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2012.7.15

本木君デザイン「2席」に
諸岡君・安崎君アイデア賞


マグネシウム デザインコンテスト
左から安崎君、諸岡君、本木君
左から安崎君、諸岡君、本木君
 比重約1.8と実用金属で最も軽いマグネシウム合金で何かを作るとしたら――第21回学生マグネシウムデザインコンテスト(日本マグネシウム協会主催)で、デザイン科学科3年の本木礼夫冴君がデザイン部門第2席を獲得。また諸岡亮君と安崎貫太君が制作部門でアイデア賞を受賞し、6月12日、江戸東京博物館(東京都墨田区横網)で開かれた同協会総会で表彰された。
 2席に入賞した本木君の作品は「WORKING DESK」=独創的なデザインの机=写真下左。
 マグネシウム合金は軽いほか、剛性が鋼やアルミニウムより優れ、振動吸収がよく、時間や温度で寸法変化が少ない、再生利用できる、などの特性を持つ。
 本木君はマグネシウムの軽さを生かし、大人が片手で軽々と持ち上げることができる机を提案した。1人用の机だが、いくつも連結でき、グループワークなど、人数に合わせて使うことができる。
 「急にひらめいて制作したので、特に苦労はしませんでした」。でも、春休み中の作業で、通学定期が切れ、電車賃がつらかった、という。
 デザイン部門の総合点が最高で、独創性も評価され入賞が決まった。第1席該当作はなかった。
 諸岡君と安崎君の作品は「マグネシウムを用いた、気軽に音遊びができる道具の提案」=写真上右。
 音に使う――奇抜な着想を得たが、マグネシウム板は、たたいただけでは大きな音が出ない。発音機構としてどんな形で取り入れるか。
 悩んだ結果、大胆にもワインボトルを、ダイヤモンドカッターで切断して胴体とし、マグネシウム合金で響板と音階弁を作り、響板上に並べて、音が大きく響くようにした。弁をはじくと印象的な音が出る“楽器”に仕上がった。
 制作部門出品中でデザイン点、独創点が最も高く、唯一、軽量以外の特性を生かしたとしてアイデア賞に選ばれた。
 諸岡君らは「コンペでの受賞は初めて。とてもうれしい。(春休みの)2〜3月に多くの時間を割いたこともあり、受賞で達成感を得ました。一方、作品に不満足な点もあり、今後も可能な限り試行錯誤しながら改良していきたいと思います」とコメントした。
 日本マグネシウム協会(東京都中央区日本橋)は軽金属協会(現日本アルミニウム協会)のマグネシウム委員会を母体に創立。平成21年、一般社団法人となったもので、マグネシウム産業に関する資源の有効利用や環境保全、人材育成、国際交流などを進めている。ウェブのホームページは本学デザイン科学科が協力してリニューアルしたばかり。
 コンテストは毎年、マグネシウム製品のデザイン・設計・試作品などを募集。本学からは第18回、19回と計3組が入賞したが、昨年受賞者はいなかった。

