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2013.3.15

学生懸賞論文


森田君の感想文 最優秀賞
優秀賞は杉山君論文
左から図書館長の山本教授、森田君、小宮学長、杉山君、尾上教授
左から図書館長の山本教授、森田君、小宮学長、杉山君、尾上教授
 創立70周年を記念して本学図書館(館長=山本明・建築都市環境学科教授)が募集した学生懸賞論文の選考結果が2月14日発表され、最優秀賞に森田洋介君(プロジェクトマネジメント学科3年)の「スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン」(カーマイン・ガロ著)=B部門、優秀賞に杉山雄太君(デザイン科学科2年)の「現代においての『デザイン』の重要性」=A部門=が選ばれた。森田君にはiPad、杉山君にはデジタルカメラが贈られた。
 両作品の全文は本学ホームページ「キャンパスライフ・就職支援」の施設・設備→図書館ページで読むことができる。
 論文は“知のコラボレーションを大切にしていきたい”と【A部門】自分の所属学科・専攻が日本の将来にいかに貢献しうるか【B部門】図書館の所蔵図書を読んだ感想文――のどちらかについて昨年11月5日から12月22日まで、学部生・院生を問わず募集。応募21点を1次審査で6点に絞り、小宮一仁学長と山本教授ら委員7人が厳正審査の結果、授賞作が決定された。
 最優秀賞・森田君の読書感想文は「スティーブ・ジョブズ…」の本との出会いが大学生活の転機になった、と書き出し、アップル社を率いた人物の卓越したプレゼン能力を自身のプロジェクトマネジメント学科での学生生活に投影して論じた。
 森田君は、以前から読了した本をWordに要約、研究室では好きな本や論文の内容を毎週ゼミでプレゼン。成果を披露してみようと応募したという。「実体験を交えて書くよう努めたことで説得力が生まれたのだと思います。若者の活字離れがいわれる今こそ、多くの本に触れ、知識を活用していきたい」。
 講評で山本教授は「森田君の読書感想文は、作者と自分の位置・指向の近似性を明瞭に認識しながら感想文を構成し、ハウ・ツウ図書の解説文に陥ることなく、リアルな筆致で自身の将来の展望まで見事に表現できていた」。
 副館長の尾上薫・生命環境科学科教授も「自らの経験に基づいて『人、学習課題、1冊の書籍』との出会いがいかに貴重かを語り、学生生活さらには今後の人生の糧を明快に述べている」と称賛した。森田君の作品は5段階評価で審査員全員一致の5だった。
 一方、優秀賞の杉山君は懸賞論文募集を見て、所属のデザイン科学科が日本の将来にいかに貢献しうるか、本気で考えてみたくなったという。
 「デザイン」がどれほど人の生活と密接な関係にあるかを気づいてもらおうと、身近な事例で論旨を展開した。
 杉山君は「賞をいただけ大変うれしい。自分が学んでいる“デザイン”を、改めて冷静に考え直す良い機会になりました」と感想を述べた。
 1次審査を通過した他の4作品(佳作)は次のとおり。▽布川淳君(金融・経営リスク科学科3年)「公共事業の評価モデル形成へ向けて」=A部門▽高木俊太君(電気電子情報工学科3年)「1+1=∞」=同▽井出康さん(建築都市環境学専攻修士1年)「少子高齢化社会における役割」=同▽小高優太君(デザイン科学科1年)「砂の女」(安部公房著)=B部門

佐野教授「フェロー」に


日本機械学会が認定
 機械サイエンス学科の佐野正利教授=写真=が1月16日、一般社団法人日本機械学会から、学会を代表するにふさわしい機械工学専門家として「フェロー」に認定された。
 機械学会は1897(明治30)年創立。116年の歴史を持つ機械関連技術の学会で、会員数は3万7千余人と国内最大級。研究者が国内外で活躍する基盤づくりに、と2000年度からフェロー制度を導入、正会員の3〜5%をめどに認定している。
 佐野教授の専門は流体・熱工学。熱や流体の移動現象を実験と数値シミュレーションで解明し、マイクロ熱交換器の性能の向上や、プラズマを利用して熱と流れを制御する方法などに生かして、エネルギーの有効利用に貢献している。
 機械学会では種々の論文を発表。流体力学などの教科書を執筆する一方、流体工学技術委の委員や論文集の校閲委員、若手研究者・技術者のためのワークショップ講師などを務め、その顕著な功績から12年度認定のフェローに推薦されていた。
 佐野教授は「「長い歴史のある日本機械学会からフェローの称号をいただき、大変光栄です。学会活動や研究活動は、教員の方々と研究室の院生、学部生の協力なくしては実行できませんでした。皆様に感謝します。称号にふさわしい社会貢献が果たせるよう務めていきたいと考えています」とコメントを寄せた。

