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2011.6.15

Kid Size サッカー3連覇
ロボカップジャパン・ヒューマノイドリーグ


決勝 台湾チームと大接戦
 3年ぶりに失点を許したものの底力で3連覇――。5月3〜5日、インテックス大阪で開かれた「ロボカップジャパンオープン2011」(ロボカップ日本委員会主催)のヒューマノイドリーグ決勝で、本学「CIT Brains」は延長の末、台湾チームを破り、見事優勝した。延長戦を制しての決勝勝利は3年前の対Team OSAKA戦以来。
本学CIT Brainsのメンバー9人。右から5人目が代表の林原教授
本学CIT Brainsのメンバー9人。右から5人目が代表の林原教授
 大会には海外1チームを含め7チームが出場。CIT Brainsは世界戦を視野に昨年から、ひざの屈伸に応じて上体と足裏を平行に保ち、安定歩行できるよう改良を重ねた機種“Dynamo”を試合に投入している。
 リーグはKid Size 3on3制(身長30〜60センチ、3機対3機による対戦)で行われた。試合前からの話題は、2年連続無失点優勝のCITロボが、快進撃を続けるか否か。
 予選リーグ。フィールド床面に一部起伏があるせいか、各チーム転倒続出の苦戦模様となった。CIT Brainsも例年になく歩行時やシュート後に転倒、空振りキックも目立った。しかし、それでも他チームを寄せ付けず、対Hado(社会人チーム)戦に5−0で、続くSitik(金沢工業大学)戦では6−0で勝利。準決勝は大同大学のチーム「ぐろいず」に6−0で圧勝した。
 決勝戦の相手は台湾National ChengKung大学の「aiRobots_Humanoid」。昨年世界大会で2次予選に進出した高レベルのチームである。前半、動作が安定しないうちに攻められ、なんと3失点。
 しかし脚の振り上げ角を調整するなどして後半、徐々に本来の歩行制御性能と機動性を取り戻し、ついに同点に追いついた。
 延長戦となり、相手のオウンゴールでリード。まもなく同点とされたが、底力で2得点を重ねた。予想外の大接戦となったが、終わってみれば6−4で、堂々の3連覇を達成した。
 チームメンバーは未来ロボティクス学科の林原靖男教授、南方英明准教授、未来ロボット技術研究センター(fuRo)の入江清研究員、一澤勝弘さん(修士2年)、野平幸佑さん(同1年)、土橋一成さん(同)、高松和城君(4年)、山田幸果さん(3年)、秋谷駿行君(同)ら9人。
 優勝のあいさつに立ったCIT Brains代表の林原教授は「何とか3連覇出来てうれしい。(開催地)大阪などは世界に通じるモノづくり力を持っている。これと本学の技術でサッカーをする知能ロボットができる。このような世界レベルの開発ができる人材を日本の復興に役立てたい」と話した。
 この大会、「2050年までにはヒューマノイドロボットが人間のワールドカップサッカー優勝チームに勝利する」という遠大な目標がある。これを励みに、若い発想力の挑戦が続く。
 なお、毎年好成績を収めているレスキューチームは、福島原発事故への対応のため出場しなかった。
フィールドで繰り広げられる熱戦 大会前、調整に余念のないチームメンバーたち
フィールドで繰り広げられる熱戦 大会前、調整に余念のないチームメンバーたち
各チームの参加ロボットたちが勢ぞろい
各チームの参加ロボットたちが勢ぞろい

「クインス」福島原発へ


国産ロボ初投入
 わが国を襲った観測史上最大の地震と巨大津波で甚大な被害を出した東日本大震災(3月11日)。壊滅的なダメージを受けた東京電力福島第1原発では原子炉の冷温停止に向け、懸命な作業が続いている。この支援機器として、本学の未来ロボット技術研究センター・小柳栄次副所長のグループを中心に設計・制作された緊急災害対応ロボット「Quince」(クインス)」の改造機が、早ければ6月11日にも現地へ出発する予定だ。初の国産機投入で、活動が注目されている。
「クインス」緊急改造
放射線から作業員の安全守る
福島原発へ初の国産ロボ投入
出発前の会見でクインスの改造点などを説明する小柳fuRo副所長
出発前の会見でクインスの改造点などを説明する小柳fuRo副所長
 東京電力福島第1原発の1〜3号機の原子炉はメルトダウン、水素爆発などによって建屋はコンクリートや鉄骨などのがれきの山だ。地下には放射性物質の高濃度汚染水が大量にたまり、被曝リスクはきわめて高い。このため、データ収集や屋外障害物撤去などでこれまで米国製ロボットを活用してきた。
 本学も加わるNPO法人「国際レスキューシステム研究機構」(略称・IRS)は、「3・11」3日後から被災工場探査のためQuinceをスタンバイ。とくに福島原発事故に対応するため、1週間後には改良に着手した。中部電力浜岡原発で階段昇降実験を行い、東電も加わって芝園キャンパスの未来ロボット技術研究センターで細かい検討を続けていた。
 改造機は全長130センチ、幅48センチ、重さ26.4キロの本体にカメラ、線量計、水位計、温度計、アームなどを搭載し、ほぼ倍の重さの50キロに。戦車のようなクローラーと、前後2本ずつ計4本のサブクローラを駆使し、がれきや階段を踏破できる。CPUなど電子部品は累計20万ミリシーベルトの放射線照射実験に耐えた。
 今回のミッションは、まず3号炉建屋(2〜5階)の状況と、地下1階にたまった汚染水の水位、汚染濃度の調査。建屋内は壁や階段が邪魔をして無線が届かないため、全長200メートルの有線ケーブルを通して操縦する。順調なら、1号炉、2号炉へと作業を広げていく方針という。
 出発前の6月8日に芝園キャンパスQuince実験フロアで行われた記者会見には、新聞、テレビ、通信社など約50人の記者らが集まった。
 質問に答えた小柳副所長は、「ロボットの一番の役割は作業員の被曝量を減らし、安全を守ること」と前置き。「今回は積んでいないが、3次元形状計測(3Dデータ)とガンマカメラにより、どこに高い放射線物質が散らばっているか捕捉できるため、作業の安全につながる。ただ、建屋の上の方は、とても細い階段や急勾配などもあり、Quinceでも走破するのは難しいだろう」と述べた。
 同席したIRS会長の田所諭・東北大教授は「がれきや急な階段を上れるのはQuinceしかない。みなさんボランティアとしてやってきたわけだが、とくに千葉工大にはお礼を言いたい」と評価していた。
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