しい実習時間を送ったらしい。
 下宿のおやじさんがJRA(日本中央競馬会)の中山競馬場へ案内してくれたのは、卒業研究よりいくぶん前のこと。すごい観客で、さっぱり前は見えない。が、目をスタンドの上方へ。のどかに見物している一団がいる。馬主席である。「いつかあそこに座りたいもんや」と心に誓ったという。
 勝ち馬投票券は当たったり、外れたり。この頃のエピソード。下宿近くの銭湯に友人の分まで含め2万円近い風呂代、そしてパン屋にもほぼ同額のパン代をため込んだ。びっくりした母親が頭を下げつつ払って歩いたという。らい落な“坊ちゃん”であった。
 「帰って来い」との声で、卒業と同時に父のもとへ。間もなく本学での同級生を一人、「きしろ」へ誘った。既にリタイヤしているが、右腕として専務で活躍していた。
 造船業は海運の動向を敏感に映す。会社合併もまれではない。営業担当だった7年目。ある造船所のシャフト切削部門が合併騒ぎで発注元の神戸製鋼(神戸市)へ仕事を返上してきた。神戸製鋼はお得意先。松本さんは「じゃウチで」と全部引き受け、外から30人ほど職人を募り、機材もそろえ、3日間の徹夜で神戸製鋼へ納め、難を救った。「当時持っていた生産能力の5倍もあり、苦しかった。でも自信と信用につながりましたな」。
 33歳のとき父が急逝、2代目社長に。以後、技術力を生かし自動車部品などの樹脂製品の成形(明石化成工業)、技術営業(きしろ商事)、さらに園芸ショップ(ナイスグリーン)と事業を拡大していく。グループ社員は入社時の50人から350人へ増え、3年前に「きしろ」社長の椅子は長男へ引き継いだ。
 北海道で太陽光ビジネスにも乗り出しているが、主力はディーゼルエンジンのクランクシャフト加工。とくに10〜30万トンの大型船舶分野では世界シェアの4割を誇る。1本の長さ20メートル以上、重さ約300トン、8万馬力。その製造に戦前、「大和」の砲身を削ったドイツ・ワグナー社の大型旋盤が播磨第1工場(兵庫県播磨町)で稼動中だ。戦後、呉海軍工廠(広島県呉市)から神戸製鋼へ民生用に払い下げられ、休止していたのを「優秀だから」と1996年に譲り受け、メンテナンスして使う。まさに重厚長大。
 さて馬への思いは捨てがたく、1974年にJRAへ馬主登録して以来、いまではレース待機馬ならびに予備軍を合わせて約300頭を所有する。中でもメイショウサムソン(メイショウは明石の「明」と苗字の「松」から)は、2006年から翌年にかけG1の皐月賞・東京優駿・天皇賞(春・秋)を勝ち、名をはせた。凱旋門賞(フランス・武豊騎手)は10着だったが、「いずれ優勝を」と夢は壮大だ。
 「馬は孫のようなもの」と目を細めつつ、松本さんは「学生は少し生意気くらいがいい」と若い力に期待する。内藤國雄との対局(飛車落ち・引き分け)、渓流釣り、ゴルフ(ハンディ8)、囲碁、草花など趣味は広い。昨年まで日本馬主連合会長。紺綬褒章(2007年)、旭日小綬章(2010年)を受けている。