南極隕石探査
荒井PERC上席研究員が帰国


酷寒キャラバン6週間
あった! 氷原に黒い点
自力で隕石(足元の黒い点)を初採取
自力で隕石(足元の黒い点)を初採取
 米国科学財団などが実施する南極隕石探査に参加していた惑星探査研究センター(PERC)の荒井朋子上席研究員が、6週間にわたる探査活動を終え1月27日に帰国した。悪天候に阻まれ、予定していた8カ所のうち3カ所しか探査できなかったが、探査隊全体で約400個の隕石を採取。酷寒でのテント生活を乗り切り「次は日本の南極隕石隊に参加したい」と意欲を新たにしている。
 探査は米国のマクマード南極基地を起点に、昨年12月14日から今年1月20日まで、南緯87度付近の南極大陸横断山脈の氷河地域で行われた。過去に隕石が多数見つかっている地域を回る本隊(8人)に対し、荒井上席研究員のチーム(4人)は老練な登山家をリーダーに未踏の氷河を行く「捜索隊」。マイナス25度にもなる極地でベースキャンプを設営し、周辺の氷河を数日調べてはテントをたたんで移動、というキャラバン生活だったが、荒井上席研究員は「体力的には大変でしたが、楽しくて感動的でした」。
 朝9時にキャンプを出発し、戻るのは午後6時。スノーモービルで氷河がむき出しになっている所へ着くと、4人が10メートル間隔で横一列に並び、立ち乗りしながら周囲に視線をめぐらせる。短い休憩以外、目視することほぼ8時間。寒いと感じたらチョコレートバーで熱量を補給しひたすら目を凝らした。
 「ほかの人が隕石を見つけると、まずい、私も見つけなきゃと気合いが入るし、飽きることはないですね。壮大な氷河と青空に目を奪われつつ、氷河のでこぼこした表面に潜む隕石を目を凝らしながら捜索していると、あっという間に時間が過ぎています」
 見渡す限りの白い世界にポツンと一つ黒い点が見えたら、ほぼ隕石に間違いないという。大気圏突入時に燃えて表面が溶け、黒っぽいガラス質で覆われているため氷河の上では良く目立つ。この見つけやすさこそ南極で隕石探査が行われる最大のポイント。加えて、氷河で冷凍保存された隕石は「地球環境に汚染されず、地球外の天体から飛来した当時の情報を保持しているという意味で価値が高いんです」。
 今後の重点探査エリアを見つけるべく派遣された捜索隊だが、ブリザードやホワイトアウト(雲や雪で視界が白一色となり天地が識別できない状態)に再三見舞われ、探査に出かけられたのは12日間だけ。テントでの待機が18日間に上り、回収した隕石の数は本隊の約340個に対し、63個にとどまった。「天候に恵まれなかった点では史上最も不運なチーム。われわれが行った地域は隕石の密度が低いことはわかりました」(笑)
 前職の国立極地研究所時代から日本の南極隕石探査隊に参加したいと切望してきたが、女性にチャンスが巡ってくることはなかった。昨春、学会で顔なじみの米国のプロジェクトリーダーに送った手紙で夢が実現した。
 「いきなり2カ月大学を空けることになりましたが、理事長、所長をはじめ大学の方々に許していただき感謝しています」と荒井上席研究員。
 初期の地球に火星サイズの天体が衝突し、衝突した天体と地球から剥ぎ取られた地殻やマントルから月ができたという理論がある。目指すは月や地球の起源。
 今回採取した約400個の隕石は、それぞれどの天体を起源とするものかNASAと米国スミソニアン博物館が簡単な鉱物分析で初期分類を進めている。結果が発表されるのは半年後。より詳細な分析は、興味を示した研究者に委ねられる。
 「どうやら本隊チームは、月や火星の隕石を見つけたかもしれないんです。隕石探査はまさにSerendipity(幸運な発見)。ぜひまた南極に戻って、月や惑星からの隕石を見つけたいですね」
3年前の南極点に立つ(南極点は少しずつ移動している)
3年前の南極点に立つ(南極点は少しずつ移動している)