共著3人に論文賞


本岡前学長・陶教授・千村さん
海洋音響学会 超音波測距精度を改善
賞牌を手に(左から)本岡前学長、千村さん、陶教授
賞牌を手に(左から)本岡前学長、千村さん、陶教授
 大学院博士後期課程・工学専攻3年の千村大さん(陶良研究室)と陶教授、本岡誠一前学長の3人が昨年、共著で発表した、超音波による距離測定に関する論文が、測定精度の向上に貢献したとして海洋音響学会論文賞を受賞し、2012年度研究発表会(5月28日・東京工業大学百年記念館=東京都目黒区大岡山)で賞牌(盾)を贈られた。
 論文の題名は「FM感度補正信号とパルス圧縮を併用した水中距離測定法」。
 超音波の反響で距離を測る方法は、短パルス信号では信号のSN比が低下する(ノイズの影響が増す)ため、一般的には広帯域で変調した信号にパルス圧縮処理を施す方法が使われている。しかし、受信信号が送受波器の感度特性や、音波の伝搬特性の影響を受けるため、パルス圧縮に有効な周波数帯域がとれない。
 このため送受波器の感度特性を補正するAM(振幅変調)感度補正信号が考案されたが、短パルス信号と同様にSN比が低下する問題がある。
 陶教授と千村さんらは送受波器の感度特性の影響を考慮し、さらに時間領域の信号を振幅整合したFM(周波数変調)感度補正信号を考案した。この信号は、受信信号が受ける送受波器の感度特性の影響を、非線形のFM変調により補正したもので、AM感度補正信号の各周波数の振幅分布を変調時間に反映することで生成される。
 モデル水槽を用いた実験の結果、考案したFM感度補正信号を使うことで、AMより受信信号のSN比が向上、線形チャープ波よりパルス幅の短縮も実現でき、測距精度の向上が確認された。
 本岡前学長は超音波工学、超音波応用計測が専門で、電気電子情報工学科教授時代から超音波の測距精度に関する研究をリードしてきた。
 論文は、昨年4月発行の海洋音響学会誌38号No.2に10ページにわたり掲載された。
 陶教授は「超音波反響測距法は、水中だけでなく空中、固体、人体(医療)などいろいろな媒質中で応用されています。研究室では小規模な水槽しか使えなかったので、新規性・アイデア勝負で研究を進めました。評価されて非常に心強く思っています」。また「基礎研究なので今後、幅広い場面での活用を期待します。研究室でも空中移動物体の計測に生かす研究を進めています」と語っている。
 海洋音響学会は、海洋音響に関する学術調査研究や海洋開発の奨励事業を行っており、毎年、会員が、音響による海洋生物の観察技術や、さまざまな計測技術について内外の研究誌などに発表。このうち、特に優秀なものを学会が論文賞として表彰している。

米田教授の貢献を表彰


機械学会ロボ・メカ部門
部門貢献表彰を受けた米田教授
部門貢献表彰を受けた米田教授
 未来ロボティクス学科の米田完教授が日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス部門の部門貢献表彰に決まり、5月27〜29日、アクトシティ浜松(静岡県浜松市)で開かれたロボティクス・メカトロニクス講演会(ROBOMEC)2012=参加者約2000人=で表彰された。
 米田教授は学内で、生物に学ぶロボットメカニズムやロボット制御法、2足・4足・6足歩行ロボなどを研究開発し指導している。機械学会と日本ロボット学会のフェローで、平成21年度には著作を通じ文部科学大臣科学技術賞(理解増進部門)を受賞している。
 部門表彰委員会の授賞事由などによると、米田教授は、歩行ロボット分野の研究開発に大きく貢献。傍ら、学会ロボ・メカ部門の運営にも積極的に関わった。
 2011、12年の第14、15回ロボットグランプリ(科学技術館などで開催)では実行委員長を務め、協賛団体・企業を募り、ロボット競技や開発ロボの展示、デモンストレーションを行い、大会を成功に導いた。これらの功績が認められ、部門表彰委員会・運営委員会で審議の結果、表彰が決まった。
 米田教授は「ロボットグランプリには、第1回からずっと実行委員として携わっています。初心者向けから高度なものまで3競技のイベントで、毎年開催を続けるのは大変ですが、実行委メンバーたちと協力して何とかやっています。今回、貢献を認められて大変うれしく思います」と話している。
 ロボ・メカ部門は毎年、小中高生や一般を対象に広くロボット工作教室や講演会、競技会を開いているが、悩ましいのが経費の問題。一部教材代を除き参加費を取っていないので、会場代、設備費、アルバイト代、競技の賞金などは、部門予算のほか、企業の協賛金や科研費(当たった年)でまかなっているという。
 全国に広めるため、地方予選を行なっており、もっか、初心者にも競技参加ロボットが作れる工作教室を準備中という。